子ども中心の毎日の中で、なかなか意識することのない母親との残り時間──実は思っているよりも短いかも。2023年の年末年始はいつもよりゆっくり母娘の時間を愛おしんでみませんか。母世代のデータから見るホンネとともにお届けします。
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❝子育て世代の場合、
母親と一緒にいる時間の
82%は過ぎています❞
関西大学社会学部
保田時男教授
家族社会学、社会調査法が専門。主に中期(子が成人し親も年老いていない時期)の親子関係について調査データをもとに研究。延べ6,000人以上の親子に調査を実施。
\一生で母子が一緒にいる時間/
一生のうち母親と過ごす時間の平均は、65,919時間、つまり約2,747日とされています。そのうち、小学生のうちに約半分、25歳までに82%は過ぎています(上図)。VERY世代の場合、母親との残された時間はあと2割もないのです。
母親との具体的な残り時間は、計算式でも求められます。15分間隔で実測した政府の調査では、帰省などでも母親と実際に一緒に過ごすのは1日に4時間程度でした。つまり、母親との残り時間は、「4時間×1年に会う日数×平均余命」。例えば、65歳の母親に年間15日会う場合は、4時間×15日×24年で、1440時間=60日となるのです。さらに、個人差は大きいものの、一般的に健康で過ごせるのは「後期高齢者」に入る75歳までと言われています。つまり元気な時間はもっと短くて、「4時間×1年に会う日数×(75歳−現在の年齢)」ということになります。65歳の母親と年間15日会う場合は600時間、あと25日です。意外と短いですよね。
ただ大切なのは、その事実を認識したうえで、残り時間をどう過ごすかということ。そのためには対話が大事です。例えば統計調査で浮き彫りになったすれ違いの代表例が「孫の世話」で、孫が可愛くても実は体力的に辛いということも多い。一方、親は年老いても自分が世話をする側だと思っているので、経済的には自立し与える側でいたいと考えています(下図)。母親には母親主体の世界観があるので、それを尊重しながら付き合えるといいですね。
だから「親孝行を」とお金をかけたプレゼントが必ずしも母親に喜ばれるとは限りません。それよりも前述の通り、母親にとって娘と過ごした時間の大半が幼少期であり、その頃の思い出は人生の財産。昔行った場所に一緒に出掛けたり、孫の品物を一緒に選んだりすることで当時の思い出をなぞることは、母親にとってかけがえのない幸福な時間になるはず。それこそが娘にしか叶えてあげることのできない、最高のプレゼントではないでしょうか。
\娘との経済的援助関係(横軸が娘の年齢)/
「統計的に見て、子どもが50歳くらいまでは、親の方が経済的に援助しているケースが多い。親は子どもに頼られたいものなのです」
母といられる残り時間って?
=1年に会う日数×4時間×平均余命
「平均余命」は厚生労働省が毎年発表。1年に会う日数×4時間が1年で一緒に過ごす時間で、余命の年数をかけると残り時間に。
【女性の平均余命表】
55歳 33.46
56歳 32.53
57歳 31.60
58歳 30.68
59歳 29.76
60歳 28.84
61歳 27.92
62歳 27.01
63歳 26.10
64歳 25.20
65歳 24.30
66歳 23.41
67歳 22.52
68歳 21.64
69歳 20.76
70歳 19.89
71歳 19.03
72歳 18.17
73歳 17.33
74歳 16.49
75歳 15.67
76歳 14.86
77歳 14.06
78歳 13.27
79歳 12.49
80歳 11.74
社会学の統計数値で知る
〝元気なうちに
母と過ごせる時間〟って?
☑︎ 一生で母親と過ごせる時間は2747日
☑︎ VERY世代が母と過ごせる時間は88%終わっている
☑︎ 厚生労働省が発表する健康寿命は平均75歳
☑︎ 母が65歳の場合、元気な母と過ごせる時間はあと25日(※)
☑︎ 母と顔を合わせて過ごしている時間は4時間/日
※健康寿命の75歳まで残り10年間、年間15回会えると仮定した場合。
良かれと思って…が実は喜ばれていないかも?
データが教える母世代のホンネ!
孫の世話をするのは本当は体力的にしんどい場合も多い
金銭的にも親はずっと与える立場でいたいと思っている
親子で過ごした時間は大半が幼少期。母にとって娘の存在は大人になってもずっと子ども
母は子どもたちが幾つになっても、きょうだい平等に接したい
娘の子ども時代は母娘の共通の財産。一緒に振り返ることが嬉しい
お金をかけたプレゼントやイベントだからといって親の満足度は比例しない
取材・文/八重沢友香子 編集/翁長瑠璃子
*VERY2023年12月号「母と過ごす年末年始、もっと慈しみたい!」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。
出典/総務省統計局「平成23年社会生活基本調査」厚生労働省「令和4年簡易生命表」保田時男 2004 「親子のライフステージと世代間の援助関係」 渡辺秀樹・稲葉昭英・嶋崎尚子編『現代家族の構造と変容: 全国家族調査(NFRJ98)による計量分析』 東京大学出版会