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身近な人の死やいじめ、性被害。子どもが受けた心の傷への向き合い方とは

前回の記事「自殺って何?と子どもに聞かれたらどう答えたらいい?」では、子どもがショックなニュースに接した時に親はどう対応すればよいかをテーマにお届けしました。

 

今回は子どもが実際にショックな状況に居合わせてしまったとき、あるいはショックな出来事を見聞きし大きな心の傷を受けてしまった時に、親である私たちは子どものために何ができるかを考えます。

 

前回に引き続き、陸上自衛隊のメンタル教官として長年の経験をもち、事故やいじめ、犯罪による子どものPTSD(心的外傷後ストレス障害)のカウンセリング経験も豊富な心理カウンセラー、下園壮太さんにお話を聞きました。

 

 

その話題に触れないでいる限り

子どもの心は不安から抜け出せない

 

自分の子どもがショックな出来事を経験する。親なら誰もが起こらないでほしいと思うことですが、起こり得ないとは限りません。そして、実際に起こったとしても私は対処できる自信がある、という人は少ないのではないでしょうか。

 

「子どもがショックな出来事に巻き込まれた時、親は“思い出させたら、この子がつらいのではないか”という配慮から、子どもに話を聞いていいのかどうかと葛藤してしまうことがあります。しかし、“子どもの話は、できるだけ早いうちにしっかり聞く”というのがこの場合の正解です。

 

子どもの頭ではその出来事をどう理解していいのかもわかりませんし、自分だけでは、自分の身から危険が去ったのか去っていないのかもわかりません。もし親が1ヶ月何も聞かなかったとしたら、子どもにとってはその間ずっと不安定な状態が続くことになります。こんなに苦しいことはありません。

 

さらに、親がその話に触れないでいると、子どもも雰囲気を察して「このことは話してはいけないのだ」と一人で抱え込んでしまいます。親は本来、子どもにとって一番安心できる、守ってくれるべき存在。親が子どもを守るためには、まずはしっかり話を聞いて、情報をしっかり把握することが大切です。

 

もし、みなさんの中であの時、話を聞けなかったという方がいたら、今からでもきっちり話を聞くということにチャレンジしてみて。ただし、時間がたつと直後より思い出すつらさが大きくなり、あまり話したがらないこともあります。

そういう時は、無理強いはいけません。その子なりに、その出来事から上手に距離をとって生活を再開しているかもしれないのです。それでも、あの出来事以来どうも様子がおかしいと感じるなら、カウンセラーをはじめとしたプロに相談する。接し方のアドバイスを受けてもいいし、その専門家にお子さんの話を聞いてもらう。“自分のやり方はよくなかったかもしれないけれど、あなたのことを思っているから、プロの方を探してきた”と、そういう形で愛情を示すこともできます」

 

ダメ出しは絶対しない。

全肯定で話をじっくりと聞く

 

「話を聞く時は、その子が見たこと、聞いたこと、考えたこと、感じたことを、子どもをよく観察しながら、守ってあげるように、穏やかに聞きます。

 

子どもが心配なあまり親がついパニックになって、 “どうしてこうしなかったの”と問い詰めたり、怒りながら聞いてしまうケースも多いのですが、子どもにとっては心の傷を負っている上に、守ってくれるはずの親からさらに攻撃されるということになると、とてもつらい体験になってしまうので気をつけましょう。お母さん一人で聞くと感情的になってしまいそうなら、夫や、落ち着いて話せそうな人と一緒に聞きましょう。

 

その時にダメ出しなどの評価を絶対しないのが最大のポイントです。子どもがどんなことをした、思っていた、感じていたとしても、“そんなことしたら(思っちゃ)ダメでしょう!”と否定しないこと。子どもは何が正しいか判断できません。“自分だけ逃げようと思った”ならそれでもいい。人の感情というのは本来、原始人的なもの。原始人的に正常な反応です。あるいは“逃げたらまずいと思った”でもいい。あるいは“動けなかった”、すべて人間的な反応なのです。べき論ではなく、“そうだったんだね”と全部受け止めてあげます。

 

親の価値観で怒ったり、否定するのではなく、子どものことをきちんと受け止めて“それでよかったのだよ”という評価をする。“あなたのとった行動はぜんぶよかった。絶対あなたの味方になってあげるから”というスタンスで聞くことが大切です。

