「やりたい」と言ったから始めたのに、「今日は行きたくない」と言ったり、やめたい理由が「面倒だから」にモヤモヤしてしまったり。励ます?休ませる?やめる?習い事スランプ期のママのお悩みについて、専門家の先生たちにアドバイスをいただきました。
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習い事は、親以外の大人からも成長の刺激をもらうチャンス
習い事は子どもの成長にとって重要な「共同体意識」を得られるとてもいい機会。種類は問わないので、ぜひやらせてあげてください。幼児はどんな習い事があるか知らないので入口は親が示してあげる必要がありますが、大切なのは、子どもの意思を尊重すること。親の役割は、やりすぎて疲れないスケジュール管理と、子どもが習い事を好きになるかどうかの見極めです。時として、習い事で出会う大人にもらった核心的な一言が、子どもの一生を支える言葉になることもあります。そんなチャンスを増やせたらいいな、という気持ちでママたちも向き合えたらいいですね。
教えてくれたのは…
小児科医/お茶の水女子大学名誉教授
榊原洋一先生
医学博士。発達障害研究の第一人者であり、現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。
親が一緒に向き合った経験や思い出が子どもの総合的な成長につながります
習い事は特定の分野に効率よく触れられるものではありますが、むしろ習い事での嬉しい・悔しい思いを親子の共同体験として楽しむことが、子どもの全体的な成長に繋がります。やりたくないことをやらせて伸びる子はいません。「それはやってみたい」と思える小さな目標を一緒に立て、少しずつクリアしていくことで自信がつき、「やれた気」=やる気が育まれます。いい先生は親とは違う目線で子どもを見守ってくれる子育てパートナーです。ママたちも、ハウツーや言語コミュニケーションに頼りすぎず、我が子をよく観察して、その言葉の背景を探ってみてください。
教えてくれたのは…
教育家/見守る子育て研究所®所長
小川大介先生
教育家。子ども本来の力を見つけ出す「見守る子育て」を提唱し、講演、人材育成、文筆業と多方面で活動。
\わが子の/
「習い事スランプ期」との向き合い方
6歳男の子ママ
サッカー
Q.パパがやらせたいと4歳で始めたサッカーでしたが、「ボールを持つとみんながボールを取りにくるのが怖い」とやる気がなく、性格的に向いていないようでした。やめるか聞いても「やめない」と言い、コーチから「今でなくてもいつか成長する」と言われたため細々と続けていくうちに、6歳の今では積極的に試合に参加できるようになりました。結果的にはうまくいきましたが、楽しんでいない、向いていない、と感じる場合、親はどうアプローチすればよかったのでしょうか。
親の役割は子どもが習い事のコミュニティに自ら入ってコミットするかを見極めることです。本人が「やめたい」と言わないなら、「怖い」と言いつつ何か思うところがあったのでしょう。無理にやめさせず子どもの言葉を尊重して結果的に乗り越えることができたというよい例だと思います。
3歳男の子ママ
スイミング、絵画
Q.子どもは「今日は行きたい」「今日は行きたくない」というその場の思いつきや気分の波で習い事を嫌がる時があります。親としてはお金を払っているから安易に休んでほしくないのが本音ですが、子どもの気持ちをどう汲み取ればよいでしょうか。
感情は本気ですが、語彙力は大人と同じではないことを忘れずに。眠い、遊びたい、など子どもの事情の背景をどう解釈してあげられるかがポイントです。
行きたくないなら行かなくていい。思い出したように行くこともあるし、そのままやめたっていい。本人の行きたくない理由を受け止めてあげましょう。
5歳男の子ママ
公文
Q.息子に公文をやらせていますが、やめたいとは言わないものの本当はやりたいわけではないのは見え見えで、過去には適当に答えを全部埋めていて激怒、なんてことも…。「やめグセ」をつけたくないのと、必ず身になると思って続けさせていますが、親のエゴでしょうか。
「あきらめるクセ」「やめグセ」なんてものはつきません。それは俗説です。本当は何回やめたって問題ないのですよ。何か新しい興味が出てきたら、それをまた始めればいいんです。
