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読み聞かせは「めっちゃ端折る」ことも。小説家・西加奈子さんの子育て

小説家・西加奈子さんと詩人・谷川俊太郎さんの共著『すきが いっぱい』が話題です。故・谷川さんとのエピソードや詩を書くことで見えてきたもの、そして、現在育児中の西さんが、お子さんとの読書で意識していることを聞きました。

詩って「めっちゃおもろい」と知った谷川さんとのやりとり

──小説を書くときとは、言葉との向き合い方や、世界の見え方も違ったのではないかと思います。実際に詩を書いてみて、どのような感覚がありましたか。

小説を書くときと違って、物語の構成や、視点人物の立ち位置を決めなくても成立することに自由を感じました。ミクロの視点で見たり、突然宇宙から地球を眺めたり、視点を固定せずに行き来できるのが、とても楽しかったです。大人になると、どうしても一つの解像度で世界を見てしまいがちですが、詩を書く時間は、そこにとらわれなくてもいいんだと感じました。

 

──子どもも、至近距離から虫を観察したり、そうかと思えばやたらと引いた視点で物事を眺めていたりすることがありますよね。読みながら子どもの目線に戻ったような感覚がありました。今回の新刊では、谷川俊太郎さんと往復書簡のような形で詩をやりとりされたそうですね。

執筆中はカナダにいましたし、ちょうどコロナ禍という状況もあり、実際にお会いすることは叶いませんでした。それでも、谷川さんと詩のやりとりができること自体、なかなかない経験なので、とても貴重なことだと感じました。
会話でもなく、文章でもなく、詩で言葉のやりとりをするということ。谷川さんとそのような交流ができたことは、本当に特別なことだったと思います。

詩集『すきが いっぱい』は、挿絵も西加奈子さんが手がけた。

──谷川さんから届いた詩の中で、特に印象に残っているものがあれば教えてください。

やっぱり、最初に届いた「おとお」の詩ですね。「おかしの お と おいしいの お は おんなじお」と書いてあって、その後に「おかあさん」と「おなら」が並べられている。世の中に多くある作品ではお母さんって、優しくて尊い存在として描かれるか、悪者として描かれるか、どちらかに振り切られがちだと感じていました。でも実際のお母さんは、そんな単純な存在ではない。おならもするし、気持ちがしんどい日もあります。きれいなときもあれば、そうでないときもあるはず。私自身もお母さんでもあるので、お母さんとおならを同じ場所に置いてもらえたことに救いを感じました。谷川さんに「同じやで」と言ってもらえた気がして。

──母親という存在が神聖化されがちなぶん、「こうあらねば」という呪縛に囚われている人も多いかもしれません。

だからこそ、「お母さんって何だろう」と、一度立ち止まって考えたくなるときがあります。この詩は、そのきっかけをくれました。谷川さんが、お母さんも、お父さんも、コーヒーも、公園も、おならも、同じ場所に置いてくれたから、私は「おかあさん」という詩が書けたんです。

 

「こうなってほしい」という親の下心は必ず子どもに伝わる

──西さんは現在、小学校低学年のお子さんを育てているとのこと。読み聞かせの思い出があれば教えてください。

うちの子は絵本が好きだったので、よく読み聞かせしていました。一時期は『地獄』という絵本にハマっていたので、何度も読みましたね。地獄絵巻のようなおどろおどろしい世界を描いた内容で、大人が読んでもおもしろいので最初は私も楽しんでいたのですが、絵本としてはかなり長め。だんだん読むのがしんどくなってきたので、途中からめっちゃ端折ってました(笑)。

読み聞かせって、「ちゃんと読まなければならない」「最後まで読まなければならない」と思われがちですが、お母さん自身が楽しくないのに子どもだけ楽しいということは、あまりないと思うんです。お母さんが楽しくてラクなのが一番ではないでしょうか。それに、「お母さんはこういう声で本を読むもの」「女の人の声は優しくてきれい」という限定されたイメージにも違和感があったので、私の場合はなるべくフラットに、抑揚をつけずに読むようにしていました。

