2020年、VERYは創刊25周年を迎えました。ずっとママを見続けてきたVERYですが、特にこの5年、ママたちの変化に驚いています。誌面で活躍しているモデルたちも、5年の間にいろいろありました。結婚したり、夫婦関係が変わってきたり、離婚したり。そのなかで感じた価値観、ライフスタイルの変化について、聞いてきました。まずは、3児のママでもあるVERYモデル牧野紗弥さんです。
「家事育児は女性のもの」と
思ってたけど、
モヤモヤが言語化。
家庭内ジェンダーに気づいた
夫のことは大好きです。信頼もしています。でも、この5年間のうち数年は、精神的な倦怠期がありました。2人目を出産し、7年前モデル復帰してからも、特段疑問を持つこともなく、家事・子育てのほぼすべては私が担っていました。「俺ほどやっている夫はいないよ」「働くのは大賛成。でも俺の仕事の予定は変えられない」「俺のほうが稼いでいる」なんて台詞を吐かれても、確かに夫は、撮影で朝早い私に代わり保育園に送ってくれるし、家にいるときはお願いしたことはやってくれるし、それに稼ぎが全然違うのだから仕方がないと返す言葉がありませんでした。でもちょうど5年前ぐらいから、私の仕事も順調に増え、3人目が誕生、長女は小学校、長男は保育園と通う場所が別々になり、習い事もバラバラ。1人ですべてを担うのは限界に。常に時間に追い立てられてイライラ、笑えなくなっていったけど、不満を的確に夫に伝える術を持っていませんでした。不満を言ったって、口喧嘩になるだけ。
しかし、昨夏、家に届いたVERYで、女性学の第一人者、上野千鶴子先生のインタビュー記事を読み、そのモヤモヤが晴れるような感覚があったんです。我が家になかったのは、夫婦の平等意識。保守的だった分私には衝撃的で、その後ジェンダー問題に関する本を読み漁り、ママ友や世代の違う女子大生と意見交換をするようになりました。そして昨年の秋ごろ、いつもの口喧嘩の末「私がやっていると思う子どものこと、家のこと、書き出してみてよ!」と紙とペンを渡しました。夫は自信ありげに30個くらいをスラスラと書いたのですが、その内容を見て愕然。「長男の学校〝関係〟」「長女のバレエの送り迎え〝など〟」……。私の不満ってこれだ。長男の学校と一口に言っても、プリントチェックから宿題のフォロー、行事の確認、集金の用意……書き出したら止まらないけど、これをすべて、〝関係〟〝など〟に集約されちゃっている。この人は、何もわかってない。そう気づいたんです。話し合いの末、意図的に私が「1週間、家事・育児をやめる」ことを提案。一緒にいても、私はご飯も作らないし、掃除もしない。子どもと一緒に遊んで、すべての家事・育児を夫にバトンタッチしました。でも、夫はわからないことがあるとすぐに私に聞こうとしてしまう。学校からのプリントを読むことや、子どもから聞き出して推測することを促し、ママ友にお願いして夫とLINEをつなぎ、ママパパ友間で解決するよう伝えました。つい手と口を出したくなることばかりで、それを我慢する私も大変。初めて夫は仕事のスケジュールを動かして、子どもの予定に対応していたんじゃないかな。どうしてもやりくりできなくて、密かに友人に頼んだこともあったみたいです。1週間が終わるころ「あと1週延長して、もっとわかりたい」。夫からの申し出でした。夫の理解が進めば、不思議と私も歩み寄れるもので、改めて夫婦で話し合い。「どっちが稼いでいるかは関係ない。夫婦2人分合わせて世帯収入。子どもたちには色々なことをさせたいからチームで稼ぐ。だから、2人とも都合がつかなければ、シッター代も必要経費なのではないか」。夫からそんな言葉を引き出せたのも大きな収穫でした。一方、夫の言う「やってと言われたことは100%やるけど、やったことがないことは想像できないから」も理解。私もどこか家事、育児は女性がするものという意識があり、「なんで〝手伝って〟くれないの」と不満を募らせていた。夫の知る機会、やる機会を奪っていたのかも。子ども3人。日々慌ただしいのはしばらく変わらなさそう。でも、きちんと自分の思っていることを言語化し夫とチームで立ち向かえる気がしています。
PROFILE
VERY初登場は、2013年。ファッションからビューティまでこなす人気モデル。私生活では13歳年上で音楽関連会社にお勤めの夫と結婚11年目。5、8、10歳の3児のママ。教育熱心で、精力的に仕事を続けながら子どもの小学校受験も経験。
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撮影/谷口大輔 ヘア・メーク/陶山恵実(ROI) 取材・文/嶺村真由子 編集/城田繭子
*VERY2020年8月号「結婚、夫婦関係、仕事、離婚。いっぱい考え、手に入れた幸せがある この5年、VERYモデルの中に起きた“変化”」より。
**掲載中の情報は誌面掲載時のものです。