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発達心理学の先生に聞く「読み聞かせは小学生になってもやめないで」

 突然ですが、「読み聞かせ」、続けていますか? スラスラ文字を読めるようになる小学生以降は、なんとなく読み聞かせを卒業してしまった、というママも多いのでは? それに対し「まだまだ卒業は早い」とするのは、発達心理学の第一人者であるお茶の水女子大学名誉教授・内田伸子先生。どういうことか、お話を伺いました。

 

 

3年生くらいまでは文字を追うだけで精一杯

 

内田先生は、読み聞かせは最低10歳ごろまでは続けて、とおっしゃいます。

 

「小さい子は、文字を追うだけで精一杯。文字を読むことと、共感して深く理解することを同時に行うのは低学年にとってはとても難しいんです。デュアルタスクと言いますが、高齢者と同様に小さな子どもは2つのことを一緒にやるのは苦手なんですね」

 

その2つができるようになってくるのは「10歳」。それを過ぎれば、自分で読みながらも意味がわかるようになるそうです。

 

「でも、それが過ぎてももちろん読み聞かせしていただきたいと思います。私も6年生になるまで娘に読み聞かせをしていましたよ」

 

では反対に、何歳くらいから絵本は楽しめるもの?

 

「生後10カ月ごろからは文字や絵を目で追い次の展開が予想できるようになるので、絵本をどんどん楽しめるようになります。でももちろんそれ以前から読んでもいい。生後3カ月くらいでも繰り返し楽しく体験したものは段々と記憶に残り始めます。

 

それに最初は絵本である必要はなくて、新聞広告のチラシでもお散歩中に見つけたお花や草だっていいんです。読み聞かせるよりは『遊ぶ』感覚を大事にしましょう。それを見て、話しかければいいんです。月齢が低い子向けには『チャプチャプ』『トントン』など擬音語、擬態語が多く使われる絵本が多いですが、子どもにとってそういった音は心地よく聞こえますし、『ポンポン』『ドーン』といったリズミカルな言葉も面白がります。

 

もう少し大きくなったら、言葉の響きを大切にしながら、しっかり読み聞かせを始めましょう。絵に寄り道しても構いません。言葉を交わしながら読み進めると、子どももより楽しめるはずです。

3、4歳になったら、余分な解説をせずに、文章だけを読んでみて。そのほうが子どもは集中して絵本の世界に入っていけます」

 

“下心”で絵本を読み聞かせないで!

 

「幼児期の絵本体験が豊かで語彙が豊富な子どもや、造形遊び・ブロック遊びが多く指先が器用な子どもはPISA型学力(OECDがはかる学力のこと。ペーパーでの学力ではなく、知識や経験を活用した課題発見とそれを解決する能力)が高いです。でも語彙力が豊かになるのはあくまで結果であって、目的ではありません。お受験であるお話の記憶のようなテストを、普段の読み聞かせで取り入れることは発達上好ましくはありません。

 

親の膝の上や隣で、親の温もりを感じながら一緒に楽しむというのが絵本の世界なんですね。文字を覚えさせよう、語彙が豊かになるようにと、まるでお受験塾の先生のような下心をもって読み聞かせないでくださいね。解決も解説もしないで、心をこめて語りかけるように読みましょう。一緒に読む時間を楽しむという姿勢で、感想を聞いたりせず、楽しんでおしまいでいいんです。もう一回読んで、と言われたら何回でも読んであげましょう」

 

大切なのは「読書」を楽しむこと。「読解力」や「感想」を求めると「読書」嫌いにつながることもあるのだとか。

では、夢中になれる絵本をどうやって探せばいいでしょうか?

 

「例えば福音館の絵本は、最初ソフトカバーのものを幼稚園に配り、最も手垢のついたものがハードカバー化されるんですね。つまり子どもたちの支持が集まったものが絵本になっています。どの作品も時間をかけて絵本になっていて、安心して楽しめると思いますよ」

 

内田伸子先生
お茶の水女子大学名誉教授、IPU・環太平洋大学教授、福岡女学院大学大学院客員教授、十文字学園女子大学理事・特任教授。近著に『AIに負けない子育て ~ことばは子どもの未来を拓く~』(¥1,980/ジアース教育新社)がある。

 

『「頭がいい子」が育つ家庭の8つの習慣』(日経DUAL編 ¥1540税込/日経BP)発達心理学・保育学の専門家である内田伸子先生はじめ、著名人や専門家が「子どもの力を伸ばす方法」を指南。

取材・文/有馬美穂

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