5、6歳になると一気に増えてくる「だって」「だけど」「でも」。きちんと寄り添って聞いてあげたい気持ちもあるけど、「だってじゃない!」とつい言ってしまう日もありますよね。今回、現役保育士のてぃ先生に疲れすぎないための受け止め方を聞いてきました!
*VERY2024年10月号「保育士てぃ先生「だって」の受け止め方」より。
こちらの記事も読まれています
フォロワー数200万人の保育士・てぃ先生に相談したい
子どもの連発ワード「だって」の
疲れすぎない受け止め方
最近「でも」「だって」が増えてきて気になっていたら保育園でも「でも」「だって」禁止令が発令されていました(笑)。うちだけじゃなかったのか!と。(5歳男の子ママN.Hさん)
「でも」「だけど」をよく使うようになり、家族に対してならまだしも、お友達や先生にも言っていたら嫌だなぁと心配しています。(5歳女の子・1歳男の子ママY.Oさん)
――「だって」が多くなるのはなぜ?
「赤ちゃんから突然自分の意思が出てきて戸惑いを覚えた結果始まる“イヤイヤ期”。まだ言語化できないから『イヤ!』にすべてが詰まってる。この『だって』も成長していく中で“自分にも考えがある”だけでなく、理由も言語化できるようになったからこそ、言い返したいとかちゃんと伝えたい、伝えられないことが悔しい…。そういう形で表現されることが多いのがこの時期。考え方としては、言い訳やごまかしではなく、子どもなりの主張だと捉えるといいと思います」
――防ぐことはできませんか?
「イヤイヤ期や思春期の反抗は防ぎようのない部分がありますが、今回のことに関してはある程度親御さんの関わり方で様子が変わる幅があります。『だって』が多くなるのは、そもそも自分の主張を聞いてもらえていないと感じているから。話の途中で遮ったり、『だってじゃない!』と叱ったりしていませんか?大人のコミュニケーションと置き換えてみて。急いでいるときは話を聞かなくて当たり前、なんてありえないですよね。理想論になってしまいますが、どうしても話を遮らないといけない時があっても、表情や態度だけでも『あなたの話を聞いているよ』という姿勢を見せることで、納得度は大きく変わります。毎日絶対じゃなくても、自分の話を聞いてもらえる機会が保証されることで安心感につながります」
ご飯時に「〇〇がよかった」「〇〇がよかったか~。でも食べて欲しい」「だって違う!」「じゃあ食べなくていい!」とたまに。正しい反応がわからない!(3歳・0歳男の子ママM.Mさん)
お説教をしている最中でも、「でもさ〇〇だったら」「だけど〇〇がね」と言い返してきて、一体私は何について叱っていたんだっけ?となっちゃう。(4歳女の子ママK.Yさん)
――どう対応するのがいいでしょう?
「時間を決めて1分だけでもいいからまずは最後まで聞いてみること。意外と聞き始めたらあっけないこともあるので(笑)。ただ、これはあくまで応急処置。とにかく普段から時間を取ってお子さんと話をすること。今日あったこととか、なんでもいいんです。コツは、まずご自身の話をすることから始めて。今の時代、忙しいからって何事にも意味のあることを!みたいにタイパを求めがちですが、他愛のない会話の中で得られる学びも大切です。自分の話をして、相手の話を聞く。こんな当たり前のことも、子どもにとっては練習中なんですよ」
――外でも言っていないか心配です。
「大前提として、親御さんたちって目の届かないところまで正そうと頑張るのですが、それはもう諦めて!外でも言ってるかもしれないけど、それはお子さん自身が外の世界で経験をして気付いていくはず。お友達に『だって』と言いすぎて、ケンカになることも悪い経験じゃないです。自分の行いによって失敗することで、はじめて『次は気をつけよう』と思えるもの。家の中で『お友達にまで言ってないでしょうね!?』なんて怒ったって子どもには学びはないですから、同じことを繰り返してしまいますよ」
言葉巧みに言い返してくる4歳に毎日ぐったり。付き合ってるとこっちも疲弊してしまって、「でもじゃないでしょ!」となっちゃう。上手くかわしたい。(4歳女の子ママS.Mさん)
何か言われたときに「でもパパが~」「だってママが~」とすぐ人のせいにする。「早くお片付けして!」と言うと「でも喉渇いた」って先延ばしにしたり…。(6歳男の子ママY.Sさん)
――パパとママがよく言うから真似してるの?
「親御さんたちを見ている中で学んだコミュニケーション術は多少なりともあるとは思う。それがいい悪いではなくて、その子にとってはそういうもの。だからと言って、親御さんの立ち振舞いを矯正すべき、ということではありません。やめて欲しいなら、ちょっと意識するくらいでいい。それはそれでその家庭の個性とかやり方。社会っていろんな人間がいるので。よくある育児の理想形に振り回されすぎると、親子ともにストレスにしかなりません」
――やってはいけないことはありますか?
「親御さんが過剰に反省すること。自分自身を責めることはやめた方がいいです。自分を削って子どもの笑顔を作るなんて、辛いし大変!反省するくらいなら、“自分にいい時間”を増やして。その方が次の日の対応が温厚になる確率が上がるのでは?頑張りすぎないで!」
てぃ先生
現役保育士・育児アドバイザー。SNSの総フォロワー数は200万人を超え、保育士としては日本一の数である。現在はNHK Eテレ「ハロー!ちびっこモンスター」でレギュラーを持つなど、多方面で活躍中。
イラスト/香川尚子 取材・文/矢﨑彩 編集/井上智明
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。