園からの呼び出し、切らしたオムツ、脱ぎっぱなしの靴下…「名もなき家事や育児」に対応するのはいつも私。これってママじゃなくてもできるよね?そんなモヤモヤに向き合い、家族のチームワークを高めるためのヒントを探りました。
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家事育児分担のリアル事情を大調査!
\なぜ私だけ?/
言わなきゃやらない&気がつかない
パートナーにモヤつく!
洗濯物を畳む以外、すべてのタスクが私の担当です。夫はそもそも冷蔵庫を開けないし、子どもの用事は何も把握していない。こちらから報告しないと本当に何も知らないです。洗濯物もリビングに山盛りで置いて、初めて畳んでくれます…。
(主婦33歳・4歳男の子、2歳女の子ママ)
日用品、食料品の在庫確認や補充を「〇〇なくなったよ」と当たり前のように任せてくる夫。休日に私が1人で出かける時は、離乳食の準備から部屋の掃除までを終えてから出かけますが、夫が出かける時は自分のことだけ済ませて行くところにモヤモヤ。私が出かける前に「洗濯物お願い」「掃除をお願い」とはっきり言わないとやってくれません。息子の受診関係も私任せです。
(育休中31歳・1歳男の子ママ)
私が先に育休を取り、現在は夫が育休中です。今は家事・育児のタスクが私に集中しているとは思いませんが、私が育休中の時は夫に育児全般のノウハウがなく、子どもに関する買物、離乳食作り、育児書からの知識集め、病院調整など、すべてを私が担っていました。「育休中だし」と思ってしまい夫にも伝えづらく、孤独感が強かったです。
(会社員34歳・2歳男の子、1歳女の子ママ)
子どもの身の回りの世話や、家の中のタスクはもちろん、子育て応援交付金の使い道や、お宮参りなどのイベントも私に任せっきり。母の日や親戚へのプレゼント選び、誕生日会の企画等、家族のイベントも私がやっています。夫からは、私がやった方がスムーズで早くて楽だと思われていそう…。
(主婦31歳・1歳女の子ママ)
パートナーを頼りにしたい思いは
あれど、ママに偏っているのが現実
(VERY調べ・回答者100人)
Q.家事や育児でパートナーを
頼りに思っていますか?
Q.日常の中で自分に家事や育児が
集中していると思うことはありますか?
子どものイレギュラー対応を夫婦で分担するコツ
【Part.1】
熱が出た時の連絡や診療予約、
薬の確認、予防接種や検診…
子どものイレギュラー対応、
ママじゃなきゃダメですか?
携帯の着信音、保育園からの呼び出しにざわつく心。頭を下げるのはもう慣れたけど、駆けつけるのは決まって私。モヤモヤを抱えながら、病院の予約、準備と、頭はフル回転…。
◉profile
エッセイスト
劔 樹人さん
1979年生まれ。ベーシストや音楽プロデュース業を経て2014年にエッセイストの犬山紙子さんと結婚。1児の父。著書『今日も妻のくつ下は、片方ない。妻のほうが稼ぐので僕が主夫になりました』(双葉社)など。
❝自分がやってみて思いますが、
〝パパができないこと〟は
何もないんです❞
1. パパもママも思い込みを捨てる
イレギュラーがママに偏るのは、「ママならなんとかしてくれる」とパパが思い込んでいるからじゃないでしょうか? 「生まれたての子どもが怖くて抱けない」という友人がいましたが、それはやっていないだけで、知らないことに対する恐怖があるだけです。パパでもママでもできる体制を2人で作っていくために、まずはお互いの「思い込み」を捨てることが大事だと思います。妻が地方の仕事で出張時、生後1カ月の娘と2人きりの夜を過ごしました。冷凍母乳を活用しながらの夜間授乳。
不安でしたが、やってしまえば、自分でもなんとかできてしまうことに気づいたのです。パパが「ママじゃなきゃ」と思い込んでしまう理由は、きっとママの方が沢山の〝はじめて〟を乗り越えてきているから。2人の子どもなのに、どちらかに偏って片方が追いつめられる。それはおかしいですよね。ママもパパを信じて、時には強引に任せる。任されたパパもやってみる。これに尽きると思います。
2. ママだけが知っている情報をなくす
学校や保育園からの連絡は、基本的にメールやネット経由ですが、2人で受け取れるように設定しています。片方しか受け取らない情報があると、その気がなくても関心が薄れ、そこに紐づくタスクを片方が抱え込んでしまいます。また、給食で何を食べたか、保護者会の日程、来週から水筒が必要、ということもすべて共有しています。一見面倒にも思えますが、共通認識があれば効率よく動けることも多くあります。
