ママの育休取得は一般的になってきたけど、パパの取得率はやっと10%を超えたばかり。多くのパパがさまざまな事情で育休を躊躇する現実もある一方で、ここ数年増えつつあるのも事実です。育休をとったパパたちが口をそろえたのは、夫婦や家族の形に確実に変化があったということ。それぞれの思いや事情で育休をとったパパたちのエピソードを紹介します。
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令和パパの
育休制度どうなってる?
子が1歳(保育所に入所できない場合は最長2歳)まで育児休業の権利が保障され、分割して原則2回まで取得可能。この間は育児休業給付金として会社経由で手続きすると雇用保険から収入の67%(取得後181日以降は50%)が支払われる。また、今年10月からは産後パパ育休も施行。出生後8週間以内に4週間まで休業可能となり、通常の育休とは別に取得できるように(収入の67%が給付)。その他、3歳までの時短勤務、育休による不利益取扱の禁止等も法律で制定されています。
※出典は厚生労働省ホームページ
TBSアナウンサー
蓮見孝之さん×国山ハセンさん対談
〝穴が開くと目立つポジションこそ
育休をとるべきだと思った〟
──蓮見さんは三男出産時の2019年4月に、国山さんは今年5月にそれぞれ3週間の育休を取得しましたが、なぜ取得することに決めたのでしょうか。
国山 時事問題として番組内で男性育休を議論する機会があったり、ここ2〜3年で取得者が徐々に増えている感覚もあって、自分ももし子どもを授かったら取得したいと漠然と思っていました。妻ともその気持ちは共有していて、きっかけがあったわけではなく自然な流れでしたね。育休の先輩でもある蓮見さんにも相談しまして。
蓮見 そうそう、「あのハセン君が育休か〜」と感慨深かったですね。私は長男、次男の時は育休という発想すらなくて。当時は妻の両親が近くに住んでいたのと、妻も局アナ経験者で仕事に穴を開ける影響も理解していたので、取得せずに乗り切りました。ただ、三男の時は、次男が遠方の幼稚園に通っていたのと上2人の習い事で車送迎がマストで。妊娠後期に入って、私が仕事をしながらどこまでできるか試してみたんです。朝、次男を車で園に送り、園近くの駐車場に停めて電車で出社、帰りはその逆です。ただ、当時小2だった長男のケアまで手が回らず。正直、普段二人で分担していることを一人で担うのには無理があり、仕事のことも常にちらついてしまうんですよね。上の子たちの日常をキープすることを最優先に考えた時に、思いきって休もうと。
──蓮見さんが取得した頃は男性育休の認知度はまだ低かったように思いますが、ハードルはありませんでしたか。
蓮見 社内では親しい報道局記者が取得していたので、制度や期間、復職後のことなどを聞きました。当時の上司にも相談したら「今しかできないことをやった方がいいよ」と言ってもらって、すんなりと。実は育休制度ではなく有給として3週間取得しています。その方が申請が簡単だったのと、家計のメインを僕が担っていたという収入面の事情もありました。
国山 その話に影響を受けて、全く同じプランでとったのが私です。育休制度を利用するならもっと長期でとりたい気持ちもあって、今は帯番組を担当していることもあり3週間が妥当かなと。育休をとると周りに話したら、知人の年配男性からは「育休中ってやることあるの?」と言われたりもして、悪意ではなく純粋にわからないんだなと世代間ギャップを感じましたね。
──仕事への影響はやはり気になるところですが、不安はなかったですか。
国山 なかったですね。自分がいなくても回るとわかったというか、僕はむしろ回るべきだと思っています。誰かが休んだら仕事が回らないような企業風土は変わった方がいい。それを世の中に示す意味でも、帯番組のキャスターという穴を開けたら目立つ立場だからこそ、休もうと決めていました。育休に限らず体調不良や家庭の事情など、ポストや男女に関係なく休める社会であるべきだと思います。
蓮見 僕も不安はなかったですし、育休取得後はむしろ休みやすくなりました。当然、仕事を優先することもありますが、家庭でトラブルがあった時に「ごめんなさい、先に帰るね」と言いやすくなりましたね。
ポストや男性女性にかかわらず
休める社会になってほしい 国山さん
──育休をとって気づいたことはありますか?
蓮見 たった3週間の休みでも、久々に出社する気恥ずかしさとレギュラー業務にちゃんと戻れるのか不安もありました。この感覚を妻は3回味わっているんだなと。僕は休んだとは言え、戻る場所が確保されている。でも、妻は結婚して上京する時に局アナのキャリアを諦めていて、その後も出産の度に仕事を休んだり変えたりを繰り返している。こんなにキツいことを当たり前のように受け入れてくれていたんだと思うと、本当に頭が下がりました。
──男性の育休取得率はやっと10%を超えたところです。どうしたらもっと世の中に浸透していくのでしょうか。
国山 個人的には育休は是非とった方がいいと思っていて、誰かに相談されたら「この先の夫婦関係にも絶対にプラスになるよ」と勧めています。とった人が積極的に話題に出すことも重要かなと。あと、とれないと思い込むのではなく、職場とちゃんとコミュニケーションをとってほしいですね。
蓮見 ハセン君のようなマインドの人が増えるのは素晴らしいことだと思います。ただ、僕は必要ならとるべきだけど、夫婦で最適解が出せているなら必ずしもとらなくてもいいのかなと。収入面での影響も少なくないですし。出産直後の体が戻らない期間をサポートする必要はありますが、その後は育休よりも夫が時短をとる方が上手く回るかもしれないし、夫婦でどう分担するかの話し合いが一番大事。育休を取得しても復帰後に妻のワンオペになるなら意味がないし、とらなくてもしっかり家事育児に関わっている父親もいる。結局、本番は育休の後ですから。それぞれの家庭の最適解を見つけてほしいですね。
育休は必ずしもとらなくてもいい。
夫婦の最適解を話し合うことが大事 蓮見さん
蓮見孝之さん
1981年埼玉県出身。現在は「ひるおび」、ラジオ「蓮見孝之まとめて!土曜日」「ジェーン・スー生活は踊る」などを担当。次男誕生後に保育士資格を取得。三男誕生時の2019年4月に3週間の育休を取得。現在12歳、9歳、3歳の三兄弟のパパ。
国山ハセンさん
1991年東京都出身。現在は「news23」のメインキャスター、「世界ふしぎ発見!」などを担当。学生時代のサッカー経験を活かし、スポーツ選手への取材も。長男出産時の2022年5月に3週間の育休を取得。現在5カ月の男の子のパパ。
撮影/渡辺謙太郎 取材・文/宇野安紀子 編集/羽城麻子
*VERY2022年11月号「パパたちが語る「育休をとって見えてきたこと」」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。