VERY January 2022

VERY

January 2022

2021年12月7日発売

780円(税込)

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【ママだって、こんな風に政治とかかわっていける!】❶天野妙さん「#子育て政策聞いてみた」でわかったこと

 

 10月31日に投票が迫った衆院選。

私たち・子どもたちの生きるこれからの社会がどうあってほしいか。その意思を直接示すことができるのが、投票行動です。

ただ、投票は荷が重いと感じている方もいるかもしれません。「私の1票じゃ何も変わらない」と思っている方もいるでしょうか。

そこで国政選挙直前の今回、VERYでは社会や行政に声を届けようと活動をしている3人のお母さんに取材。私の生きづらさを、私だけの問題にさせないためにできることはなにか。また、衆院選で注目したい政策などについて聞きました。

第1回は、待機児童問題に取り組む市民団体「みらい子育て全国ネットワーク(miraco)」代表・天野妙さんです。(全3回予定)

◎天野妙(あまの・たえ)さん

1975年生まれ。日本大学理工学部建築学科卒。保活の現状を知り、待機児童問題を訴える市民団体、「みらい子育て全国ネットワーク(miraco)」を立ち上げる。また、男性社会で孤軍奮闘した経験をきっかけに、性別・役職・所属・国籍に関係なくお互い尊敬しあう社会づくりに貢献したいと考え合同会社Respect each otherを設立し、コンサルタントとしても活躍中。3児の母。

 

活動のきっかけは「8年経ってもまだ保育園入れないの?」

 

——天野さんが立ち上げた「みらい子育て全国ネットワーク(miraco)」とはどんな団体ですか?

天野妙さん(以降、天野) 活動のモチベーションが個人的な経験と紐付いているので、まず活動をはじめた経緯からお話しさせていただきますね。

私には子どもが3人いまして、2008年、2012年、2016年にそれぞれ出産しているんですが、長女を保育園に入れて4月から復職しようと思ったら、その直前の2009年2月に保育園に落ちたという通知がきたんです。「少子化なのになんで入れないの?」と思いましたが、その時は「そういう社会なんだな」くらいで自分の中で終わってしまって。

転機になったのは、3人目を出産した2016年。その年の2月に「保育園落ちた日本死ね」が話題になっていて、「私がはじめて子どもを生んでから8年も経つのに、いまだに保育園に入れないの?」とびっくりしたんです。

Twitter社の広告に採用された、天野さん発の「#保育園に入りたい」。
Twitter社の広告に採用された、天野さん発の「#保育園に入りたい」。

そこから「待機児童問題をなんとかせねば」と火がつき、「みらい子育て全国ネットワーク(miraco)」の前身となる市民団体を立ち上げました。2017年に要望を声にして表そうと、「#保育園に入りたい」というハッシュタグを使った投稿を呼びかけたところ、Twitter社の広告に採用されるほどの反響があったんです。

 

政治家と直接話すと「この人、薄っぺらいな〜」ってわかる

 

やっとここからご質問の答えになるかと思いますが、現在miraco では3つのプロジェクトを進めています。まず1つ目は待機児童問題の解消。保育園に入れないと女性のキャリアが断絶するだけでなく、今後仕事をしながら子どもを育てていく未来が描けないため、少子化も進みます。

さらに男性は男性で、家族を養う大黒柱としての役目を期待され、意に沿わないハードワークや単身赴任を押し付けられがちです。男性が会社に縛り付けられてしまえば家庭にコミットできないのは当然で、そのしわ寄せは妻にやってきます。旧態依然とした社会の仕組みをアップデートし、男性の“家庭進出”を後押しする。これが2つ目のミッションです。

そしてこの2つの目標を達成するために、政治家や候補者に子育て政策を語らせ、行政の中心課題として扱ってもらうように働きかけることを3つ目のプロジェクトとして活動をしています。

「東京都知事選挙2020 #子育て政策聞いてみた」より

——政治家に直接働きかける活動をされているんですね。具体的に、どんなアクションをされているのでしょうか。

天野 日頃のロビー活動に加え、選挙の度に、立候補者に直撃取材をする「子育て政策聞いてみた」という活動をしています。本当に候補者に突撃してアンケートを手渡していますが、直に喋ってみると、「あ、この人子育て政策のことなんも考えてないわ」というのが一発でわかるんですね(笑)。「待機児童ゼロにします!」と言っていた方に「この地域に待機児童ってどのくらいいるんですか?」と訊くとなにも答えられなかったりしますから(笑)。

ふだん政治家と喋る機会が少ない方も多いかもしれませんが、そういった意味でも、候補者や政治家と直接コミュニケーションをとることはとても大切だと思いますね。

#Goto候補者のキャンペーン用紙を持って街頭演説を聞きにいく天野さん。

——今ちょうど、立候補者が駅前で挨拶をしていたりします。でもどうやって話しかければいいかわかりません…。

天野 miracoでは「#GoTo候補者」キャンペーンというものをはじめています。選挙活動では公約を書いたビラを候補者から渡されることがあるかと思いますが、逆にこちらからチラシを手渡すことで、自分が実現してほしい子育て政策を候補者に届けよう、というプロジェクトです。

ぜひこの下のチラシをプリントアウトしてもらって、解決してほしい子育て政策を中央の空白部分に書いてください。保育園・学童の待機児童問題、保育者・職員の処遇改善、健診から出産までの無償化など、自分が困っていること、またはかつてとても辛い思いをしたことなどをぜひ書いてみてください。

そして候補者と直接会うタイミングがきたら記入済みのチラシを手渡して、あなたの問題意識をぶつけてみましょう。実際に候補者と対話された方は「#GoTo候補者」「#(候補者名フルネーム)」を付けて、写真や会話した感想などを添えてTwitterやInstagramに投稿していただけたらうれしいです。

#GoTo候補者A4チラシ。ぜひダウンロードしてプリントアウト→子育てに関する要望を記入し、バッグの中に忍ばせておきましょう…!