 

──子どもに本の読み聞かせを通して、「本を好きになってほしい」「国語の力をつけたい」と、つい欲を出してしまいがちな気がします。

もちろん、本を好きになってくれたらうれしいし、結果的に力がつくこともあるかもしれない。でも、それを最初から目的にしてしまうと、読む時間そのものがしんどくなる気がしています。「本の楽しさを知ってもらいたい」という親の気持ちって、子どもにとっては「お母さん、めっちゃ野菜食べろってすすめてくるやん」って思われる感じかもしれないと思うんですよね。もちろん野菜を食べることは大事です。栄養にもなります。でも、本って栄養なのかな? と思うところもあって。

 

──確かに、自分の幼少期を振り返っても「これを楽しんでほしい」と言われて渡されたものほど、楽しくなかったような気がします。

「これがこの子に良さそう」っていう親の下心って、必ず子どもにも伝わる気がします。だから私は、単純に自分が好きな絵本を読んであげるようにしていました。

 

──その上で、この『すきが いっぱい』を親子で読むとしたら、どんなふうに読んでほしいと思いますか?

難しく考えなくていいと思います。きれいに読もうとしなくていいし、大きな声で読む、くらいでちょうどいい。読む側が楽しんでいたら、お子さんにもきっと伝わると思います。

子どものおかげで知った「英語の楽しさ」

──西さんはカナダでの子育ても経験されています。英語と日本語の違いなど、お子さんが言語を獲得していく過程で、印象に残ったエピソードがあれば伺いたいです。

例えば英語で「You didn’t eat lunch?」と聞かれたら、食べていなければ「No」、食べていれば「Yes」と答える。でも日本語だと、「お昼食べなかった?」と聞かれたとき、「はい」と「いいえ」が英語とは逆になります。英語の感覚を持ったまま日本に帰国したので、子どもは当初少し混乱していたようですが、おかげで私はそれぞれの言語の違いを知ることができて面白かったですね。幼いうちに英語圏で過ごしたからか、今でも耳がいいので驚かされます。

 

──ネイティブではない大人にとっては、うらやましい限りです。

本当にそうですよね。私自身が40歳でカナダに留学して英語の発音にはかなり苦労したので、せっかく身につけた英語力を失ってほしくないという気持ちも。年に一度くらいはカナダに帰るので、子どもは現地の友だちと過ごしたり、英語の先生に遊びを交えたレッスンをしてもらったりしています。でも、親のエゴで語学を押し付けたくもないと思っていて……。勉強は無理にしなくてもいいと思っていたけれど、語学については自分の経験も踏まえて葛藤しているというのが今の正直な気持ちです。 

『すきが いっぱい』(世界文化社)※Amazonリンク入れる

詩人・谷川俊太郎さんと、作家・西加奈子さんが交互に詩を贈り合う……。そんな「詩の往復書簡」から生まれた子どもも大人も一緒に楽しめる一冊です。あとがきと挿画は西加奈子さんの書きおろし。

(PROFILE)
西 加奈子(にし かなこ)
1977年イラン・テヘランに生まれる。エジプト・カイロ、大阪で育つ。2004年『あおい』でデビュー。2007年『通天閣』で織田作之助賞、2013年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で直木賞を受賞。初のノンフィクション『くもをさがす』を滞在先のカナダにて執筆し、2023年に刊行。

谷川 俊太郎(たにかわ しゅんたろう)
詩人。1931年東京に生まれる。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。『六十二のソネット』『定義』『私』『どきん』等、刊行された詩集は100冊以上にも及ぶ。翻訳に『マザー・グースのうた』やピーナッツシリーズ、絵本に『へいわとせんそう』『もこ もこもこ』他、著書多数。2024年92歳で永眠。

取材・文/樋口可奈子 撮影/猪俣晃一朗

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