【連載】神山まりあの「笑うママには福来る。」Vol.25
「前のめりのF1レーサー」
夫の夢は息子をF1レーサーにすること。
ディーンが生まれるずっと前から語っている夢。
しかし生まれてみると、当の本人はキッチングッズに興味を持ち、そして工具のおもちゃ、今はレンジャーものの変身グッズに夢中である。
スポーツカーやレーシングカーに見向きもしなかった息子に焦りを感じた夫はF1レースの動画を見せはじめた。
本人が興味を持てばトライさせてあげたいし、興味がなければそれはそれでいい。
でもやっぱりレーサーになってほしい。そんな葛藤が見て取れる。
4歳になり、少しずつ車に興味を持ってきたディーンは初めて「レースカーに乗りたい」と言ってきた。夫の喜びったらもうすごい。速攻で子供が遊び感覚で始められるカーレースの教室を探し、晴れの週末には車でレース場に行く。
ディーンはもう夢中。
レースカーが格好良すぎて、自分で運転したいと主張をするまでになった。
つい先日、ディーンは初めて子供レースカーの運転をトレーナーさんの元で試してみた。初めてのアクセル。初めての一人乗りレースカー(見た目はミニゴーカート)。
ハンドルを力いっぱい握って、体は前のめりになっている。
ハンドルとディーンの距離は2cm。
前のめりすぎやしないだろうか。
どうやら緊張しているらしく、目線はハンドル、肩はこわばっている。
大丈夫よ、とトレーナーさんが優しく教えてくれること30分。
ディーンはなんとかバックシートに背中をつけ、スイスイと運転できるようになった。
器用にもアクセルとブレーキを使い分け、子供の吸収力に驚きを隠せない。
F1レーサーの息子だなんてなんて格好良いんだ。ディーンの気持ちをまずは優先すべきだが、こんなにも運転に夢中になってくれると両親の期待は爆上がり。
「Huuuuuuuuuuu!!!!!! Yeaaaaaah!!!!」
ディーンは雄叫びをあげながら亀のような遅さで運転している。
色男である。
私には彼の後ろにモナコが見える。そして自分を大好きなゴクミと重ねてみる。
最高だ。
亀ドライバーは10mくらいのレース場を一周するのに10分ほどかけているが、もうなんでもいい。とにかくこの趣味を伸ばしてあげたいと思う親心。
次の日。
学校のお迎え時間にクラスメートの女の子メアリーのお母さんから話しかけられた。
「ディーンくんのママ、あのね、メアリーがディーンくんにこんなこと言われたんだって。二人ともかわいいね」
本当かどうか確認するためにディーンに聞いた。
一体メアリーに何を言ったの?
「あのね、メアリーに、今日のよる僕のレースカーに一緒にのる?って聞いたの。そしたらメアリーはキスしてくれたらね、だって」
恐るべし、前のめりキッズ。なんという会話だ。
メアリーにふさわしい男になるためにまずは亀からウサギくらいの速さになるまで練習しようね。
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【PROFILE】かみやま・まりあ
1987年2月17日生まれ。
2011年ミス・ユニバース ジャパングランプリ。
2015年結婚、2016年男児出産。
インスタグラム@mariakamiyamaも大人気。
2018年9月に初めての書籍
『神山まりあのガハハ育児語録』(光文社)を刊行。
撮影/杉本大希〈zecca〉 ヘア・メーク/秋山 瞳〈PEACE MONKEY〉 イラスト/natsu yamaguchi 編集/湯本紘子
*VERY2021年3月号「神山まりあの笑うママには福来る。」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。