子どもの耳かき、どうしてますか?「気持ちいいから」とせがむ子どももいれば、「痛いからいやだ」という子も。それでなくても、繊細な子どもの耳をいじるのには不安があります。ほんとうのところ耳掃除はマストなのでしょうか。専門家の先生に聞いてみました。Q&A方式でわかりやすく解説します。
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国立成育医療研究センター 小児外科系
専門診療部 耳鼻咽喉科診療部長
\守本倫子先生に訊きました/
子どもの耳掃除って
ほんとうに必要ですか?
Q1.そもそも耳掃除は必要?
A. 頻繁な耳掃除は必要なし!
取れば取るほど耳アカが出る
という負のループに
耳アカは古くなった鼓膜が剝がれ落ちたもので、数カ月かけて外耳道を通って自然と外に出るという自浄作用があります。頻繁に耳掃除をすると耳の中が傷つきカサブタという耳アカができてしまい、すぐに耳アカがたまってしまうことになります。特に小さなお子さんの耳の中の皮膚は大人の3分の1しかなく、頻繁な耳掃除は柔らかな皮膚をタワシでこすっているようなもの。また、耳掃除をすることでせっかく入口付近まで移動してきた耳アカを逆に奥に押し込んでしまうケースもあります。
Q2.耳アカを取りすぎると?
A. 耳の中への異物の侵入や菌の増殖を
防ぐ効果が減少。また、耳掃除が
原因で耳の病気になることも
耳アカは酸性で、雑菌などの異物が耳の中に入ることを防ぎ、細菌や真菌の発育を抑制する大切な役割があるので、その効果が減少してしまいます。また、耳掃除をしすぎたり、やり方が間違っていると耳の中の薄い皮膚を傷つけてしまい、炎症を起こす「外耳炎」、カビが繁殖する「外耳道真菌症」、耳アカが耳の中を塞ぐ「耳垢栓塞(じこうせんそく)」などの病気につながってしまいます。
Q3.耳掃除が習慣になっている我が子。どうしたらいい?
A. まずは耳掃除の仕方を見直して、
徐々に回数を減らしていきましょう
耳掃除をするとお子さんもすっきりとした感じがしますし、ママも「今日もこんなに取れたぞ!」と嬉しくなりますよね。お話ししたとおり、自浄作用がある耳の中は頻繁な掃除は必要ありませんが、すでに耳掃除が習慣になっている場合、耳アカがたまりやすくなっていたり、耳掃除をしないとスッキリしないなど、すぐにやめるのは難しいかもしれません。まずは耳の中を傷つけない耳掃除の仕方に切り替え、徐々に回数を減らして多くても月に1度のペースにしていきましょう。
Q4.耳掃除だけのために耳鼻科に行ってもいいの?
A. 耳掃除だけの受診ももちろんOK!
保険も適用されます
子どもの小さな耳を掃除するのは何かと不安ですよね。耳掃除だけの受診はもちろん、気になることがあれば気軽に耳鼻科で相談してください。また、小さな子どもは耳の異常を上手に伝えられない場合もあります。よく耳を触る、耳を痒がる、名前を呼んでも反応が薄いなど気になる症状があればすぐに耳鼻科で診てもらいましょう。「学校の聴力検査で耳垢栓塞と言われて初めて気づいた」というケースもよくあるパターンです。特に気になることがなくても半年に1度は定期健診をすると安心です。耳掃除は保険と子ども医療費助成制度が適用されます。
Q5.正しい耳掃除の仕方やおすすめの道具が知りたいです
A. 細めの綿棒などで入口付近を
やさしくなでるだけで十分
ご家庭で耳掃除をする場合、使う道具は、細い綿棒やスクリュータイプなど均等な形状のものがおすすめ。耳の穴にぴったりフィットするものは耳アカを奥に押し込んでしまったり、皮膚を傷つけてしまう可能性があるので、耳の穴の直径よりも細いものを選びます。綿棒の場合は先端をワセリンなどで軽く湿らせてから使うと耳アカが取れやすく皮膚も傷つきません。
耳掃除のポイント
- 多くても月に1度まで
- 耳の穴の直径よりも細い道具を選ぶ
- 綿棒はワセリンなどで先端を湿らせておく
- 周囲に人がいないことを確認する
- 子どもには「急に動かないでね」と伝える
- 耳を軽くひっぱりながら、外耳道の入口付近だけをやさしくくるっとなでる。決して奥まで入れすぎない
Q6.ベタベタや乾燥など、人によって耳アカのタイプは違う?
A. 人種や体質によって
耳アカのタイプは異なり、
日本人の多くは乾燥タイプ
日本人の耳アカは約70%が乾燥タイプ、約30%がベタベタタイプと言われており、ベタベタタイプは耳アカが固まりやすいため比較的耳アカが取りにくいようです。ただ、どちらのタイプでも問題はありません。ベタベタタイプも乾燥タイプも耳掃除の前にお風呂に入ってから行うと耳アカがふやけて取りやすくなるのでおすすめです。
Q7.耳に水が入った時はどうしたらいいですか?
A. 皮膚(外耳道)に水がついただけ。
無理やり取る必要はありません
スイミングを習っているお子さんのママは特に気になると思いますが、耳の構造上、水が入るのは外耳道の部分までで鼓膜より中には入りません。多少の違和感はありますが体に害はないので慌てて取らなくても大丈夫です。外耳道も皮膚なので、皮膚に水がついただけの状態です。
◉PROFIRE
守本倫子先生
国立成育医療研究センター 小児外科系専門診療部 耳鼻咽喉科診療部長、小児気道疾患センター センター長。専門分野は小児耳鼻咽喉科、小児喉頭疾患、小児難聴。
取材・文/魚住 綾 イラスト/末永えりか 編集/フォレスト・ガンプJr.
*VERY2022年10月号「子どもの耳掃除ってほんとうに必要ですか?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。