VERY August 2024

VERY

August 2024

2024年7月5日発売

930円(税込)

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作家・山内マリコさんが語る「今だからこそ、ママに田島陽子さんの言葉が響く理由」

女性であるがゆえの困難を描き出し大ヒットした『82年生まれ、キム・ジヨン』は、VERYでも特集され話題となりました。
以降、フェミニズム関係の本が続々と刊行されています。そして昨秋の発売後重版となり注目を集めているのが『フェミマガジン エトセトラ 特集 We♡LOVE田嶋陽子!』。
編集長をつとめた作家・山内マリコさんと一緒に、日本で一番有名なフェミニストである田嶋陽子さんの名著『愛という名の支配』(昨年、新潮社から新装丁で再販!/価格:649円(税込)発行:新潮社)を読み解き、何故今私たちに刺さるのかひも解いていきます。

愛という名の支配

田島陽子さんの『愛という名の支配』を読んで、
“これをすべての女性に配りたい!”と思いました

「『愛という名の支配』を読んで、これをすべての女性に配りたい!と思いました。1992年に書かれたものですが、女性をとりまく環境は、残念ながら変わっていません。多くの女性がモヤモヤした気持ちを抱えていますが、この本はその原因をほどいていく手つきがすごく鮮やか。私たちは『結婚こそ女の幸せ』とか、『女らしくしないとお嫁に行けないよ』なんてことを、子どもの頃から言われてきました。この本を読むと、無意識に受けてきたそういうメッセージ自体が、女性の生きにくさの根っこだったんだと、よくわかるんです。
苦しみは言葉にできると、楽になれますよね。震災以降SNSが普及したことで、育児や家事が重荷だという人のつぶやきを見て、違和感を共有できるようになりました。これまで人に言えなかった心のモヤモヤを打ち明けて、その本音に賛同が集まるようになり、『私たちは怒っていいんだ』と女性たちが声を上げるようになった。その流れの中で、フェミニズム関連の書籍もたくさん出版され、ごく普通の女性も手に取るようになりました。
フェミニズムの本って、難しい学術書もあるけれど、この田嶋陽子さんの本は一般の女性に向けて、とてもわかりやすく書かれています。ご自身の人生を明かしながら、女であることの苦しみの原因を探究して、自力で見つけた答えなんですね。田嶋先生というと、テレビの中でおじさんを相手にケンカしてる人、怒っている人、というイメージがありました。当時は子どもだったから、田嶋先生の言っていることがよくわからなかった。それに田嶋先生の発言は、いつもおじさんたちに遮られて、最後まで聞けなかったし(笑)。だけど大人になった今なら、すごく理解できる。あのとき、おじさんたちは女性差別を助長していただけで、正しいことを言っていたのは田嶋先生だったんじゃないか? そんな気持ちで田嶋陽子さんのことを思い出し、その声に耳を傾けてみようという女性が増えているんだと思います。」

 

山内さんが選ぶ、『愛という名の支配』名言集

P21  イヤなものから逃げられないドレイ根性
痛いものから逃げることができない。苦しい状況から逃げることができない。苦しい状況になると、みんな私が悪かったんだ、私がいたらなかったんだと自分だけを責めてしまうメンタリティ(心的傾向)が、そういうところからつくられていった。私がいい子になれば愛されるんだ、私がいい子になればこの人は私に笑顔を見せてくれるし、抱いてくれるし、おいしいごはんを食べさせてくれるんだと思ってしまう。

「これは田嶋先生が、疎開先でお母さんから叱られ、おしおきにお灸をすえられた体験談。田嶋先生はじっと我慢してお灸をすえられているけど、田舎育ちで野生児タイプのいとこの女の子は、ぱっと払い除けて逃げて行った。しかもそのいとこの行動を大人たちは、『すばしっこいねえ』と褒めた。そのことに田嶋先生は驚いたそうなんです。言われたことはじっと我慢して耐えなきゃいけない、罰は受けなきゃいけないという心のあり方は、すごく日本的ですよね。そしてそういうドレイ根性は、えてして女性の方が強い。相手の顔色をうかがっていい子にしていようとするメンタリティは、夫の顔色をうかがって自分を抑え込む妻の原型という気がします」

P61  女を分割して統治せよ、それが結婚制度
(略)主人一人にドレイ一人、男一人に女一人を割りあてたのです。これが美名に隠れた結婚制度の基本にある考え方です。女は、結婚して相手を主人と呼ぶかぎり、自分は男の子分であり、ドレイであるということです。このドレイ船を漕ぐ女たちを、私は主婦ドレイと呼んでいます。私のように結婚を拒否した女は逃亡ドレイです。(略)お色気で男を支配しているかのような女の子たちは快楽ドレイです。男社会から見たら、どの女もドレイであることにかわりはないのです。

「女性は結婚した途端、独身時代の女友達と距離ができることがありますよね。住む場所も男性の仕事の都合で変わったり、もちろん名前も変わる。男性の生活や人間関係はなにも変わらないのに。その理不尽の正体を、結婚制度は女をドレイ化するものと説いた一文。『分割して統治せよ』は植民地支配の鉄則で、蜂起させないよう、奴隷同士の横の連帯を断ち切るための仕組みだそうですが、だから結婚したら女友達と疎遠になることが多いのかと納得しました。
そして鋭いのが、恋愛結婚になったことで、さらに厄介なことになっているという指摘。恋愛結婚である以上、女性は常に、夫や子どもへの『愛』の証明として、家族に尽くすよう仕向けられる。まさに『愛という名の支配』です。“主婦ドレイ”という言葉は強烈で、『私がドレイなわけないじゃない』と思う人もいるかもしれません。女性差別があることは認めるけど、私は差別されてませんと思う人も。でもこれは、女性全体を一人残らず支配している『構造としての女性差別』なんだということ。そんな社会の構造を直視して、そこから楽になろうよ、ということなんです。」

