VERY November 2020
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VERY

November 2020

2020年10月7日発売

780円(税込)

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「自殺って何?」と子どもに聞かれたときの正しい伝え方

ニュースやSNSなどで、私たちが直面する「突然の死」。テレビで報道される著名人自殺のニュースを耳した子どもから「自殺って何?」と聞かれて困ったというママも少なくありません。「突然の死」について、自分がどう捉え、どう子どもに伝えていけばいいのでしょうか。陸上自衛隊のメンタル教官として長年の経験をもち、自殺や事故の心理アフターケアのプロフェッショナルとしても活躍する心理カウンセラー、下園壮太さんにお話を聞きました。

 

子どもの不安が大きくなる前に

しっかりと正しい情報を与える

 

「まず、人は何か不穏な情報が入ってきた時、一体何が起こったのか知らなければいけないという気持ちに駆られます。そこでインターネットで調べたり、知り合いと話したりするわけですが、実はそうすることで、さらに不安が大きくなることがあるのです。

 

著名人が自殺した場合、多くの人は“なぜ、どうして”が先立って“検索しなければ”という行動をとります。心の中で感情がたくさん動けば動くほど、行動に駆り立てられるのが人の心理なのです。

 

ですので、子どもが何か不穏なものを目にしたり、耳にしたりした時も、よくわからないままにしておくことは避けなければいけません。そのような時は、早い段階で親がしっかりと正しい情報を子どもに与えてあげること。ネットやさまざまなメディアを通じて玉石混交の報道に子どもが接することで生じる情報の混乱を止める必要があります。

 

子どもに“何が不安なの?”“今、どういうふうに思っているの?”と聞いてあげましょう。親が気にしていないことや、知らないことでも、子どもがすごく気になっていることがあれば“お母さんがきちんと調べてあげるから。ちょっと待ってね”と話し、調べた情報を与えてあげると子どもは落ち着きます。ポイントは親が一緒に動揺しないこと。落ち着いた態度で接しましょう。

 

例えば子どもの連れ去りなど、子どもが不安を感じるような事件、ニュースで流れる情報についても“この事件を起こした人はもう捕まっているから大丈夫だよ”と原因や対策をきちんと説明してあげましょう。親が子どもを安心させられるように日頃から社会の出来事に関心をもち、ある程度勉強しておくとよいかもしれません。ただ、ひとつの情報、ひとつの意見が正しいとは限りません。大人が持っている情報や感覚が、間違いということだってある。お子さんの年齢にもよりますが、親の意見を押し付けすぎるのもいけません。子どもが親を情報源として避けるようになるからです。親の意見として、情報との接し方を含めて子どもにアドバイスし、同時に子どもの主体性も尊重しましょう」

自殺は心の病気が原因。

予防も治療もできると伝えてほしい

 

「正しい情報を子どもに伝えるのが難しいのが自殺です。子どもに説明するなら“人間というのは、普通は死にたくないと思っている。けれど、うつという心の病気は、つらさがいつもより何倍も強く感じてしまう病気で、つらい気持ちがあまりに大きくなると、それを止めるために死にたくなってくるときもある。でも、大丈夫。これは病気だから、かからないようにすることもできるし、もしそうなっても治療することもできる、お母さんが君のことをきちんと見ているからね。自分でもいつもよりつらすぎると思ったら、いつでも相談してね”と伝えてあげてください。

自殺や病気は、不安になる情報です。不安情報を与えたら、必ずそれにどう対処すればいいかという“安心情報”もセットで伝えてください」

 

 

これからの社会で必要なのは「受け身」のスキル。

周囲に助けを求められる子にする

 

 

「昔は子どもはうつにならないと言われていましたが、今はうつになる子も多いです。しかし、子どもは自分がつらい状態だということがわかっていませんし、解決する方法もわかりません。大切なのは、苦しいと思った時に、人に助けを求められるようになること。もちろん、時にはがまんをすることが必要な時もありますから“お母さんも気をつけているけれど、つらすぎるな、と思った時には相談して。がまんして頑張った方がいいことなのか、助けを求めた方がいいことなのか、一緒に考えてあげるから”と子どもに伝えましょう。

 

眠れない、食べたくないということが長く続いたり、つらい気持ちが続く時は、うつ状態になっていることが多いです。しかし、子どものうつはわかりづらく、元気があって、睡眠も食欲もあまり落ちないこともあります。親は子どもをよく観察し、“何かあったら言ってね”と日頃から声をかけましょう。

 

ここで問題なのが、つらいと思っていても、普段からあまりにも厳しい親には、子どもはなかなか言えないということ。その時だけ急に変わろうとしても、子どもは“親には言いたくない”と思うでしょう。日頃から、ただ頑張らせるだけの子育てでは、ブラック企業にいても、無理をして頑張るような人を育ててしまいます。ただ耐えるということだけでなく、その人の限界値を超えたら、ちゃんとストレスから離れて人を頼るという、 “受け身” を親は教えていかなければならないと思っています。

 

人生を柔道に例えるなら、投げ技や足技とか、あるいは試合で優勝することとか、そういう面ばかりを見ている親が多いように思います。しかし、柔道で最初に教えるのは受け身なんです。まずは受け身の練習が重要。自衛隊でも、戦いに行く時に一番重要なのは応急手当。救命救急の技術が低い軍隊は戦っても弱いんです。

 

受け身はあきらめることと言い換えることもできます。よく“あきらめてはダメ!”と言いますが、それは私に言わせれば指導放棄です。あきらめるというのは実は高度なテクニックで、たとえば登山家が山頂まであと少しというところで撤退することがありますよね。そこまでにお金も時間も体力も、いろいろなものをかけていても、戻るという判断ができるのがプロなんです。そこにはちゃんと判断基準があって、その判断基準を磨いていくことが大切です。もちろんそれは、親である私たち自身にも置き換えられることだと思います。子どもに対しても “次に頑張ればいい、今だけにこだわらなくていい”と言える親、今があきらめ時だという英断ができる親になってほしいです」

取材・文/加藤みれい

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