VERY July 2021

VERY

July 2021

2021年6月7日発売

780円(税込)

Premium VERY

CONNECT WITH VERY

2歳児ママライターが【メディアリテラシー連載】で一番学んだこと

 

知らないあいだに“偏っている”私たち

 

現在発売中のVERY3月号から「私たちのメディアリテラシー」という新連載がスタートしました。
コロナ禍で、対人時間が減ってSNS利用時間が圧倒的に増加している今(Twitter平均アクティブユーザー数前年比34%※2020年7月)。そんななかで、偽情報のチェーンメール、自粛警察や不謹慎狩りといった不寛容さが取り巻くSNSに“SNS疲れ”を感じたり。ウイルス以上に情報に振り回されてしまった一面もありました。個々に最適化された情報が配信され続ける中、いかにして“自分の現実”から抜け出し、広い視野を持つかを考える連載です。

連載の第1回目となる今回、お話を聞いたのは計量経済学者の山口真一先生

山口先生は『コロナをきっかけに人類は急激にデジタル空間で過ごす時間が長くなったので変化に追いつけないのはある意味、当たり前』とした上で、『今後も指数関数的に情報は増え続けていくので、今まで以上に情報の受け取り方を磨いていく必要がある』とコメント。本誌では限られたスペースの中で連載の下地となる情報をこれでもかと詰め込んでいるので少々とっつきにくい部分も多かったと思うのですが。個人的に「これは心に留めておこう」と思ったことをご紹介します。

 

ありとあらゆる情報は、すべて偏っている

取材中、山口先生が何度も繰り返し口にしていたのがこの一言。『情報を鵜呑みにせず、発信したのは誰で、どんな背景があるのか考えることが求められる』というのはある意味、昔から指摘されていたことですが、現在はネットにより人それぞれの情報の偏りがさらに深まる仕組みがあるそうです。

 

覚えておきたいキーワード1
『選択的接触』

…無数にある情報の中から取捨選択する中で自分の見たい情報にばかり接してしまうこと。

 

覚えておきたいキーワード2
『エコーチェンバー』

…SNS上で自分と似た意見の人ばかりフォローするので、異なる意見が届かない閉じたコミュニティの中で同意見ばかりが飛び交う環境に身を置くことになり、意見が過激化し強固になること。例えば「東京オリンピックは開催しない方がいいのでは」と不安視する人は『選択的接触』により無意識に開催に否定的なものにばかりアクセスしてしまうし、SNSでも同意見の人をフォローして交流する。ネット上には本来、多様な意見があるのに目に入るのは自分の意見を補強するものばかりになり、次第に「オリンピックは開催すべきではない」と考えを深めるようになること。

さらに、オリンピック開催を不安視する人には、オリンピックに否定的な情報だけが配信され、肯定的な情報が届かなくなる現象、「フィルターバブル」もあります。

 

覚えておきたいキーワード3
「フィルターバブル』

…Googleの検索結果やFacebookで流れてくるニュースなどネット上のサービスは交流データや検索、閲覧履歴など収集・解析し、好みにあった情報を配信する仕組みになっているため、このアルゴリズムによって情報が個々に最適化され見たくない情報が遮断されてしまう現象。

 

『フィルターバブル』によってつねに各々のスクリーンを通じてそれぞれがまったく異なる現実を見ている、今。偏りを深める仕組みがあると分かってもネットやSNSの利用をやめるのは現実的ではないので、できることはやはり『自分を取り巻く情報は偏っている』ことをつねに自覚することなのかもしれません。

 

親の“正しさ”を子どもに押し付ける怖さ

それぞれ見ている現実が異なり信じるものバラバラなので、リテラシーを高めれば解決するわけではないのがこれからの時代の人と人の関係の難しさ。親として迷うのは子どもとの接し方です。自分の正しさや価値観を疑うきっかけを失い、偏りから抜け出すのが困難な状況は続いていくからこそ、親が思う“正しさ”を子どもに押し付けるのは改めて危険だな、と思いました。

山口先生曰く『人は人、と線を引いておき、他人を尊重する姿勢が身についていないと、たち行かなくなってしまう』という今後。人間である限り、程度の差はあれど誰にでも偏りはあり、大人同士であれば『そういう考え方もあるんだな』と適度な距離を保って受け流し合うことが出来ますが、子どもにはその偏りがダイレクトに伝わって根付くことになります。

コロナ禍や感染症に対する考えは人それぞれということから、突如として“それぞれが違う現実を生きる”状況に追い込まれ、四苦八苦しながらも『他人の価値観を尊重する』実践を得ましたが、親子間ではどうでしょう。自分の考えを押し付けない、ということは果たして親子間でどこまで可能なのでしょうか。

ひとつ心がけていきたいと思ったのは子どもに自分の考えを伝える際に、「ママはこう思う、パパとママはこう考えている」としっかり伝えること。自分たちの考えが正しくて他の家庭は間違っている、という伝え方をしたり、他の意見を否定しないように気をつけたいと今回改めて感じました。

山口先生が『我々はまだ情報社会の黎明期にいて情報の偏りに慣れていない』という言葉の通り、正解はまだ見えないし、正解があるのかも分かりませんが、メディア・リテラシーとともに親子の関係も改めて考えていきたいと思います。

メディアリテラシー連載、第1回を掲載中!

 

今月の参考図書1
『正義を振りかざす「極端な人」の正体』
山口真一 著(光文社)

 

SNS上に誹謗中傷投稿を繰り返し、ネット炎上に加担し、ときに人を死まで追い込む。自粛警察、不謹慎狩りなどコロナ禍でも噴出した「極端な人」を生み出すネット社会の実態を紐解くとともに、繫がりの発展に適応し豊かな社会を作る心がけを指南。情報社会の本質に迫る。

 

今月の参考図書2
『エデュケーション 大学は私の人生を変えた
タラ・ウェストーバー著/村井理子 訳(早川書房)

 

サバイバリストの両親のもと学校も病院も行かせてもらえずに育ったタラの半生を綴ったノンフィクション作品。2018年に発表され、ビル・ゲイツやオバマ夫妻に絶賛されたことで全米400万部超の記録的ベストセラーとなった作品。記された彼女の半生はあまりに過酷で特異なものですが、それでも、翻訳者・村井理子さんの言葉の通り「世界の終わりに備えるという父親の誇大妄想を笑うことは簡単だが、果たして私たち大人は、同じような行為を子供に強制したことが一度もないだろうか」という問いが胸に広がります。

 

取材・文/増田奈津子

この記事もおすすめ

FEATURE