―<ライターK>「食べない子」って栄養が偏っているから体が弱いというイメージがあって。これって本当ですか?
「食べない子」でも体を強くしたいなら、運動を!
「食べない子でも体が弱いということはありません。必要量が少ない子に無理やり与えると、却って風邪をひきやすくなったりもします。体が弱くなることが心配なら、運動で体力づくりを意識してみては。例えば、最近また関心が高まっている「ビタミンD欠乏症くる病」。これは、食べ物からもビタミンDは摂れますが、冬でも1時間程度の外遊びで十分まかなえます。食べない子でも運動が好きなら、外遊びを楽しんで。食べないことに悩みすぎず、他の解決策に目を向けるのも手。
ディスプレイタイムが1時間未満で、1時間以上運動していて、睡眠が9時間以上の子は、キレにくい、という研究データもあるので、運動は大事です!」
―<ライターK>ビスケットは一袋食べるほど大好物。遅めのおやつで1袋食べてしまい、夕飯がほぼ食べられない…なんてことも。また、朝食で野菜入り菓子パンだけ、という日も
お菓子を食事代わりにするのはNG!
「子どもも生活習慣病になります。診療にくる不健康な肥満の子の場合、ご飯の食べすぎなことはなくて、お菓子の食べすぎが原因と個人的には思っています。野菜入りと書かれた菓子パンやスナック菓子があると思いますが、冷静によく成分を見てみると、ほとんど野菜は入っていないことも多いです」
―<ライターK>ちなみに、砂糖を摂りすぎると子供もキレやすくなるんですか?
空腹時にお菓子を食べると、血糖値が乱高下して、キレやすくなります。
「これは、大人だけでなく、子供も同じ。食事の代わりにお菓子を食べると、血糖値が急激に上がって、インシュリンが沢山出ます。それから急激に低血糖になると、体調が悪くなって、イライラに。お菓子は食べてもOK。我が家の子も大好きです。ただ、食事のあとがオススメ。血糖値の上がり方はゆるやかになります。食べないからといって、お菓子を食事代わりにするくらいなら、ほんの少しの食事の方がマシです。野菜入りお菓子やジュースより、ひとかけらの野菜を食べる方がオススメ」
―<ライターK>食に関心が薄いので、食卓についてもすぐに遊びたがります。うろつきながら食べさせる状態。理想のマナーとは、ほど遠く…。
幼稚園に入るまでに、ある程度スプーンやフォークが使えて、年長さんまでにお箸が使えるようになれば、十分。
「この頃には手づかみ食べは少しずつ減ってきます。個人的には、幼稚園時代からは、食べなくてもできなくても良いから、少しずつマナーも意識しています。親が行うことで、目で見て意識してくれればいいや、という程度。しつけを頑張りすぎて、食卓が殺伐とするくらいなら、しなくてOKだと思いますよ。最初はちょっと座ったらOKなど、完璧をめざさず少しの「できた!」を増やして次につなげていくのがオススメです」
―<ライターK>「食べない子」育てに悩んで、本屋の幼児食コーナーへ行くと、食事が子供の賢さや成長、成功のカギ、的なタイトルが目について、意識の高さに凹みます(笑)。食べない子育てを頑張らなかったせいで、体が弱くなったり、勉強ができなくなったりする可能性があるの…?と不安になることも。
個人の体験に正直エビデンスはありません!
「いろいろこの手の本を読みましたが、ほとんどが個人的な成功例であって、小食や偏食の子が大人になってどうなった、というデータはあまり見かけたことがないです。
医師としてエビデンスがしっかりしているな、と感じた食事の本は、幼児食のコーナーにはなかなか見かけませんが、『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』津川友介著(東洋経済新報社)。医師が身体に良いことを科学的に証明された食事法をエビデンスと共に紹介しています」
―<ライターK>食卓は、やっぱり笑顔ファーストなんですね!
多くのママが枠にはまっていないと不安になると思いますが、子供の発育はみんな違って、当たり前。食べない子を変える、という考えは捨てて、食べない子なんだと受け止めて、おおらかに見守りましょう。
「ちゃんとした食卓にしようとがんばって不機嫌になるより、シンプルな味付けで手抜きして食事の時間を楽しむ方が大事です。身長が伸びていれば、大丈夫。食事も子育ても枠にはめようと頑張りすぎず、いっしょの時間を楽しむことに注力しましょう」
撮影/相澤琢磨 取材/亀井友里子