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【ママだって、こんな風に政治とかかわっていける!】❸田嶋みづきさん「フラワーデモ開催が自分の成功体験に」

 

 10月31日に投票が迫った衆院選。

私たち・子どもたちの生きるこれからの社会がどうあってほしいか。その意思を直接示すことができるのが、投票行動です。

ただ、投票は荷が重いと感じている方もいるかもしれません。「私の1票じゃ何も変わらない」と思っている方もいるでしょうか。

そこで国政選挙直前の今回、VERYでは社会や行政に声を届けようと活動をしている3人のお母さんに取材。私の生きづらさを、私だけの問題にさせないためにできることはなにか。また、衆院選で注目したい政策などについて聞きました。

最終回となる今回は、性暴力に声を上げた「フラワーデモ群馬」代表の田嶋みづきさんです。(全3回。前回はこちら

田嶋みづき

◎田嶋みづき(たじま・みづき)さん

「フラワーデモ群馬」主催。1986年生まれ。群馬県出身。大学卒業後、会社員として勤務。26歳の時に結婚し、現在は7歳と4歳の2児の母。2019年8月に東京でフラワーデモに初参加。それをきっかけに、その翌月から地元群馬でのフラワーデモを主催するように。現在も月に1回のペースで開催している。フラワーデモぐんま(高崎)公式Twitterは @FlowerTakasaki

 

コップの水があふれるように
語りたい気持ちが湧き上がってきて

 

——性暴力根絶を目指す「フラワーデモ」を地元・群馬で主催している田嶋さん。自ら声をあげようと思ったきっかけを教えて下さい。

田嶋みづきさん(以降、田嶋) 2019年の4月に初開催されたフラワーデモのことは、新聞で知りました。私はそれまでの10年間、「性被害に遭ったのは自分のせい」と、ずっと自分自身を責めていました。でもフラワーデモでは性被害者自身が「私は悪くない」「加害者が罰せられないのはおかしい」と声に出していて、「ああ、言ってよかったんだ」と教えてもらったような気がしました。
それからはコップの水があふれるように、「自分の声で被害を訴えたい」「私は悪くなかったと言いたい」という気持ちが溢れて止まらなくなってしまって。自分の心を解放してあげて、安心して生活を送りたいという一心で、自分自身が救われたかったんだと思います。
その4カ月後、実際に自分でも東京駅で行われたフラワーデモに参加して、はじめて自分の性被害のことを話しました。話し終わると、静かだけれども、本当に温かい拍手で迎えてもらえて。なんてあったかい場だろうと思いました。それに、声を上げた人を責めたり否定したりする人もいない、「私を全部受け入れてくれる場所だ」とも感じました。

 

自分の身近な社会すら変えられないなら何も変えられないと思った

 

——東京駅のデモに参加されたことをきっかけに、翌月から地元・群馬でフラワーデモを主催されたそうですね。ただ、ご自分の地元で声を上げるというのはとても勇気がいることだと思うのですが、あえて生活圏での活動を決意された理由はなんだったのでしょう。

田嶋 たしかに時々東京に行ってデモに参加するだけなら近所の人たちに活動がバレることもないでしょうし、色々と安全だったとは思います。でもそれでは私自身が変われないし、自分の身近な社会すら変えられないなら、大きな意味では何も変わらないだろうと思ったんです。自分が変わって、家族が変わって、友だちが変わって……みたいに、小さなさざなみを起こし続けることでいつかその波が大きなものになって、社会全体が変化するのではないでしょうか。
群馬は保守大国と言われていて、決して、社会活動がやりやすい土地とは言えません。実際私もフラワーデモを主催したことで、以前勤務していた会社の社長からパワハラを受けたと感じ、退職に至ったこともあります。

——それは大変でしたね……。それでも活動を続けるモチベーションはどこからくるのでしょうか。

田嶋 私はフラワーデモによって解放されたところが本当に大きくて。以前から職場でのセクハラ・パワハラは常態化していましたが、それまでの私はずっと何かに抑圧されていて、嫌な目に遭っても誰かに何かを訴えることもなく、ひたすら我慢し続けていました。
でもフラワーデモを主催したら本当に自分が変わって、嫌なことにはハッキリ「NO」と言えるようになったんです。そういった変化もあって、会社を辞めることにしました。今は私の経験が誰かの勇気になるならいいなと思って、活動を続けています。