 

話を聞いて、もしかしたら、親が今後対処しなければいけないことが出てくるかもしれませんが、後から”こうすべきだった”と子どもを責めても終わってしまった過去は取り戻せません。子どもの安心を最優先しましょう」

 

 

重要なのは問題解決ではなく

感情の掃除をしてあげること

 

「1時間は、親の意見を言わず、子供の話を全部聞くつもりで丁寧に聞いてあげましょう。話を全部聞いたという親御さんでも、だいたい10分くらいしか聞かず、あとは、こうすればよかったという説教をしてしまう人が多いのです。また、気をつけてほしいのは、一番の目的は子どもの話をすべて聞いて感情の掃除をすることです。しかし、たいていの親はすぐに対策を考えようとします。

いつもの仕事のように子育てをしてしまうのです。それでは子どもの気持ちのケアができません。子どもにとって、対策はどうでもいいんです。親が全部聞いてくれた、ということの方が重要です。

 

もし、そこで子どもが言えなかったことがあったとします。それが子供なりにとても気になっていることだったとしたら、自分は秘密にしていた(正直に言えなかった、うそをついた)、という思いを一生抱えたり、誰もそのことについて教えてくれなかった、と子供なりの偏った解釈を一生引きずることになるのです。その時点で、親が聞いてくれれば、親が“それは気にしなくても大丈夫”とちゃんと説明して、クリアにできることが結構多いものなのです。これが心の掃除です。こうした一つ一つの記憶のケアをしないで、心の中で悲惨な現場のイメージ、ダメな自分のイメージが凍結してしまうことがPTSDの一因にもなります。

 

対策の前にまずは現場記憶の掃除をする。とにかく言いたいことを全部怒らずに聞いてあげる。現実的な対策も、もちろん重要です。しかし実際には、警察、病院などいろいろなところが対策を打つわけなので、親が行う対策というのはそれほど多くはないのです。それより、本当に親がやらなくてはいけない、親にしかできないのは子どもの心のケア。問題解決よりも、子どもの心の掃除、心の止血を優先。それが親の一番の役割だと思います」

 

心の傷が症状に変わった時に

親ができることとは?

 

 

「心の傷を負った時、眠れない、食べられない、興奮して泣きさけぶ、記憶がない、お漏らしをする、感覚が麻痺をして覚えていない、さびしがる、子ども返りなど、わたしが、ファーストショックと呼んでいる反応が出てくることがあります。

例えば、急に赤ちゃん返りをする子供がいたとしても、それを決して、怒ってはいけません。風邪で熱が出ている人を、「どうして熱など出しているの」と怒るようなものです。また、子供の場合特に事故や事件など全くなかったように、逆に元気にふるまうこともあります。周囲から見てつらそうでなくても、麻痺という反応である場合が多いのです。実はかなり大きなショックを受けている可能性があるのです。

 

 

ショックを受けた子どもには安心が一番大切。もし、何か症状があらわれたら、ぎゅっと抱きしめてあげること。“大丈夫だから。お母さんがついているから。ちゃんと守ってあげるから”と呪文のように言ってください。

 

そして、眠れなかったとしても、それは時間が経つとおさまってくるということを伝えます。子どもにはこの不安がいつ終わるのか、見当もつきません。“お母さんも小さい時にこわいことがあったけど、こうだった”と自分の思い出話をしてあげるのもおすすめです。“これはあなただけではなく、みんなに起きる変化なの。そして必ず時間とともに小さくなるものだよ”ということを子どもに伝えましょう。多くの場合、1か月もすれば普通の生活に戻れます。しかし、まれに記憶のトラブルが大きくなったり、対応に心身ともに疲れてしまって、うつ状態に陥る場合もあります。それを私はセカンドショックと呼んでいます。

 

ファーストショックをセカンドショックに移行させないためにも、親ができることは、子どもに “大丈夫”と言い切ってあげること。そして親が動揺しないこと。親の動揺は子どもにすごく伝わります。すると、子どもは“やっぱり何かおかしいんだ、自分におかしいことが起こっているんだ”と不安になります。親はどんと構えること。まずは1〜2週間様子をみて、ファーストショックの症状の頻度、程度が落ちない場合にはカウンセラーや医師に相談するようにしましょう」

取材・文/加藤みれい
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