VERY March 2024

VERY

March 2024

2024年2月7日発売

880円(税込)

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母だから、妻だから「やっちゃダメ」それって本当? はらだ有彩さんインタビュー

──昔話に登場する女性たちの隠された「本音」に耳をすませる『日本のヤバい女の子』シリーズなどで話題のはらだ有彩さん。エッセイ『ダメじゃないんじゃないんじゃない』では、仕事、結婚、セックス、妊娠、出産……など女性を取り巻く、なぜか「やらなきゃダメ」「やってはダメ」ということになっているアレコレにスポットを当てます。それって本当にダメなことなんだっけ? はらださんと考えてみました。

*VERY2022年5月号「「結婚しないと×」「離婚したら×」「子どものことで他人に迷惑をかけては×」それって『ダメじゃないんじゃないんじゃない』?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

はらだ有彩(はらだありさ)さん

関西出身。テキスト、テキスタイル、イラストレーションを組み合わせて手掛けるテキストレーターとして数多くの雑誌やwebメディアにエッセイを執筆しながら、「既存のレギュレーションを壊す」べく活動中。著書に『日本のヤバい女の子』『日本のヤバい女の子 静かなる抵抗』『百女百様~街で見かけた女性たち』『女ともだち~ガール・ミーツ・ガールから始まる物語』などがある。

「これが普通」「だからやるべき」と
決めたがっているのは誰?

──新刊のタイトルが印象的ですね。世の中には「さすがにこれはダメっぽい」……と思って躊躇してしまうことがたくさんあります。

「そういうものだから」……で済まされていることに、ものすごく引っ掛かりを感じるんです。「それが常識」「当たり前」と言われても、「なぜ駄目なのか」自分で納得できる理由が見つからないものは「本当?」と警戒してしまいます。「普通こうするよね」とか、「こんなこと言ったら怒られるだろうな」と思ったときに、なぜそう考えたのか想像してみることにしています。誰が、「普通」を決めたがっているのか、誰がどんな行動を促したがっているのか。そこから考えると、自分がなぜ何となく躊躇してしまうのか探れるんじゃないかなという気がして。「こんなことがしたいけど、私は妻だから、母だから、そんなことしちゃダメかも」と感じてしまうのって、きっとそう思った人が個人的に考えすぎで勇気がないからなんていう理由ではないはず。皆さん薄々、「ん? でもこれって何でダメなんだっけ?」と疑問に思っていることもあるはず。「でも、やっぱり普通はこうだよね」と「思わされてる」だけかもしれません。

──はらださん自身は未婚で子どもを産む予定はないと仰っていますが、エッセイの中では、仕事と出産・育児やベビーカー問題といった話にもページが割かれています。何か理由がありますか?

 以前、「ベビーカー様/妊婦様になっていない?」というような記事を見かけて驚きました。「様」をつけて揶揄することで、何となく言われているほうが失敗しているような雰囲気を醸し出すのがすごく卑怯だなと。そう遠回しに揶揄することで、子育て中の方、それも多くは女性が「ああ、子どもがいるのに出掛けたのがダメだったのかな」「わざわざ人の集まるところに出てきた私が、自分の都合を優先しようとして迷惑をかけたのかな」と思わされてしまう。「家から出てくるな」と直接言われればさすがに反論できても、何となく揶揄する雰囲気に囲まれると、どう戦っていいかわからなくなる。私は子どもがいないので、関係ない奴は黙ってろ、と言われるかもしれないですが、実はすぐに反論できるのは私のように直接関係ない人だと考えていて。関係ない人が声を上げたほうが、揶揄しているほうもやりづらいと思うんです。出産・育児はそれだけでも大変なことで、日々の仕事をこなしながら、揶揄されたダメージからも立ち直り、そのうえで遠まわしに文句を言う人に向かって声を上げるのは簡単なことではありません。それに、社会に生きている以上、実は関係のない人なんていないと思います。こういう言い方をすると子どもが社会の存続のためだけに存在しているみたいで語弊があるかもしれませんが、敢えて極論を言えば子どもがいなくなったら社会は持続できません。「大変なのはわかっていて産んだんだろう。自己責任だ」という主張がまかり通るなら、子育て世代に厳しい今の状況が続いていずれ誰も産まなくなり、人類が滅亡するのも「わかっていたこと」になってしまう。誰にとっても関係ないはずがないと思ってエッセイでも取り上げました。

私のわがままかな?と
思ったときは‥‥

──「子育てを頑張っている」なら応援してくれる人だってたくさんいると思うんです。これが結婚や離婚やセックスがテーマになると、いっそうわがままとか常識知らずと言われ後ろ指を指されるような構図がある気がして……。