娘の発熱時などのイレギュラー対応は、物理的に動ける僕が担当することが多く、緊急連絡先の設定も一番は僕です。ただ、この順序もただの順番であって「その時動ける方が行く」というスタンスを取っています。病院に行った後も、医師からの説明内容、朝昼晩と飲ませる薬の種類、次の診察の目安など、僕だけが得た情報も妻に伝えることで、お互いが変わりなく対応できる体制を整えています。これって家族の運営としてとても大切で、健全なことだと思うのです。
3. 出来事も気持ちも
シェアする時間を持つ
スケジュールや仕事の話を夫婦で共有しておくのはもちろんですが、その時大変だったことや自分の気持ちも話すようにしています。例えば、眼科で「結膜炎の目薬をさしてもらったよ」だけでは、処置内容しか伝わらないけれど、「目に迫ってくるのが怖かったのか、泣きわめいて暴れて大変だったよ。終わった後は2人とも汗だくでどっと疲れた」というように。気持ちも伝えることで、逆の立場になった時の想像力を持ってもらうことができます。全体を見ると、タスクは自分の方が多いかもしれませんが、「相手のやっていることを本当の意味で理解しているパートナーがいる」。
この信頼はとても大きく、お互いを思いやることに繫がっています。現に妻から「今日の夜は出かけてきたら?」等の声かけもよくあり、リフレッシュしながら家事育児に向き合えています。1人で過ごす時間をきちんと取ることで、娘との時間もより楽しめているような気がします。僕らは昔からお互いのことを話す習慣があって、それは今も同じで変わりません。娘が登校した後、いろんなことを2人で話す朝の時間をとても大切にしています。娘のこと、仕事のこと、なんてことない話…出来事も気持ちもシェアしています。
my family’s episode
我が家はこうしています!
モヤモヤ軽減策1
子どもの用事は夫婦の得意・
不得意であらかじめ分担!
私、夫、子どもの予定を色分けし、Googleカレンダーに入力しています。それぞれの予定は各々で入れておき、子どもの予定は特に認識しやすいよう、ジャンル別に色使いを工夫。例えば、習い事の対応は夫が担当など、お互いの得意・不得意や可能・不可能でタスクを分けることで、少しでもストレスを減らす工夫をしています。
(会社員34歳・2歳男の子、1歳女の子ママ)
夫に子どもの予定を把握してもらいたくて、色分けを始めたことがきっかけでした。こんなに予定があるんだ!と状況が伝わったのはもちろん家族全員の予定を入れることで抜けモレが減りました。お互いの自由時間の確保にも繋がっています!
名もなき家事の分担は“大ざっぱ”がポイント!
【Part.2】
「オムツもうないよ」「トイレの紙切れてたよ」
他人事みたいに言わないで
消耗品のストック管理、
ママじゃなきゃダメですか?
子どもをお風呂に入れながら「あ、シャンプーなくなりそう」、片づけをしながら「リモコンの電池どこにしまったっけ?」。ふと気づくと私は我が家のストック大臣になっていた…。
◉profile
立命館大学産業社会学部教授
筒井淳也さん
1970年生まれ。一橋大学社会学部卒業、同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。主な研究分野は家族社会学、計量社会学。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)など。
❝〝名もなき家事〟に気づいて
もらうには、大ざっぱに
任せてみることも必要❞
1. 家事の一部じゃなく
全部を任せてみる
名もなき家事を他人事と思ってしまう理由に、パパが無関心でも、家庭が快適に回っているという現状があると思います。それは何かをパパにお願いする時に、「洗濯を取り込んでおいて」等と具体的な指示を与えてしまいがちだから。それがお膳立てになってしまい、周りの庶務(例えば、服に合わせてハンガーを使い分ける、切れた柔軟剤の補充)に気がつかない要因になるのです。ママはきっと、よかれと思って具体的に説明をして、部分的に家事を切り分けてお願いをしているかと思います。でもそれが後々「なんで気づかないの?」というママのストレスになってしまうのだと思います。
パパは気づかないのではなく、「気づけない」んです。家事には色々な作業や思考の繫がりがあるので、分担せずに全部をやってもらう方がいい。プラス、期間を長めに任せてみること。例えば、思い切って「洗濯」担当だったのを「衣類」担当にするとか。洗濯だけではなく、衣類担当とすることで衣替えの作業や防虫剤が必要なことに気づいたり、名前書きの大変さを理解してもらえるかもしれません。ポイントは気づく機会を失わせないこと。思い切って大ざっぱに任せてみる方が、うまくいくはずです。
2. 家事能力を引き出す
コミュニケーションを!