6歳女の子ママ
ダンス
Q.どうしてもダンスがやりたいと言い出したので入会したものの、習い事が多すぎるのもよくないかと、スポーツ教室をやめるという決断をしました。毎月違うスポーツに取り組む習い事だったので、続けることでこれが好きというものに出会えるまでやろうという当初の目論見が外れ、本人がやめたいと言ったわけでもないのに本当にやめてよかったのかなと少しモヤモヤと後悔が残りました。
いろんなスポーツをやる中で、やりたいものを見つけられたんですね。親が出会わせた中から見つける必要はありません。ダンスの何に惹かれたのかよく聞いて応援してあげましょう。
6歳女の子ママ
ダンス
Q.幼稚園の課外活動で17時スタートのヒップホップダンスを張り切って習い始めたものの、「お腹が減るからやめたい」と言い出しました。結局1カ月ほど様子を見てやめましたが、事前に「帰宅が遅いからご飯も遅くなるよ。本当に続けられる?」と意思確認をし、「やるなら1年は続けようね」などと約束すればよかったのかなと悩みました。
理屈で我慢を約束させても意味はありません。ただ、工夫の余地はあったかな。始める前に夕飯の時間を遅らせる練習をしたり、おやつを持たせていいですかと先生に聞いたりして、子どもが「これならがんばれそう」と感じさせてあげるのも手です。
5歳男の子ママ
英語、空手、スイミング
Q.子どもが習い事をやめたがった時は理由を聞いて、親が納得できる理由だったらやめさせています。逆に「めんどくさい」「疲れる」などの理由の時はやめさせないようにしているのですが、これって正解ですか?
理由に良し悪しをつけるのは親の理屈です。そもそも良し悪しなんてないんです。子どもの「めんどくさい」はそれ以外の何物でもない(笑)。受け止めてあげることが大事です。
5歳男の子ママ
スイミング
Q.5歳の息子がスイミング教室に通っていますが、進級テストに何度も落ちるのがかわいそうで、週末は家族で「特訓デー」を設けています。最初は喜んで教室に行っていた本人も、最近はあまり乗り気ではないようで、親としてどうすればいいか迷っています。
幼少期の習い事の本質は技術の上達ではないので、下手でも全く問題ありません。我が子を大谷翔平に、と追い詰めるのは問題ですが、一緒に親子で取り組むのを喜んでいればいつか宝物になるでしょう。
6歳女の子ママ
英語、バレエ、リトミック、公文、体操
Q.習い事をやるかやらないか、必ず本人に決めさせる主義です。やりたいと言っても、いざ始めるとやめたいと言い、大抵長続きしていません。
子どもの言う「約束」を大人社会の「契約」のように厳しくとらえる必要はありません。「約束を守れる子=約束を守れた子」です。約束を守れる子にしたかったら、スモールステップで簡単に守れる約束をたくさんして、守れるたびに褒めることで「私は約束を守れる」という自信をつけてあげましょう。
6歳女の子ママ
ピアノ
Q.6歳の娘がピアノを嫌がってやめたいと言います。このままやめるとピアノや音楽が嫌いなまま終わってしまいそうで、何か達成感を得てからやめさせたいのですが…。
レジリエンス(逆境からの復元力)は挫折を経験した子どもにしか身につきません。挫折を受け止めて、子どもは成長するんです。親はその気持ちに寄り添い、心の安全基地になってあげましょう。
5歳男の子ママ
そろばん
Q.数字が好きでそろばんを習い始め、上達すれば喜び、本人の自信になっている様子で、集中力もメキメキ向上。ただ級が上がり難しくなる度に「こんなのやりたくない!」と泣き、大荒れ。絶対にできるよ、となんとか鼓舞して隣で励まし、結果的には毎回乗り越え大喜びしてやる気アップ、を繰り返していましたが、級が上がる度にストレスを感じている子どもを見て何度も「やめてもよいのでは」と悩みました。
この子は完璧主義度が高い子ですね。できるとホッとするけど、新しいことには恐怖心を強く感じる。できるようになったページを見せて思い出させてあげながら、漠然とした難しさを具体的に絞り込んで安心させてあげましょう。
イラスト/カラシソエル 取材・文/八重沢友香子 編集/清水 環
*VERY2025年4月号「習い事スランプ期の向き合い方」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。