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最近増えてる?女の子たちの『ボク』呼び現象を深掘り【専門家による解説も】

白い紙に「ぼく」と書く子ども

「小学校にあがってから娘が『ボク』と呼ぶんです」「年長の娘のクラスでは『ボク』が流行ってるみたい」そんな読者さんの声を頻繁に聞くようになりました。改めて観察すると、確かにママ世代の子ども時代に比べて「ボク」呼びが増えているように感じます。呼び名は自由、と思いつつもやっぱり少し戸惑ってしまうのも本音。「ボク」呼び流行を深掘りしてみました。

「ボク」を使う女の子たちに聞いてみた。
どんなときに
「ボク」って呼んでいますか?

白い紙に「ぼく」の文字を書く子ども
◼︎S・Tさん(小1)
「ボク」ってよぶのはふつうのこと
「おねえちゃんもつかうし、『ボク』ってよぶのはふつう。ともだちによって『うち』とよんでいることもあります」
◼︎S・Oさん(小2)
女の子たちと話しているときは「ボク」
「みじかくて言いやすいから女の子どうしでは『ボク』。『わたし』もつかうし、あだ名やほかのよび名もつかってみたい」
◼︎I・Sさん(小1)
「わたし」と「ボク」をつかいわけています
「うたやよびかけで『ボク』か『わたし』をえらぶときは『わたし』。でも、ふだんは『ボク』ってよんでいます」
◼︎K・Kさん(年長)
ほいくえんでは「ボク」そとでは「うち」
「『ボク』ってよぶのはかわいいから、きにいっています。『わたし』ってよぶのはおんなのこだけどなんだかはずかしい」

言語学×ジェンダーを研究している
関東学院大学の中村桃子名誉教授に「ボク」が広まっているわけを聞いてみました

「ボク」に相当する子どもらしさを伴う一人称が女の子の場合見つからないから、「ボク」「うち」を借りてきて呼んでいると考えられます

自分を表す言葉を「自称詞」と言いますが、大人が思う以上に子どもにとって自称詞は自分を表現する大切な言葉です。現代では「女子はわたしで、男子はボク」が学校教育の規範になっていて子どもは小学校に入ると認識しますが、「わたし」は大人でも使うし、フォーマルな場面では男性も使うので、少年性の強い「ボク」に比べて子どもらしさがありません。男の子が名前呼びから「ボク」になり「オレ」「わたし」になっていくのに対して、女の子は名前呼びから一足飛びに「わたし」に飛躍する感覚があるんです。では少女らしい自分を表現するにはどうするか、という問いの答えとして、「ボク」や関西圏の「うち」を借りてくるわけです。

しかも、日本人の自己は絶対的でなく相対的。英語の一人称が「I」一つなのに対して、日本語にはたくさんの人称詞があります。日本の子どもは5歳児ですでに男女とも、話す相手、話題、場面で人称詞を使い分けています。親に「〇〇(名前)ちゃん」を使っていても友達には「ボク」を使っているのが典型例ですね。また子どもはとても敏感なので、アニメやSNSで表されているアイデンティティに共感して、その自称詞を自分も使ってみたいと考え、それが流行を生むこともよくあります。あるいはグループメンバーシップといって、自分が友人のグループに属しているという印のようなものとして自称詞を合わせることもあります。

その一方で、「わたし」を使うことに対して「どうしても言いたくない」と強い違和感や嫌悪感を感じる人もいます。「わたし」が表すような大人の女性になりたくないという恐れや、性自認が理由の場合は、幼少期に「ボク」と呼ぶことを否定されたことで大変困難な思いをしている場合があるんです。これは重大な問題なので、子どもの一人称が多種多様でも全く問題ない、みんなが好きな自称詞を使えたらいいよね、というのが本来理想の社会だと私は思います。
ところが、現実には規範があるのが難しいところです。よく「ボク」呼びは年齢とともに自然に減る、と思われがちですが、実際は、年齢を経ると「大人なのに」と批判されやすくなり、「わたし」に変える人が多いというのが実情でしょう。ただ、「ボク」呼びには変えられる人と変えられない人がいる。例えばグループメンバーシップが理由なら環境が変われば変えられますが、性自認やアイデンティティの場合は難しい。

もしもお母さんやお父さんが娘の「ボク」呼びにモヤモヤするのであれば、その原因は親の規範意識の方にあると考えてみましょう。自称詞は自分を表現する大切な言葉なので、規範と呼び名は分けて考えるという視点が重要です。親御さんがこれを機に規範をどう考えているのか、規範の通りにさせたいのかをよく考えてみてください。次に子どもがその自称詞で何を表現しているのかよく観察してみて、使い分けるよう促すべきかをよく考えてあげてほしいですね。

教えてくれたのは…

関東学院大学名誉教授・博士
中村桃子先生
専門領域は言語とジェンダー。『「自分らしさ」と日本語』ほか著書・著作多数。

撮影/堺 優史〈MOUSTACHE〉 取材・文/八重沢友香子 編集/城田繭子
*VERY2026年4月号『娘たちの「ボク」呼び現象を読み解く』より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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