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「子育ては待つのが大事」が一番難しい!“先回り回避”の方法を専門家に聞きました

「子育ては待つことが大事」、子育て本でよく見かけるフレーズです。わかってはいるけど、つい口出ししてしまう。逆に、何もせずに見守っていたら余計困ったことになったり。〝待つ〟とは具体的にどんなステップを踏めばいいのでしょうか?幼児教育の専門家と小学校の先生に話を聞きました。

*掲載中の内容はVERY2023年4月号誌面掲載時(取材は1月)のものです。

未就学児ママの悩みにモンテッソーリ教育専門家が回答!

モンテッソーリ吉祥寺こどもの家
百枝先生に聞いた!

未就学児ママたちは、
〝ほかの子と比べちゃう〟
〝気まぐれやわがままに疲弊〟
で焦ってる

楽しい場所から帰宅させるのに
いつも一苦労です。

息子は切り替えが苦手なのか、公園など楽しい場所に連れて行くとなかなか帰ろうとしません。私も最初は優しく「帰るよ〜」と言いますが、時間が迫って待てない時は無理やり担いで帰ることに。そうすると、怒って叩いてきたり大声で泣きわめくので、私もつい感情的になってしまいます。お出かけ自体が憂鬱です。どうしたら楽しく遊んで楽しく帰れますか?(4歳男の子)

初めに終了時間を設定することが大切です。子どもには見通しが必要で見通しを伝えるのに口頭で耳から伝わる方がわかる子もいれば目から伝わる方がいい子もいます。うまくいきそうな方法を試行錯誤しましょう。うちの園でも時計のイラストが次にすることの声掛けの手助けになっています。そして「帰るよ」でなく「うちに帰って○○しよう!」と帰宅したら楽しいことがあると提案をするのもおすすめです。

幼児教室で私に抱きつく息子。
ちゃんと座ってほしいのに。

幼児教室に通い始めました。他の子はちゃんと座って先生の話を聞いているのに、息子は後ろで見学する私にすぐ抱きついてくるので、帰り道に「ちゃんと座って!」と叱ってしまいます。言葉を発したのもゆっくりでした。〝普通なら〟とつい考えてしまいます。(3歳男の子)

他の子と比べて「我が子の欠点に見えること」を何とかしようとするのは、百害あって一利なしと心得てください。親からは欠点のように見えてもそもそも欠点ですらないことが多いです。お稽古を始めたばかりとのことで、初めのうちは母親に甘えてくるのもむしろ好ましい態度だと思います。慣れない環境で心細い時に親を安全な避難所として頼り、気持ちを落ち着かせて勇気を蓄えた後に冒険に出かけることを繰り返しながら、子どもは親離れに向かってゆっくり進んでいくのですから。

本人が望んだ習い事なのに
やる気がなくてモヤモヤ。

娘の希望でアイススケートに通い始めて半年。毎回渋々通っている上に積極的に練習せず寝転んでいます。やめる?と聞いても、やめないと。でも、やる気はなさそう。他の習い事は楽しそうにやって参加しています。どのくらいまでやる気が出るのを待てばいいですか? 小さい子の習い事をやめるタイミングは、親の判断で決めていいのでしょうか?(3歳女の子)

習い事の目標を「できるか/できないか」に置いてしまうと、うまくいかないとやる気が出ません。「前より少しでも成長できたか」という手応えに置くと、やる気スイッチは入りやすくなります。娘さんが取り組む様子をよく見て「転んでも挑戦してたね」など、褒めポイントを見つけてください。やめ時については本人がやりたがるうちは続けてもいいと思いますが、お母さんの目が釣り上がってくるならやめるという選択肢も話し合ってみましょう。

子どもとの根比べに
つい負けちゃいます。

おやつは一度に一つまでがお約束。スーパーで「1個だけだよ」と言っても、子どもがなかなか決められないと「こっちがいいよね?」と急かして親が選ぶか、いけないとわかっているけど2個買ってしまいます。時間がないと子どもとの根比べになって、結局親が負けてしまうのはよくないですよね?(3歳男の子)

選ぶことは人生においてとても重要なので、「こっちがいいよね?」はなるべく使わない方がいいですね。選ぶ力はゆっくり育っていくので、3歳なら選択肢が狭いところから始めましょう。まずは二者択一で「これとこれ、どっちを買う?」。選ぶ力が育つのに合わせて選択肢を増やしましょう。二択でも選べない場合は2つ買ってもいいと思いますよ。ここで選べなかったら将来も優柔不断になるとか、ずっと甘えたままなんていうことはありません。

子どもの、自分を伸ばす力を
信じることができれば結果的に
待つことができるのではないでしょうか

子どもはこうあるべきでこう進んでいくというロードマップを親が持っていて、そこから外れることも他の子から遅れることも嫌。そこで悩みが生じるのでしょうね。成長のペースは人それぞれです。目に見えやすい部分で言うと、いつ身長がぐんと伸びるか、小学校高学年でスパートする人もいれば高校で伸び続ける人もいます。同様に言葉、認知、運動の育ちもペースが違うのが当たり前です。

モンテッソーリ教育は、親や教師に育ちの道筋はわかりっこない、知っているのは子ども本人だけというスタンスです。どんな子も自分を伸ばす力を持っていると信じているから、結果的に待っているということですね。だからと言って何もせずにひたすら待っていたら何も生まれません。子どもを信じるとは、大人と接するのと同じように子どもにもきちんと敬意を払うということです。目の前の子を今すぐどうにかしようとせず、命令することもせず、本人が試行錯誤できる機会を待ってあげてほしいと思います。

百枝義雄さん
モンテッソーリ吉祥寺こどもの家園長

東京大学教養学部卒業後、1998年から現職。その後、教員養成コースも設立し代表に。全国で保育士・幼稚園教諭に向けた研修会も行う。

小学生ママのイライラ解決策を現役先生に聞いてみた!

