フェミニスト出版社「エトセトラブックス」代表の松尾亜紀子さんがオススメする、女性の生について扱った本をご紹介。さまざまな立場から紐解きます。
こちらの記事も読まれています
松尾亜紀子さんが選書
力をもらえる一冊、教えてください
「VERYママ書店」
❝女性たちの「生」を知ることは、
私にとってのフェミニズム❞
エトセトラブックス代表・編集者
松尾亜紀子さん
昨年エトセトラブックスから『小山さんノート』という、ホームレス女性が書き残したノートをまとめた本を出しました。ノートの文字起こしをするワークショップのメンバーのひとりで、自身も公園に暮らすいちむらみさこさんが書いたのが『ホームレスでいること』。ホームレスは、社会で見えないものにされている存在であり、女性はさらに周縁に追いやられている現実があります。でもこの本に出てくる女性ホームレスそれぞれに暮らしがあって、生きてきた時間があります。ときには派閥争いしたり(笑)おしゃれを楽しんだり。女性の「生」を知ることは、私にとってのフェミニズム。彼女たちがこの社会に一緒に生きているということを見つめてほしいです。
『ディア・マイ・シスター』は、主人公の女の子が性暴力被害に遭います。加害者は遠い親戚で地元の有力者。母親すら守ってくれない辛い状況のなか、被害者がその後の人生をどう生きていくのか、目を逸らさず、寄り添って描く韓国小説です。絶対に守られるべき未成年が守れていない日本の現実にも思いを馳せて、保護者であればぜひ読んでほしい本。最後妹に宛てた手紙は、思い出すだけで泣けてしまいます。
『帝国主義と闘った14人の朝鮮フェミニスト』は、100年前に独立運動で闘った朝鮮の女性たちを描いたノンフィクション。私たちも日々生活を守るため、自分であるために何かしら闘っていると思います。いざ大切なものが権力に奪われそうになったとき、何をするべきか。声をあげなければという気持ちを後押ししてくれる一冊でもあり、14人の物語仕立てなので、韓国ドラマ好きも心に響くはず!
松尾亜紀子さん選書3選
『ディア・マイ・シスター』
チェ・ジニョン 著(亜紀書房/¥2,200)
他者に起きた暴力に無関心でいることは、暴力に加担すること。性暴力がもたらす恐れや怒りを切々と綴る物語。
『ホームレスでいること:見えるものと見えないもののあいだ』
いちむらみさこ 著(創元社/¥1,540)
現代社会の中で、見えているのに見えないことにされ、隠され、消されているものについて読者に問いかける一冊。
『帝国主義と闘った14人の朝鮮フェミニスト~独立運動を描きなおす~』
ユン・ソンナム 絵、キム・イギョン 著、ソン・ヨノク、キム・ミヘ 訳(花束書房/¥2,750)
日本帝国主義と家父長制に抑圧された朝鮮女性たちが、自由を切望し性差別とも闘う様を描く歴史ノンフィクション。
PROFILE
フェミニスト出版社「エトセトラブックス」代表。雑誌「エトセトラ」を年2回発行。2021年に、東京新代田でフェミニズム書を集めた同名BOOKSHOPをオープン。
撮影/西原秀岳〈TENT〉、SAMSON YEE 取材・文/有馬美穂 編集/中台麻理恵
*VERY2024年12月号「力をもらえる一冊、教えてください『VERYママ書店』」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。