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小1の息子に「学校に行きたくない」と言われて……。働くママが向き合った5年間<後編>|我が家の不登校体験談➀

学校に行けない時、どんな場所で過ごす?親ができることは?

 

本誌7月号の記事『もし、子どもが「学校に行きたくない」と言ったら……?』には大きな反響がありました。前回記事に続き、お子さんが小学校低学年~高学年の頃、不登校を経験した会社員M.Kさんにインタビュー。お子さんが学校にいけない時期、親子でしたことは? 自治体の支援センターや塾、フリースクールなど、不登校の子どもの居場所は様々ありますが、実際に利用したのは? 体験談をお聞きしました。

<前編>はコチラから。

【お話を伺ったのは】

 M.Kさん 39歳・会社員/子ども・小5

(お子さんは小学校低学年~高学年まで不登校を経験。現在は通学中)

 

学校に行けなくなった子どもの居場所は?

 

――不登校になったとき、お子さんは昼間、どんな場所で過ごしましたか?

「はじめのうちは主に自宅で過ごしていました。当初はまったく勉強せず、鉛筆を持つのも抵抗するありさまで……。タブレットで学べる「スマイルゼミ」などの学習教材を利用して、学校で習うのと同じ単元を勉強するようにしていました。当時は会社と相談して午後出社にしてもらっていたので、午前中は私と一緒に過ごし、午後3時くらいからは学校から帰ってきた友だちが息子と遊んでくれました」

 

――自治体の支援センターなどの利用者も増えているようですね。

「不登校になってすぐに区の教育支援センターに週1回程度通いました。子どもは先生と二人で教室に入り、ボードゲームなどを楽しんでいました。途中から、学校に行ける時期もあり、ここには行かなくなりました。5年生からはスクールソーシャルワーカーが付き、通学の際など、息子と一緒に過ごすようになりました」

 

――親子でお出かけすることはありましたか?

「車が好きなので、TOYOTAのショールームに行ったり、科学館や博物館など、息子の好きそうな場所にいろいろ行きました。ものづくりが好きなので、機械などを実際に見て触れる展示には興味を示している様子でした。信頼していたスクールソーシャルワーカーからも提案され、私自身、いいなと思ったのは、地域の中に居場所を作るということ。例えば、老人ホームでお手伝いをさせてもらうとか。社会の中で、小さなことでもいいので必要とされ、生きる実感を得て、自信を取り戻してほしいと思いました」

 

すぐに塾や習い事に行かせるのは逆効果になることも

――民間のフリースクールや塾には行きましたか?

「4年生の終わり頃に不登校専門の塾に数回通いました。子どもが興味の持てることを一緒に探して、それを掘り下げ、その夢のために勉強をしよう、という塾でした。親はけっこう前のめりで期待したのですが、子供はまだそこまで気持ちが回復しておらず、3、4回で行かなくなりました。前回もお話ししましたが、子どもは不登校になって、自信をなくし、疲弊した状態です。急いで塾や習い事に行かせてさらに負荷を与えるのは逆効果になる可能性も高いです。他のフリースクールを見学したり、不登校児の親が集まる会にも行きましたが、実際に行ってみると、通っている子どもたちや保護者の雰囲気に馴染めなかったところもありました。5年生に上がる少し前から都内の不登校支援センターに通いました。先生が子どもとゲームしながら過ごし、その子の性格を見ながら、不登校の原因を見つけるようなアプローチをしていました。子どもはここがとても楽しかったらしく、喜んで通っていました。先生からは、親が子どもを自分の思い通りにしようとしていることなどを強く否定され、私たちも子どもとの接し方を変えようと意識するきっかけになりました。ただ、料金はかなり高いので、負担は大きかったです」

 

――一日中家にいるとゲーム漬けになってしまうというお子さんも。どう付き合うかは迷いどころです。

「小学生くらいのお子さんを持つ親御さんなら、経験がある方が多いと思うのですが、ゲームやスマホなどの電子機器との付き合い方では子どもと何度もバトルになりました。私自身のバイブルになったのは、スクールカウンセラー・森田直樹先生の本『コンプリメントで不登校は治り、子育ての悩みは解決する ~子どもの心を育て自信の水で満たす、愛情と承認の言葉がけ~ 』です。私がいかに自分本位な親であったか、ありのままの子どもを受け入れていなかったか、家を子どもの安心できる場所にしていなかったか。この本を読んで反省しきりでした。“コンプリメント”とは小さな事でもいいので、子どもが達成したことを、“〇〇ができたね”と言葉にして伝え、本人に少しづつ自信をつけていくことです。否定的なことは言わない。できたことを伝える。そして、難しいのですが電子機器を断ち切る勇気も必要です。我が家の場合、そうしないといつまでも自分の殻から出てこられないと感じました。親が真剣に子供と対峙し、あなたを大切に思うから電子機器からあなたを救いたいと伝える。何度もバトルがあり、戦いました」

 

 

「自信をつける」ことが子どもが変わるきっかけに

 ――お子さんは今、学校に通うようになったとのこと。今までを振り返って感じることはありますか?

「悩んでいた当時は、成功事例をたくさん教えてもらいたかったですね。不登校を克服した人の話を聞きたかったです。不登校が長引き、親子ともどん底にいたころ、ゲームを取り上げた私と大喧嘩になり、子どもは家出をしました。結局、子供は隣の区にある私の実家に、自転車で行っていました。何度も道に迷い、人に道を尋ねながら、何とかたどり着いたそうです。子供は実家に着くとすぐに、私の母に携帯を借り、電話をかけてきました。“お母さん、さっきはごめんなさい。僕、ひとりでここまで来られたよ”と。この一件の後、子どもは大きく変わったように思います。“自信をつける”とはこういうことなんだな、と実感しました。不登校になる子は、大きく分けて二つのタイプがあると思います。何か一つ秀でたものを持つ天才タイプで普通の学校に馴染めない子、それから、HSC※など繊細で不安感を強く持つタイプ。子どもは明らかにHSCタイプで、学校に行けなくなったときは自分に自信がなく、動く気力も失った状態でした。今考えると、鬱状態に近かったのではないかと思います。子どもが元気に学校に行くようになるまでには、焦らず、いつかのステップを踏む必要がありました。あくまで我が家のケースですが今、悩んでいる方の参考になれば、と思っています」

※HSC「Highly Sensitive Child」の略で「生まれつき人一倍敏感」という特性を持った子のこと。子どもの5人に1人はこの傾向があるともいわれ、大人にもこの特性を持つ人(HSP)がいる。

 

 

 

取材・文/髙田翔子

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