文化人も気になる!「黄色い帽子のおじさん」の正体とは?
おじさんは『無怒菩薩』。
悟りを開いているんです
黄色い帽子のおじさんを知ったのは、まだ自分の子どもが小さかった頃でした。テレビで観るおじさんを「全く怒らない変わった人だな」と思いましたが、その言動を見ているうちに、私は彼を『無怒菩薩』と呼ぶようになりました。悟りを開いた者は金色に輝きますが、仏教では黄色=金色。おじさんは帽子どころか全身が黄色く、破天荒なジョージにも常に肯定的な言葉を掛けて、怒らない。そんな彼は“怒らない”を世に広める、現世の菩薩であると考えたのです。
ちなみに、黄色い帽子のおじさんは第25回みうらじゅん賞を受賞しています。無怒菩薩に縋りたいと気づいてからは、おじさんグッズも持ち歩くようになりました。イラッとすることは世の中に多々ありますが、おじさんを見ると「怒っても無駄だよ」と気持ちを鎮めることができます。小さいお子さんの育児が大変な方たちも、推し活としておじさんグッズを持ち歩くことをお薦めします!物事のイラつきの原因は実は子どもではなく、自分の都合通りにいかないことだったりします。育児はその代表格なので、心の修行をさせてもらっているのだと考えましょう。おじさんのことを心に置いて、自分と向き合う。そんな風に修行を楽しんでほしいと思うのです。
イラストレーターなど みうらじゅんさん
1997年、造語『マイブーム』が新語・流行語大賞を受賞。『ゆるキャラ』の命名者としても知られ、独自のフィルターで様々なものの収集・創作を行う。また、仏教好きでも知られる。
ジョージを信じておじさんは
挑戦を後押ししています
こども家庭庁『はじめの100か月の育ちビジョン』では、幼児期までの子どもの成長に大切な要素として、安心と挑戦の循環を挙げています。安心とは、子どもが家庭内で安心に浸っている状態を指し、挑戦は、そこから飛び出して発見・冒険に向かうことを示します。挑戦した先で不安があれば親が受け止め、元気の燃料補給を行うことで、また子どもは好奇心の塊となって次の挑戦に向かうことができます。黄色い帽子のおじさんは、ジョージの挑戦の後押しが非常に上手です。子どもが小さいほど親は安心の方へ注力しがちですが、おじさんはジョージの好奇心が萎まないよう、多少のことには目を瞑り「人のために」と行動するジョージの背中を押しています。
挑戦を見守る親は、黒子であり応援団です。陰ながら支え応援するというスタンスでいると、子どもは自然と自分の可能性を広げます。でも時には親の許容範囲を超えることをするので、おじさんのように寛容になれず、怒りの感情が出てしまうことがあっても仕方ありません。時間を置いて「ママはあのときこんな風に困っちゃったよ」と、話をしましょう。気持ちを受け止め合うことで、また一緒に次の挑戦に向かうことができると思います。
東京大学大学院教育学研究科・教授同付属発達保育実践政策学センター長
遠藤利彦さん
発達心理学・感情心理学を専門とし、親子関係・家族関係と子どもの社会情緒的に造詣が深い。Eテレ『すくすく子育て』のコメンテーターとしてもおなじみ。
\Eテレ毎週土曜午前8時35分より放送中!/
取材・文/金剛加奈絵 編集/本間万里子
*VERY2025年5月号「拝啓 “黄色い帽子のおじさん” 様」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のもので、変更になっている場合や商品の販売が終了している場合ございます。