日々の記録的にSNSへ投稿していた子育て漫画やイラストが人気となり、プロデビューした〝お母さん漫画家〟。彼女たちが今大活躍しているのが、「コミックエッセイ」というジャンルです。そこで今回、数多くの名作子育て漫画を世に送り出してきたKADOKAWAコミックエッセイ編集部に、「お母さん漫画家」の舞台裏を直撃しました。今回は、お母さん漫画家から専業漫画家になった、こしいみほさんにお話を伺いました。
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好きなことを突きつめたい!
12年間勤めた会社を辞めて専業漫画家に
こしいみほさん
Instagram→miho20141124
Twitter→@541miho
小1と年少の姉弟を子育て中のお母さん。就職と同時に上京し、出産を機に夫の両親と同居。今年、新卒から勤めていた会社を辞めて独立したばかり。「レタスクラブ」「ぎゅって」「カッテミル」(すべてWeb)で連載中。
──こしいさんは今年、会社員を辞めて漫画を本業にされたそうですね。
こしいみほさん(以降、こしい) それまでは副業で漫画やエッセイを描いていましたが、年々、会社員として働いている自分と、漫画を描いている時の自分との〝熱量の差〟が大きくなっていました。
加えて私は義理の両親と同居しているので、そう遠くない未来に介護も始まるとなると、子育ても一段落して、自分のために気力・体力を使えるのはこの10年だけかもしれない。だったら今のうちにやりたいことを突きつめてみたいと思い、会社を辞める決断をしました。
ただ漫画家としての収入は会社員と比べたらかなり落ちるので、本当に悩みましたね。
──教育にお金がかかる時期はこれからですしね。
こしい 子どもが「留学したい」と言った時、ためらいなく「行っておいで」と送り出してあげられる親でありたいと思ってましたし、金銭面で夫の一馬力にさせてしまう危うさも当然、あります。ただ最終的には、「チャレンジして芽が出なかったら再就職すればいい」と腹をくくった感じで。夫も「やりたいことやればいい」と応援してくれています。
──すでにたくさん連載も抱えています。デビューのきっかけは?
こしい はじめての育児で「私」がなくなる感覚を味わったことが、漫画を描くきっかけになりました。子どもが生まれると、生活のすべてが突然赤ちゃん主体になって、対応に追われまくる日々ですよね。それに「半年で寝返りを打てるようにする!」と目標を立てたところで、すべては子ども次第。自分の好きなことを好きなようにできる時間がない生活に息苦しさを感じていました。
漫画を投稿することで
自分を保つことができた
それで娘が5カ月くらいの時、Instagramで100人フォロワーができるまで、毎日欠かさず漫画を描いて投稿してみようと思い立ったんです。フォロワーさんが増えていくのが達成感にもつながって気分転換になり、自分を保つ大切な時間になりました。会社員としてのつながりがなくなった今では、絵の相談もできて子どもの話もできる、そんな仲間がSNS上にいることが本当に心強いです。
そうして投稿を続けていくうちに、お仕事のお声がけもしてもらえるようになりました。
──昔から絵を描くのが得意だったのでしょうか。
こしい 小学生の時から『りぼん』を自作したり、学級新聞を作ったりはしていましたが、本当に趣味の範囲です。ずっと自己流でしたが最近コミックエッセイ講座を受講したりして、読み手を意識した作品作りを心がけるようになりました。
──描き手の方も多いので、差別化が大変ですね。
こしい 私は画力が高いほうでもないですし、そこはいつも考えています。実際、私のInstagramを見て育児漫画を投稿しはじめたという方は少なくなくて、ぴよととなつきさん※1や、まりげさん※2といった方が私をきっかけに漫画をはじめて、私の屍を越えて大活躍されています(笑)。
ただ私は文章を書くのも好きなので、ラップの作詞をしたり、Voicyでおしゃべりを発信したり、漫画に限らずいろんなやりたいことがあって。絵で伝えたいこと、喋って表現したいこと、いろいろと使い分けながら、幅広くチャレンジしていきたいです。
※1 ぴよととなつきさん:Instagramフォロワー約15万人の、関西在住の人気イラストレーター。
※2 まりげさん:Instagramフォロワー20万人超の漫画家。田舎暮らしの発信も人気。
取材・文/小泉なつみ 編集/フォレスト・ガンプJr. イラスト/こしいみほ
*VERY2022年1月号「「お母さん」は漫画家への近道!?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。