上の子も下の子も、同じだけ可愛くて大事な我が子。でも、同性だからこそつい比較したり、上の子には厳しくしてしまったり。兄弟・姉妹の子育てって意外と難しい…! 今回は、それぞれの子への接し方やママの心の持ちようなどを、ベストセラーの絵本「おねえちゃんって」シリーズの著者である児童文学作家・いとう みくさんに伺いました。
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絵本「おねえちゃんって」シリーズの
いとうみくさんに聞く
同性きょうだいの子育て、
どうしたらゆとりが持てますか?
児童文学作家
いとう みくさん
神奈川県生まれ。『糸子の体重計』(童心社)で第46回日本児童文学者協会新人賞を受賞。多数の著書のなかでも「おねえちゃんって」シリーズ(岩崎書店)は親子で読める児童書として話題、ベストセラーに。
上の子も下の子も、それぞれ
〝特別扱い〟する時間を持って
ステップファミリーという家族の形を〝あたりまえの家族〟として、楽しいお話が書きたいと始めた「おねえちゃんって」シリーズ。ママの再婚で妹ができた大変さやヤキモチなど、お姉ちゃんの気持ちに寄り添い書いてきましたが、最初の頃はママ読者から「ココちゃんがかわいそう」という感想も多くいただきました。中には「妹だって大変です」というお子さんからの声も(笑)。
私は三姉妹の長女ですが、自身の幼い頃の我慢や葛藤の気持ちが自然と反映されている気がします。物語にはママを妹に取られた気がして悲しくなってしまう場面が度々出てきますが、小さい頃、上の子は格段に我慢することが多いはず。だからこそ「お姉ちゃんでしょ」というのはなるべく言わない方がいいのかなと思います。下の子と数年しか歳が離れていなければ、お姉ちゃんもまだ幼いわけです。人は環境や立場によって作られていきますから、段々とお姉ちゃんになっていくものだと思います。上の子には、意識的に「ありがとう」「あなたのおかげで助かってるわ」と声をかけてあげると〝ママの役に立っている〟とうれしい気持ちになってくれるはず。ママの仲間に入れる作戦も有効です。
例えば「〜ちゃん(下の子)困っちゃうよね」と目配せをして、ママのチームに引き寄せる発言をするなど。自尊心を大事にしてあげることで、「私はお姉ちゃん」ということを肯定的に捉えることができるはずです。私も息子がいるママですが、ゆとりがあると子育てってすごくラクで、優しく向き合えるけれど、現実ではなかなか難しいですよね。気を張って〝いいお母さん〟になる必要はないけれど、ヤキモチや競い合いがケンカの種になりがちな同性きょうだいの子育てでは、1人ずつの時間を持つことがすごく大事な気がします。みんなでワイワイ、家族団欒ももちろん素敵な時間ですが、兄弟、姉妹でまとめて話すのではなく、子ども1人ずつと話す時間を作って、〝私は特別なんだ〟と思わせてあげることはすごく意味があると思います。「お姉ちゃん」じゃなくて、名前で呼んであげたり。そういった時間を持つことで、子どもは満たされて自分に自信が持てるはず。
私も子ども時代の記憶で一番うれしかったのは、母に特別扱いしてもらったこと。例えば、学校の保護者会の後に2人きりで買物をして帰ったり、妹のいない時に「おやつ食べちゃおう」とか、そんな日常のひとコマが今も心に残っています。「みんな同じくらい可愛い!」では満足しませんよね(笑)。それぞれをこっそり特別扱いしちゃえばいいんです。子どもってすごく敏感で、何気ない言葉が胸に刺さったり、想像以上にデリケート。でも、同時にそれを乗り越える力も持っていると思うんです。完璧なお母さんになる必要なんてなくて、余裕がなくて失敗したり、怒ったりしてもいい。ただ、その後のフォローが重要ですよね。どうして叱ったのか理由をきちんと説明することで、子どもは納得してその後の行動も変わる。「さっきはイライラしてごめんね、抱っこさせて」と言葉にして伝えてあげたり。「抱っこしてあげる」ではなく、「抱っこさせて」とママがハグしたい気持ちを素直に言葉にすると、子どもにちゃんと伝わるはず。「もうお姉ちゃんだから」と向こうが照れても、ママからくっついちゃう。「もう○年生だから」も関係なし、思い切りハグしてあげましょう。
私の本ではお姉ちゃんの大変さをタイトルにしていますが、もちろんママも「子育てって、もうたいへん!」(笑)。仕事に育児、今の子育て世代の方々は本当に頑張っていると思います。つい比べてしまい反省したり、上の子に厳しすぎたかな、下の子を甘やかしすぎてる?と心配になったり。でも怒らないように気を遣ったり、気持ちを深読みするより、フォロー上手になる、自分の思いを言葉にして伝える、子どもの思いになるべく耳を傾ける。この3つをちょっと心に留めておけば大丈夫ではないでしょうか。
「おねえちゃんって」シリーズ
(右)『おねえちゃんって、いっつもがまん!?』
(左)『おねえちゃんって、すっごくもやもや!』
いとう みく 作 つじむらあゆこ 絵 岩崎書店
ママが再婚して、新しいパパの娘〝ナッちゃん〟がココちゃんの妹に。自分よりも体が大きくてやりたい放題、3歳のナッちゃんに6歳のココちゃんは振り回されたりもやもやしたり。おねえちゃんの気持ちが丁寧に描かれたシリーズは計8冊刊行、たくさんの親子に親しまれています。
撮影/木村 敦 取材・文/北山えいみ 編集/本間万里子
*VERY2023年3月号「〝同性きょうだい〟の育児が悩ましい」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。