「嫌だ」と感じることを他人がわがままだと決めつけるのって、変ですよね。「私はこれがどうしても苦手」と感じることって、言ってみれば「ピーマンが嫌い」くらいのその人の特徴だと思うんです。大人なら、ピーマンが嫌なら他の野菜を食べればいいし、そんなこと誰も咎めない。それが、結婚やセックスのようなテーマになるとなぜか「正解」があることになっていて、正解以外の選択肢が示されないばかりか、テンプレートから外れようとするとすごくイレギュラーだと思われる風潮がある気がします。結婚は女性の幸せ。離婚は恥ずかしいこと。パートナーとセックスして子どもを産むべき。セックスに積極的すぎるのはNG。付き合っているのにセックスしたくないなんて変……というような。「これは苦手だから、他の方法を考えるか」とテンプレから外れようとすると、わがままだということにされてしまう。だから多くの人が「どうしたら我慢できるか」とテンプレのほうに自分を寄せて考えさせられてしまう。これはおかしいとか今の状況を変えたいと思って、パートナーに直接気持ちを伝えてみた。けれどわかってもらえないということだってあると思うんですよね。そうなると言っちゃダメだったかなとか、二人の間に流れる空気が悪くなったのは私のせいなのかなと感じてしまう。もちろん、自分の率直な気持ちを伝えて理解してもらえるのは素敵なことですが、理解する気持ちのない人とは本来一緒にいられないものだという気持ちをどこかに持っておくのも、「自分を変えなきゃ」と思わずに済む方法ではないかなと思います。この先もずっと一緒にいるために我慢しなくちゃと無理に思わなくてもいい。対話というのは対等であることが前提で、この先も共に生きていきたいと思ったときに意味を成すことだと思うので。

女性に期待することが
多すぎる

──とくに、結婚生活や育児は、もう嫌だと思っても簡単に投げ出せるものではないので「我慢すればいい」という考え方になることが多いと思います。

 そもそも社会が「女性に期待していること」が多すぎると思うんですよね。その「期待」を裏切ることはまるでタブーみたいになっている。「こうあってほしい」と世間が期待している女性像みたいなものがあって、でも「こうしろ!」とは言わず、女性が自分で選ぶように「ダメ」っぽいことが敷き詰められている。例えば、ムダ毛でチクチクする肌は男性に嫌われますよ、という脱毛サロンの広告とか。毎日の生活の中で多くの人が無意識のうちにそういうメッセージを吸収しながら生きてるから、影響を受けずにいることのほうが難しい。VERYの読者の場合は、結婚して子どもがいる人が多いと思うのですが、「母親」というものにもタブーがたくさん潜んでいる気がします。母親なら自分の仕事より子どもを優先するのが当たり前とか、やっぱり育児は母親でないと、育休を取るなら母親だよね、というような。「女性は妊娠や出産ですぐに仕事を休んだり、退職したりするし、そもそも夫に養ってもらえばいいんだから低賃金でいいよね? 別に働いてくれなくても、家で育児をしてくれたらいいんだけど?」と直接言われればさすがに反論できても、何となくタブーだという雰囲気に囲まれると、どう戦っていいのか……。

全部ひとりでやろうと
しないこと

──「私は何を言われても自分の信念に基づいて行動します」。そういう女性に対して社会は厳しい印象があります。「もうあきらめよう……」と思わずにいられる持続可能な方法ってあるのでしょうか。

 どうしたら声を上げ続けることができるかと考えてみました。あれもダメ、これもダメ、と言われるとものすごい数の矢が飛んでくるように思えて、「敵が多すぎる」という気持ちになりますが、「普通」を決めたがって「ダメ」と言ってくる人が、自分にどんな行動を促したがっているのかをふっと考えてみると、あっちの「ダメ」もこっちの「ダメ」も、根底では同じ考えが矢を射っていたんだ、と気づくことがあると思うのです。世の中のたいていの「ダメみたいなこと」って他の「ダメ」と根底でつながっていることが多いので、これなら声を上げられそう、味方が多そうと思うことからはじめて成功体験を重ねていくのもおすすめです。例えば、「ママになってもきれいでいてほしい」と「既婚女性が派手な恰好をするのはみっともない」という一見相反する「ダメ」って根っこは同じだと思うんです。女性は、男性目線を意識して身づくろいするべきという期待がまずあって、だから夫も子どももいる女性はもう他の男性へのセックスアピールは必要ないよね、という思い込みにつながっていく。ひとつの「ダメ」の仕組みに目を向けることで、他の「ダメ」の正体を暴ける可能性があると思います。でも本当は、ダメを強いられているほうが頑張らないといけないというほうがおかしいですよね。何かを変えたい、声を上げたいと思うとき、全部ひとりで立ち向かおうとすると本当にしんどい。サポートしてくれる人や場所とつながって「なんでひとりでやらなあかんねん」という態度でいるのもダメじゃないと思います。

『ダメじゃないんじゃないんじゃない』
(KADOKAWA 1,650円)

「別にダメじゃないのに、なんかダメっぽいことになっている」ことアレコレ。
産休・育休で仕事に「穴を空ける」のは? 女に性欲があるのは? 怒ったときに思わず乱暴な態度と言葉遣いになるのは? 人生のストーリーから外れてみるのは?……「ダメ」の呪いを解いて明日が生きやすくなるエッセイ集。

*VERY2022年5月号「「結婚しないと×」「離婚したら×」「子どものことで他人に迷惑をかけては×」それって『ダメじゃないんじゃないんじゃない』?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

イラスト/はらだ有彩 取材・文/髙田翔子 編集/フォレスト・ガンプ Jr.

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