家事について、男性は「ここまでやる」という水準が女性より低いケースが多いことも原因かもしれません。仕事ではできているはずの周りへの配慮が、家庭内ではおろそかになってしまうんです。会社だと、気を使って完璧にやり遂げようとしますが、家事って上司がいないですよね。できなくても嫌なフィードバックや査定評価もありません。人によって響く言い方は違いますが、「すごく仕事ができない人に見えるよ。できる人って周りの負担を減らすために動けるよね?」と嫌みっぽく言ってもいいかもしれません。うまくやってくれたら、逆の言い方にして「さすが、仕事ができる人に見える!」と褒める。
やりはじめさえすれば、男性も効率的に、うまくできるようになる素質を持っている。夫の家事能力を引き出してあげることが大切だと思います。現に、僕自身が妻に「家事能力」を引き出された張本人でもあります。元々は家事への参加割合が少なかったのですが、妻が粘り強く向き合ってくれたおかげで、今は僕の方が家事をする割合が多いくらいです。また、家事をやる目的を「お互いの自由時間を確保するため」とすると、どうすれば相手の負担が減らせるか?と自然と考えられるパパは多いと思います。
自由時間のために、この家事なら僕の方が効率よくできる! そんなコミュニケーションも生まれるかもしれません。「感謝を伝えるのは面倒」「説明するより自分がやった方が早い」。そう考えるママは多いと思いますが、でもその先に、快適な自由時間があると思って、諦めないでほしいのです。感謝の伝え方も、「あなたが〇〇をやってくれたおかげで、お茶の時間が楽しめた!」など、自分にとって嬉しい時間が増えたことを伝えると互いのモチベーションアップにも繫がると思います。諦めずに粘り強くトライしていくこと。これが理想的な家族のかたちを作っていくのだと思っています。
my family’s episode
我が家はこうしています!
モヤモヤ軽減策2
気づいた人がすぐ書く!
ストック系はシェアが
我が家のルールです
我が家は冷蔵庫の横にホワイトボードを張っています。なくなったものは気づいた人が書いておき、週1回の買い出し前に最終確認。それをスマホで撮り、写真をチェックしながら買い出しをしています。夫婦で共通認識を持てるので、買い忘れやムダ買いが減りました。娘の離乳食シーズンもこのボードを使って乗り越えました!
(会社員34歳・2歳男の子、1歳女の子ママ)
切らした食材ももちろんですが、単三電池やラップなどのキッチンアイテムもメモすることが多いです。ホワイトボードを使い始めて、「なんで自分だけが把握しなきゃいけないの?」というモヤモヤと買い忘れのストレスが軽減されました。
パパが子どもと触れ合った方がいい科学的根拠とは?
【Part.3】
タスクではないけれど、
正直一番大変で重要な役割かもしれない
子どもの遊び相手、
ママじゃなきゃダメですか?
