※このコラムは2021年8月号(7月7日発売)に掲載されたものです。
つい最近、大親友のバイリンガルカップルとすごく盛り上がった話題があります。それは、「ケンカは日本語より英語のほうがしやすい」ということ。そのカップルは日本人同士で、外でもずっと日本語で通しているのですが、ケンカは絶対英語でするんだそうです。私もわかる!と思わず共感しました。
例えば、日本語で「あなたはそういう意味で言ったんじゃないかもしれないけど、そういう言い方傷つくな」というようなことを言いたいとき、英語なら〝That hurt my feelings〟とサラッとフラットに言える気がして。これを日本語で言うと重たいし、まず言いづらいなぁと感じてしまうんです(あくまで体感ですが)。
日本には察する文化がありますよね。ツーカー、阿吽の呼吸。そうしたものを大事にしていて、「言わなくてもわかる」関係が最高だと言われたりもします。だから反対に言いづらいこともあるのではないでしょうか。
日本における性的同意について、ここ最近ずっと話を聞いてきたからこそ思うのは、そもそも感情の話を夫婦であまりしないんだな、ということ。自分を振り返っても(私は日本語を話す人としか付き合ったことがありません)、カップル同士で、今どう思っているか、どう感じたかをあまり話してこなかったかも。英語だと、感情や気持ちを織り交ぜる表現が日常会話に溶け込んでいます。例えば、疲れた感じを出している人に対して「なんか顔が疲れてるよ、何かあった?」と聞くと、言い方にもよるけれどなんだか疲れを指摘している感じが前に立つ。でも英語だと〝Are you okay? You look tired〟と軽く聞けて、それに対しても「実はすごい疲れてて…」「落ち込んでて…」など、自分のネガティブな感情をさらけ出すことのハードルも英語だと低い気がしています。あとは「大好きなあなただからわかってほしい」なんて日本語だと大げさに聞こえるけど、英語なら日常の1フレーズとして〝I love you〟が馴染んでいるんですよね。私も、何かモヤモヤして伝えたい小さな気持ちがあるとき、英語ならサラッと言えるのに日本語だと大きく聞こえてしまうな、だったら言うのはやめようと引っ込めてしまったことが何度もあります。
私も結婚してみたら、「察する妻」になってたのかもしれません。振り返ってみれば、子育てに家事に仕事にとやらないといけないことが山積みだから、コミュニケーションの優先順位が下がっていたのかもな、と。関係性は一生育てないといけないもの。それなのに言いたいことを飲み込んで、「あなたとこんなことで喧嘩してる場合じゃない」「いいよわかった」と我慢して、夫婦のコミュニケーションをうまく育めなくなってしまったのかな。ふと反省してしまいました。
もちろん、日本語にはほかの言語にはない素晴らしさもたくさんあるし、とくに表現の美しさが大好き。どちらがいいなどと語るつもりはありません。ただ、日本語の「愛してる」という言葉がもっとポップになって、「愛してるあなたにだから言うけど…」というコミュニケーションがもっと増えたらいいな、と個人的には考えています。英語の〝I love you〟は日本語の「愛してる」とイコールじゃないとよく言いますが、みんなが言い慣れたらポップな言葉になるかもしれない。ポップで、愛あるコミュニケーションを、日本語でも日常でできるようになりたいと思っているところです。
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◉SHELLY|シェリー
1984年生まれ、神奈川県出身。14歳でモデルとしてデビュー以後、タレント、MCとして幅広く活躍。5歳と3歳の娘の母。
撮影:須藤敬一 取材・文:有馬美穂 編集:羽城麻子
*VERY2021年8月号「シェリーの「これってママギャップ?」」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。