「先生の先生」として講演を行う小学校指導教諭
庄子先生に聞いた!

小学生ママたちは、
〝規則正しい生活習慣を〟
〝勉強や課題をちゃんとやって〟
とイラつく!

自分と違って消極的な
息子が心配になります。

授業参観に行った際、先生の「これできた人〜?」「これは何だと思う〜?」という問いかけに、「はいはいはーい!」と元気よく手を挙げる子がいる中で、息子は控えめにちょこっと手を挙げるだけ。私自身が職場でも自分の意見をアピールすることに慣れているのもあって、息子の姿がちょっと心配になりました。(7歳男の子)

手を挙げて発言しなかった、の「しない」に注目するのではなく、ノートはちゃんと書いていたとか静かに席についていたなど、できていたことに目を向けて我が子を認めてあげてください。今できなくても来年にはできるかもしれないし、子どもの頃は苦手でも大人になったらできる人もいれば、その逆もありますよね。一人の優れた子を見て我が子もそうなってほしいと思ってしまうけど、その子なりの良さを見るのが重要だと思います。

先回りして「宿題やった?」
と声をかけてしまいます。

宿題が終わったら自分から持ってくる約束ですが、持ってくる前に「宿題やった?」と聞いてしまいます。娘はちゃんとやっていることも多く、「また先回りしてしまった」と反省します。ちゃんとやっている娘を信じてあげたいのに、このままでは子どもとの信頼関係が崩れてしまうのでは?と心配です。私が我慢して余計な声かけをしなければいいのですが、時間がない時などはどうしても待てずに聞いてしまいます。(7歳女の子)

「宿題やった?」と聞くのは悪いことではないですが、「どうせやってないでしょ」という態度で聞くのは良くないですね。やったと言われたら「言われる前にやれてさすがだね」、やってなくても「じゃあ、これからやろうね」と言えるように親が心の余裕を持っておくこと。極論、やらなくても叱られるのは子どもだからくらいの気持ちで。

小学生になっても
マイペースな息子にイライラ。

起床から朝ごはん、支度などとにかくのんびりで、声をかけても「今、やってる!」と焦る様子もありません。入学当初はまだ1年生だから仕方ないと思っていたけど、1年経っても変わりません。小学生になってまで親が色々手伝うのも良くないと思い見守っていますが、夕食を食べるのも遅くて「早く食べないと下げちゃうよ!」と言ってしまうことも。マイペースを待っていていいですか? どうしたら時間の感覚を身につけられますか?(7歳男の子)

まず「小1ならこのくらいできる」という親の固定観念を崩すこと。小学生でも発達段階はそれぞれですし、できてないことではなく、できていることに着目するのが大事です。あと、やらないと罰があるという声かけはNGです。手を貸すことで親の気が楽になるなら是非貸してください。その成功体験が積み重なって自分でやるようになります。

気乗りしない習い事の
やめ時に悩みます。

幼稚園の時から通っている英語教室。最近、わからないところが出てきたようで休みたがるように。本人の話を聞きながらも、「ここでやめたら嫌な思い出のまま終わることになるから、英語を嫌いになっちゃうと思うよ? ここまで頑張ってきたんだから、このスランプを乗り越えてからどうするか決めない?」と声かけして何とか続けています。正直、私が続けてほしい気持ちが強いです。またやめたいと言ってきた時にどうしたらいいでしょうか?(8歳女の子)

「やめ癖がつくのでは?」と心配する方も多いですが、上手くいかないなら次!と思える柔軟性がこれからの時代は必要かなと。5つやめても6つ目に好きなことに出会えるかもしれないですよね。我慢や根性ではなく長所を伸ばす子育てが大事。どうしても続けてほしいなら「この級になるまで」など目標を定めるのもいいと思います。

親の妄想から
先回りしてることって多い。
子どもたちをただ見ることが大切です

何も言わずに子どもを〝ただ見て〟昨日の我が子と今日の我が子を比較することを意識すれば、昨日よりもできていることやその子なりの成長に気づけるはずです。周りの子どもや親の理想像と比較するのではなく〝ただ見る〟。保護者の方に「お子さんを見てください」と言うと「自分の子だから見てます」と言われそうですが、子どもを〝ただ見る〟のは意外と難しく、忙しく家事をしている背景に子どもがいるだけのことも多いです。

見ていないのに口だけ出すから喧嘩にもなるわけです。家事を外注したりパートナーに任せて、我が子を〝ただ見る〟時間を作ってほしいです。お皿を洗ってなくても明日は来ます。お母さんが疲労している状態は子育てが辛くなるかもしれないので、笑顔になるためにも自分の時間も確保してください。親が楽しそうにしている姿を子どもは見ていて、自分も良い大人になりたいと思うもの。親が上機嫌でいることが最優先です。

庄子寛之さん
東京都公立小学校教諭(2023年1月時点)
(現)ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター 研究員

大学院で臨床心理学を修了。学級担任を持つ傍ら「先生の先生」として全国で講演を行う。著書に『子どもが伸びる待ち上手な親の習慣』。

 

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イラスト/はやはらよしろう〈Office 446〉 撮影/イ・ガンヒョン 取材・文/宇野安紀子 編集/城田繭子
*VERY2023年4月号「「子育ては待つのが大事」がムツカシイ」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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