※このコラムはVERY2022年7月号(2022年6月7日発売)に掲載されたものです。
少し前のお話になりますが、彼とのコミットメントセレモニー(誓約式)を父のレストランで挙げました。家族になるためのセレモニーだよと子どもたちに伝えていたので、娘たちにとっても一つの区切りに感じたようです。ちなみに今回の式ではバージンロードを歩きませんでした。よく考えたら、私が父から彼の「持ち物」みたいになるような感覚がするなって。同じ感覚でベールも指輪もなしにして、私たちらしい、家族としてお披露目するだけの式に。もちろん結婚式自体やそれにまつわる文化を否定するわけじゃなくて、バージンロードを歩くのは今の自分にフィットしないな、ということです。
そもそも式を挙げたきっかけは、式を通じて子どもたちに安定した関係性を見せたいという気持ちから。お父ちゃんはお父ちゃん(前夫)だよと伝えているし、前夫と定期的に会う関係は変わらないけど、娘たちは今の彼をステップファーザーだと捉えているようだったので、娘たちに「これからも家族だよ」というメッセージになればいいなと思いました。
と、そんななかで衝撃的だったのは、「ステップマザーってだいたい意地悪だけど、ステップファーザーはいい人なんだよね?」という突然の長女の発言。誰もそんなこと教えていないのに、どうやら、白雪姫やシンデレラのお話に出てくる継母の印象が強すぎて刷り込まれてしまっているようなんです。確かに、こうした物語上のステップマザーの悪役率の高さは際立っています。あわてて否定したけれど、子どもたちには、改めてしっかり言葉で伝えていかないと、と思った出来事でした。
女性が悪し様に描かれたり、台詞を与えられない数々の物語を思うと本当に悲しくなるのですが、現実世界でも同じだなと思ってしまうことがあります。例えば、女性スターは一度持ち上げられればほぼ必ず叩き落とされる気がしていて。歌手のテイラー・スウィフトは数々の恋愛が話題になりバッシングされてきましたが、彼女は楽曲『The Man』でも、男性は浮き名を流すことで一目置かれるけれど女性は反対であること、女性が社会的に成功しづらいことを皮肉気味に歌っています。声を上げることができる女性がバッシングされるのは、日本もアメリカも同じなようです。
日本には「女は愛嬌」という言葉がある通り、特に女の子は「愛想よく」と言われがちだし私たちもそう言われて育ったと思います。実はアメリカでも同じ。「SMILE!女なんだから愛想よくしなさいよ」とおじさんに言われる、とはよく聞く話。女性の政治家は、経験や実力に加え「ライカビリティ」(好きになられる能力、好感度)が票を左右するというデータも出ているそう。私たちがSMILEを強要されるのも、愛想よくしていたら好かれるんだから笑いなさいということですが、こっちからしたら今あなたに笑いかけたくないから笑わないだけじゃないですか。例えば「この先生の言っていることおかしいな」と思った時は、「私はそう思わない」という態度でいいと私は思う。一様に「笑顔でいなさい」「愛想よく」と言ってしまうと、その子は感じた違和感を無視するようになって、声に出さなくなってしまうんじゃないかと、そちらの方が怖い。親としても、子どもの一つ一つの感情や発想に気づいたり大切にできなくなる気がするんですね。
子どもは、こちらが思うより集中力も短いし体力もないし経験値もない。だから、大人を心地よくいさせたり安心させるために、笑顔や愛想という配慮まで子どもに求めないでいいと思う。異論を言うのは勇気がいることだし、愛想がよくないことで今の社会では実際損もすると思うのですが、気が合う友達は大人になって数人いればいいのだし、自分の好きなことを見つけて力をつけていけば、みんながみんな愛想よく生きる必要はないと思うんですよね。
だから「愛想よくしなさい」とつい言っちゃいそうになる時、それは誰の何のために?何か押し殺してしまうものはないかな?って、立ち止まってフラッグを立てたいなと思っています。
◉SHELLY|シェリー
1984年生まれ、神奈川県出身。14歳でモデルとしてデビュー以後、タレント、MCとして幅広く活躍。6歳と4歳の娘の母。
最近流行ってるのはツツジ吸い! いとこに教わってから公園などで必ず吸うので、1日2回までと止めてます(笑)
撮影/須藤敬一 取材・文/有馬美穂 編集/羽城麻子
*VERY2022年7月号「シェリーの「これってママギャップ?」」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。