 

「外で政治の話はしちゃダメ」と教育されてきた私たち

 

——私、自分のSNSで政治的な発言をしたことがないんです。それにママ友に選挙の話をするのもすごく抵抗がありまして…。天野さんはどうですか?

天野 私もそうですよ。今となっては、私がこういう活動に携わっていることを知ったママさんから「なにか手伝おうか」と話しかけられたりすることはありますけど、私も自分からは言えなかったですね。

でも最近、「センキョ割」(※)を広める活動もしていて、恐る恐る保育園のお父さんに相談してみたんです。そうしたらその方のお父さんがなんと商店街の組合長だったんですよ! それでもうトントン拍子で商店街のお店の方々にセンキョ割の話をすることができたんですが、ちょっと頑張ってハードルを越えてみると、ものすごいリターンが返ってくることもあるんだなと実感しています。

というかそもそも私たちって、小さい時から「政治と宗教とお金の話は外でしちゃダメ」っていう教育を受けてきてません? でも自分の給料に不満があったら、それを誰かに訴えなければ改善なんてできないですよね。

一方で、モヤモヤや不安を抱えたまま行動に出られない、声を上げられない人がいるのもよくわかるんです。だって私自身、12年前に待機児童問題に直面して「少子化なのに変だな」と思ったけど、そこから実際にアクションを起こすまで8年間かかってますから。

※投票した証明をお店などに見せると、割引やサービスが受けられるというもの。10年ほど前からはじまった投票率向上のための社会運動のひとつ。

 

——実際に行動に移す人とそうでない人の違いはなんでしょうか。

天野 私の場合は崖から突き落とされたからですね。それまでの自分ってわりと新自由主義に近い思想で、自分がうまくいかないのは個人の責任であって、己の努力が足りないからだと考えていました。でも、保育園に入れなかったためにキャリアを失うことを自己責任にしてしまったら、自分の可能性を自分で潰すことになってしまうし、個人に責任を押し付けている限り、社会問題は永遠に解消されません。

3度の保活を経験しましたが、厳しさはまったく変わらなかった。言葉を選ばずに言えば、「もうやってられるか!」というやけっぱちな気持ちになるほど追い詰められた結果、活動を始めたんです。

そうして始めた活動により、国会の場でたくさんの議員の方が保活の実態を取り上げてくれました。さらに今年6月には男性が育休を取りやすくする制度を盛り込んだ育児・介護休業法の改正法が成立。声を上げたことで法律を変えることができたと思っています。

 

「投票」はご飯を作るのと同じ

 

——政治に直接、声を届けることができる選挙が目前に迫っています。投票に悩むお母さんにメッセージをお願いします。

天野 今子育て中の皆さんは子どもの教育を考えて保育園を見て回ったり、将来に備えて貯金をしたり、それこそ健康のために毎日ご飯を作ったりと、さまざまなかたちで一生懸命、子どもに投資していると思います。ただそういった自分が手を動かす直接的なことだけでなく、「投票」というアクションもまた、未来への投資なんですよね。

私は衆院選で、少子化という喫緊の課題に対して各党がどんな公約を出すのかに注目しています。少子化改善のために子育てしやすい環境の整備は欠かせませんから、具体的にどんな案が出てくるのか見極めたいと思います。

もちろん、選挙後すぐに私たちの暮らし向きが良くなるわけではないですが、子どもたちの生きる未来の社会を改善するために、投票は絶対に必要なこと。選挙や政治は決して遠いものではなく、ご飯を作るのと同じくらい生活と地続きのアクションなんです。

「投票所はあっち→」ステッカーを掲げる天野さんのお子さん。

生活と密接に結びついていると言えば、投票率向上を目指し、誰でも投票所の案内ができる「投票所はあっち→」プロジェクトにも参加していて、ダウンロードした「投票所はあっち→」の矢印ステッカーを持って近所に子どもと写真を撮りに行ったりしています。5歳の子はまだ選挙のことはよくわかっていませんが、「なにこのやじるしー」とか言って楽しそうにステッカーを掲げてくれました。

我が家は政治の話をうちですることも多いので、長女から「岸田さんはどう思う?」と聞かれたりね(笑)。子どもたちの世代はK-POPも家事育児も政治も社会問題も、同じトーンで皆と語り合えるようになっているといいですね。

・天野さんが今回の衆院選で
 重視したいポイント・

子どもの未来のために、各候補がどんなことを言うのか

取材・文/小泉なつみ

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