P7375 「母性」は男社会が認めた唯一の女の権利
(略)くる日もくる日も、「女は家庭、女は母性」と聞かされているうちに、だんだんそのリズムに慣れていって、自分が自由な人間、自由意志をもっている人間だということを忘れてしまいます。もし迷ったり悩んでいたりする人がいると、漕ぎ方がそろわず、船足がにぶるといってリズムキーパーから叱られるので、こんどはドレイ同士がお互いを監視しあうようになり、「やっぱり女のしあわせは、結婚して子どもを産むことよ」と言いあうようになります。

「結婚しなよとか、子どもを産んだら幸せだよとか、女同士で言ってしまうのは、愛や幸せの形がこれ一つだと刷り込まれているから。それって実は、男性にとって都合のいい女の生き方を実践していることでもある。それに適応している女性は、他の女の人たちにも強いるんです。『私はこれで幸せなんだから、あなたも結婚しなさい』と。
私の母は専業主婦で、自分の生き方にモヤモヤしていたようです。それで私には、『結婚しなさい』とか『孫の顔が見たい』ということは言わなかった。そのおかげで私はプレッシャーから自由だったかというと、そうでもない。「女は家庭、女は母性」という価値観は、社会全体に浸透していますから。」

「母性」は、甲板の上にいる男たちが船底の女たちに容認した唯一の権利であり、また、男社会が女に与えた唯一の権力でもあったということです。女がほかの権利や権力を主張したら、かならず頭をたたかれました。逆から言えば、男社会から連れてこられた女たちは、「母性」にすがって自己の存在価値を主張する以外、なにも存在理由がなかったのです。女たちがこれまで「母性」にすがりついてきたのもそのせいです。

「母性本能というと、女にだけ生まれつき備わっているように思えるけど、実はそういうわけではないんですね。女はみんな、母性を植え付けられて育つ。家事を手伝ったり、ちょっと気の利いた行動をしたら、『いいお嫁さんになれるよ』とおだてられ、どんどん母性的な人間になろうとするわけで。
そう考えると、女性は本当に子どものころから、恋愛して、結婚して、優秀な“主婦ドレイ”になることを強要されていることに気づきます。マンガも小説も映画もドラマも、女性向けはほとんどが恋愛モノ。でも恋愛って、身を滅ぼすしか行き着くところがない。もしくは結婚して、夫と子どものために無償で家事をこなすという『愛』を証明しつづけるか。こういった恋愛至上主義の価値観につかまらないことは、女性にとって大きな課題です」

p82「男らしさ」は自立した人間、「女らしさ」は男に尽くす人間
女は放っておいても、しぜんと船底に入って「女は家庭、女は母性」と言いながらオールを漕ぐようになるし、男は放っておいても、男は女よりエライと思いこみ、自分を主人にし、女を家来にしてしまうのです。人は、男が上で女が男の下にくるのを「自然」だと言います。なにが、そういう「自然」をつくりだしているのか。そのしかけは、男の子を「男の子らしく」、女の子を「女の子らしく」育てることにあります。「男らしさ」「女らしさ」で子育てすれば、放っておいても男は甲板の上の貴族に、女は船底のドレイにならざるをえないような文化的な企みがあるからです。

「優しい、かわいい、愛嬌がある、おとなしい、素直、上品、きれい、細い、気配り、明るい、色っぽい、料理がうまい……。こういった『女らしさ』は、人に気に入られたり、誰かの世話をしたり、誰かの役に立ったりする資質ですよね。だから女らしいだけの女性は、自分一人の力では生きていけない。この指摘にはハッとしました。
中国の纏足という風習は、足を矯正して、女性が本当に一人では歩けないようにしたもの。足を無理やり変形させるわけで、相当な苦痛のはず。だけど、当時は纏足した女性はセクシーだと思われていたから、文化大革命のときにこの奇習をやめようと言われても、女性たち自身が反対したそうなんです。纏足が、女性の美意識になってしまったんですね。男の人の求めるものを内面化した女の人は、自由にしていいよと言われても、自分のために生きられなくなる。
今、ジェンダーバイアスに敏感な人は、子どもをどう育てるか、すごく気を配ってますよね。男の子だから〇〇、女の子だから〇〇というのはやめようと。それは、男らしさと女らしさ、どちらか一方に偏った人間は、危険なんだと気づいているから。そういう時代なんですね。私たちがようやく、田嶋先生の言葉がわかる時代になったってことなのかもしれません。」

 

作家・山内マリコさんと柚木麻子さんが責任編集 『エトセトラVOL.2 特集We♡Love 田嶋陽子!』が重版に!

エトセトラブックス

「これまで女性たちは、自分の生きづらさをなかなか言語化できなかった。耐え忍んで我慢するというのが美徳とされて、抑圧されるのが癖になっていたんだと思います。でも今、女の人たち全員で進化しているのを感じます。フェミニズムって、みんなでちょっとずつコマを進めて、次の世代のために、世界をよりよくアップデートしようってことなんです。今このタイミングで『愛という名の支配』が復刊されたのも、『We♡LOVE 田嶋陽子!』が重版になったのも、その証のような気がしています」
『エトセトラVOL.2』価格:1,320円(税込) 発行:エトセトラブックス
https://etcbooks.co.jp/book/vol2/

撮影/相澤琢磨 取材/有馬美穂 編集/羽城麻子
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