日々の記録的にSNSへ投稿していた子育て漫画やイラストが人気となり、プロデビューした〝お母さん漫画家〟。彼女たちが今大活躍しているのが、「コミックエッセイ」というジャンルです。そこで今回、数多くの名作子育て漫画を世に送り出してきたKADOKAWAコミックエッセイ編集部に、「お母さん漫画家」の舞台裏を直撃しました。今回は、人気お母さん漫画家・まるさんにお話を伺いました。
*掲載中の情報はVERY2022年1月号誌面掲載時のものです。
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シングルマザーで子どもは療育施設通い中
自分の大変なことが漫画では強みになり、人のためにもなった
まるさん
Instagram→maru.manga
Twitter→@shishishishimr
軽度知的障害で療育施設に通う3歳のリュウくんとの暮らしを綴る、30代シングルマザー。デザイナー兼パート兼イラスト執筆という3足のわらじを履く。発達障害の情報サイト「LITALICO発達ナビ」で連載中。
──漫画を書き始めたきっかけは?
まるさん(以降、まる) もともと学生時代にイラストを専攻していたので、絵は昔から描いていました。ただ描いているところを人に見られるのがなんとなく恥ずかしくて、結婚している時はやめてたんです。その後、子どもが生まれてから離婚して一人になったので、「じゃあ描こうかな」という感じで絵を再開しました。
──SNSに漫画を投稿したのはどうしてですか?
まる 最初は「どうせ描くなら投稿するか」くらいの、本当に軽い気持ちでしたね。普通の育児漫画を描いていましたが、当時はペンタブ(※)をうまく使いこなせず、しばらくほったらかしにしていました。※ペンタブレット。デジタル作画に使うデバイスのこと。
でもその後、子どもの療育通いが決まったことで、もう一回漫画にチャレンジしたんです。
自分の経験が、誰かの役に立つ
──「療育」という情報を発信されようと思った、ということでしょうか。
まる 保育園の先生から発達の遅れを指摘され、療育に通うことが現実味を帯びてきたんですが、言葉としては知っていても、実際に療育でどんなことをするのか、保育園と何が違うのか全然わからなかったんですね。
私自身、その時すごく情報が欲しかったから、今の自分の経験を描き残しておけば誰かの役に立つかもしれないと思ったんです。
──SNSなら、同じ悩みを抱えるお母さん同士がつながりやすい面もありそうです。
まる たとえば私のような、「知的障害児を育てるひとり親」という家庭の状況にぴったりな育児書はなかなかありませんが、SNSなら悩みを分かち合える人を探しやすいですよね。
私のTwitterも、療育のことを描きはじめてから一気にフォロワーさんが増えたんですよ。
──当事者のリアルな声が求められていたんですね。
まる 間違いなく「シングルマザー」「ひとり親」「発達障害グレーゾーン」「知的障害」といった内容がフックになっていると思います。だから気になったり、情報を求めて私の漫画を見てくれるんだろうなって。そういう意味でも、本当に子どもに感謝ですよね。彼が私に、SNS漫画という新たなフィールドを見つけてくれたと思っています。
漫画に反応をもらえると本当に嬉しくて、モチベーションがめちゃくちゃ上がりますね。描く枚数も増えて、今はもう漫画が楽しくて仕方ないです。
──今後も描き続けていきますか?
まる 今は本当に描くことが楽しいので、暇さえあればiPadを開いて何か描いています。普段はフリーのデザイナーをしていますが、今後、漫画やイラストが仕事になったら嬉しいですね。
実は若い時、出版社にイラストの売り込みに行ったことがありました。だから厳しい世界だということも重々承知。ただその時代に私はSNSをやってなかったので、今は「これからどうなっていくんだろう?」ってワクワクしています。
今後もネタが尽きない限りは描き続けていくでしょうね。そうそう、子どもが何かやらかすと怒ったりイライラしたりしがちですけど、「あ、これも漫画にできるじゃん!」と思うと、大変な時間も乗り切れるんですよ。
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取材・文/小泉なつみ 編集/フォレスト・ガンプJr. イラスト/まる
*VERY2022年1月号「「お母さん」は漫画家への近道!?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。