高崎駅西口でのフラワーデモの様子('20年撮影)

「自分なんて生きている価値のない人間」と思わなくなった

 

周りからも「変わったね!」とよく言われます。私はPTSDと解離性障害を患っていたので、誰かのサポートなしでは家事も育児も仕事もできないような状態だったこともあり、夫は「自分が全力でサポートしなきゃ!」と気張っていました。そうしたら私がフラワーデモをはじめてみるみる元気になっていって(笑)。
デモを主催したことで得られたのは、達成感です。トラウマを抱えて生きていると、「どうせ何をやってもダメ」「自分なんて生きている価値のない人間」と思いがちで、どんなことも「失敗体験」として処理してしまっていました。でもフラワーデモを主催するために自分で周りに声がけをして、チラシを作り、実際にマイクを握って街中で声を上げたこと、そこに多くの人が集まって連帯できたことは、本当に自分にとって大きな成功体験になりました。
それからは、ずっとシャットアウトしていた性暴力に関する情報を積極的に調べたり法律の勉強をはじめたりと、とにかく自分がわーっと変わっていったんですけど、その変化のスピードがあまりに速かったのか、今度は夫が私についてこられなくなってしまって。
喧嘩も増え、私も段々苦しくなってきてしまったので主治医に相談したら、「みづきさんはそのまま進めばいい。夫がそのスピードについてこられないなら、結婚という制度にとらわれなくたっていいんだよ」と言ってもらえました。その後、夫から「ここで俺が変わらなきゃ結婚生活が終わる」と言ってくれたので、歩調を合わせてくれたのだと思います(笑)。

現在も毎月11日に開催している。('20年撮影)

——今の私の目標が「ママ友と政治の話をする」ということもありまして、「自分の周りから変化をおこしていく」という田嶋さんの言葉が胸に響きました。

田嶋 ママ友って難しいですよね。どうしても子どもありきの関係なので、子どもを巻き込んでしまうと思うと、私もなかなかそこには踏み出せないですね。
ただフラワーデモで会った人とは、はじめから政治や社会活動の話ができます。特に女性は子育ての中で感じることとか、夫との問題なんかを生活者目線で一緒に話せるので、やっぱり男の人よりも話しやすいし、問題意識が共有しやすいなあと思います。
私自身は両親が政治活動をしていたこともあって、家庭でもよく政治の話をしていました。母は社会科の教員免許を持っていたこともあり、私がニュースに対して質問をすると、いつも日本の歴史を織り交ぜながら答えてくれました。なので昔から選挙に行くのは当たり前で、逆に行かない、という選択肢を知らない家庭で育ちました(笑)。

——ではお子さんとも政治や社会問題の話をできる関係が理想ですか。

田嶋 そうですね。フラワーデモのこともそのうち、ちゃんと説明したいなと思っています。
海外だと友人同士でフランクに政治の話をしますよね。すごく羨ましいなと思う反面、自分の意見をしっかり持っていないと流されてしまったり、自信のなさから相手の言うことを素直に聞けなくなってしまうかなとも思っていて。だから自分をしっかり持ちながらも、違った考えや異なる境遇の人の言葉も受け止めることができる、そんな子に育ってほしいと思っています。

——では最後に、田嶋さんが今回の衆院選で注目している政策を教えてください。

田嶋 子ども関係の仕事をしていたので、子どもの貧困には以前から敏感でした。子どもの貧困は主に家庭に要因があります。それがもし経済格差によるものだとしたら、是正してほしいと思っています。
……と言いつつ、フラワーデモを主催したことで政治家の方と直接話す機会が増えたおかげで、正直、その方が口先だけの人か、それとも本当に公約を実行してくれる人なのかということがよくわかるようになりました。だから政策だけを見るのではなく、政党の実行力や、これまでの実績を見た上で投票しようと思っています。

・田嶋さんが今回の衆院選で
 重視したいポイント・

子どもの貧困対策、経済格差是正のための政策

取材・文/小泉なつみ

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