朝から公園で全力の追いかけっこ、お気に入りの絵本の無限リピート、「ママ見て」攻撃…。あれ、まだお昼前!? 体力持たないよ。ママちょっと休憩してもいいかな(涙)。
◉profile
京都大学大学院教育学研究科教授
明和政子さん
京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。同大学霊長類研究所研究員などを経て、「比較認知発達科学」を開拓。近著に『マスク社会が危ないー子どもの発達に「毎日マスク」はどう影響するか?』(宝島社新書)など。
❝〝親性〟は育てるもの。脳の形や
働きに明確な男女差はありません❞
1. 「ママがやらなきゃ!」の
意識を手放す
ヒトの子育てはもともと「共同養育」という、集団で子どもを育てるスタイルを取っていました。チンパンジーが大体7年ほど(子が自立するまで)の周期で子どもを産むのに対し、ヒトは授乳中でも2年ほどの周期で排卵が始まり、子どもを産むことができます。これは母親の役割として「産む」ということに比重を置き、「育てる」という役割を集団で担ってきたヒトの生存戦略ともいえるのです。
ですから、ママが1人で育児をするというのは、本来不自然なことなのです。祖父母や地域の人々など、みんなで子どもの成長を見守ってきた昔と比べ、核家族化が急激に進んだことで「共同養育」の育児スタイルが崩れたのも、この数十年の話です。現代の日本の育児スタイルの中で、本能的にママが「誰かに頼りたい」と思ってしまうのは当たり前のこと。誰かにお願いすることやサービスに頼ることに、引け目や遠慮は感じなくていいんですよ。
2. 母性・父性ではなく
〝親性〟を家族で育てる
ヒトの脳は人それぞれに様々な特徴を持ち合わせており、男性的・女性的という分類を遥かに超えた構造をしています。つまり、性別学的に育児や家事に対する〝向き・不向き〟はないのです。まずはこの事実をパートナーと理解することが重要です。また、男女関係なく、子育てをする際に機能する脳のネットワーク(親性脳ネットワーク)を持っていますが、これが機能しないと子育てをしたいという動機を高めたり、適切にふるまうことが難しくなります。ある実験で、育児を担うママ・子育て関与の少ないパパ・育児を担うパパ(専業主夫)の3タイプに赤ちゃんの様子を映した動画を見せたところ、ママと専業主夫では、脳の反応に同じ動きが見られました。
つまり、親性脳は「経験」によって育まれるということが科学的に証明されたのです。ママ自身も初めから親性脳ネットワークを備えているわけではないので、2人でゼロベースから「親性脳」を育てていく意識が大事です。やり方の説明が面倒、任せたら失敗しそうという理由で、パパの親性脳を育む機会を奪わないことも大切です。普段の保育園とのかかわりや、児童館へのお出かけ等で一緒に子どもと遊び、親も自分たち以外のパパやママと触れ合う。そういった経験の場を増やしていくことが必要だと思います。
3. 触れ合って遊ぶことで
子どもとの絆を深める
子どもと触れ合って遊ぶことで、オキシトシンを中心とする内分泌ホルモン、愛情ホルモンと呼ばれるものが放出されます。これは「信頼できる相手との絆を高めるためのホルモン」で、触れ合っている両者から出されるものです。パパが子どもと〝触れ合って〟遊ぶ時間を増やすことで、お互いに愛情が深まり、結果として育児にかかわっていく機会や時間を増やすこともできるかもしれません。
逆に、普段から触れ合っていないと、たまに触れ合った際に相手を敵だと認識してしまい、対象への攻撃性を高めてしまうホルモンでもあります。そのため、遊びをママに任せきりにすればするほど、子どもとの関係は不仲に…? なんてことも起こりえます。そんなことを望んでいるパパはきっといないですよね。ぜひこの事実をパートナーにもシェアいただき、手を繫いだり、抱っこをしたり、簡単な〝触れ合う〟という時間を増やすところから、取り組んでみるのもいいかもしれません。
my family’s episode
我が家はこうしています!
モヤモヤ軽減策3
生活リズムが整って効果アリ。
何でもママ頼りを脱却
第二子の里帰り出産や夫の育休に向けて、夫と息子が2人だけでもスムーズに過ごせるよう、2人で確認する一日の予定表を張っています。朝と夕方の忙しい時間帯の、お着がえなどの順序を一緒に確認してもらうことで、何かにつけて「ママ~!」と呼ばれる回数が減りました。時計に興味が出てきた息子はゲーム感覚で楽しんでいます。
(会社員34歳・2歳男の子ママ)
イラストは分かりやすく、はっきりしたものを選びました。
イラスト/本田佳世 取材・文/須田瞭子 編集/本間万里子
*VERY2023年12月号「名もなき家事・育児の担当は気がつくと私 それ、ママじゃなきゃダメですか?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。