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子どもの隠れ「栄養不足」が増えている? 意外な理由を東大医学博士が解説!

──たくさんの情報があふれる今、育児についても「これが正解」と納得できる答えを見つけるのは難しいもの。「周囲と比べてしまうとき」「親世代の育児とギャップを感じたとき」ブレずにいられる最新情報を、医師で東京大学大学院客員研究員の柳澤綾子先生に各国の最新医学研究データのエビデンスをもとに教えていただきました。今回のテーマは「子どもに必要な栄養素」です。

Question

毎日忙しく、親子とも食事の栄養バランスが偏ってしまいがち。子どもの成長期に必要な栄養素を上手に摂るコツを教えてください。

 

Answer

不足しがちな「ビタミンD」「タンパク質」「食物繊維」を意識的に摂りましょう!

 

【お話を伺ったのは……】

 

柳澤綾子(やなぎさわ・あやこ)先生

医師・医学博士。東京大学大学院医学研究科社会医学専攻公衆衛生学分野客員研究員。東京大学大学院医学研究科公衆衛生学博士課程修了。麻酔科指導医、公衆衛生学、社会疫学、医療経済学領域の研究者であり、プライベートでは二児の母。著書に『身体を壊す健康法』(Gakken)『自分で決められる子になる育て方ベスト』(サンマーク出版)がある。

子どもの「日焼け止め」がビタミンD不足の原因に?

昨年、東京慈恵会医科大学が発表したデータによると、「日本人の98%がビタミンD不足」である可能性が高いということが分かりました(※1)。普段はほとんど意識しない栄養素ですが、実は多くの人が「隠れビタミンD不足」状態なのです。その理由の一つとして考えられるのが、30年ほど前から「紫外線を浴びると皮膚がんのリスクが高まる」といわれるようになったこと。子どものころから日焼け止めを塗って紫外線を防ぐことが当たり前になった結果、太陽光に当たることで生成されるビタミンDが不足する人が増えているようです。

 

 

また、ビタミンDは体の免疫にも大きな役割を果たしていることが近年分かりつつあります。南アフリカのSenrina Kalichuran氏らの研究によると、ビタミンDは、体内の免疫機能を高めCOVID-19を含めた感染症自体を予防・重症化しにくくする可能性も示唆されるようになってきています(※2)。

 

ビタミンDを「普段の食事」だけで摂るのは難しい

また、ビタミンDは骨をつくる際にも重要な栄養素となるため、特に子どもには欠かせないのですが、東京大学の伊藤明子氏らの研究によると、近年、日本国内でも子どものくる病(骨軟化症)などのビタミンD欠乏症が増加傾向にあるそうです(※3)。体内のビタミンDを増やすためには、「ある程度日に当たる習慣も必要です。海水浴に行って一日中遊ぶなど強い紫外線を浴びるときの対策は必要ですが、登下校程度であれば、定期的に日光を浴びるほうがよいでしょう。「足りない栄養をサプリメントで補ってもよいですか」という質問もよくいただきます。必要な栄養素は食品で摂り、サプリは足りない栄養を補うものと考えるのが基本ですが、ビタミンDは食事だけで必要量を摂るのが難しいです。最近では子ども向けのビタミンDのサプリメントも販売されています。子どもの成長で気がかりがあれば、医療機関でビタミンDが不足しているかどうか検査することもできますので、必要に応じ医師に相談してください。

 

「戦後まもない」時期より足りていないタンパク質

令和元年の国民健康・栄養調査によると、現代の日本人のタンパク質摂取量の平均値は71.4グラム(※4)。これは、戦後まもない1950年代並みの低い値となっています(※5)。食習慣の変化などの他、景況感も要因の一つでしょう。前述の統計をさかのぼってみると、1995年をピークに日本人のタンパク質摂取量が下がっています。これはちょうどバブル崩壊後の時期にも重なります。景気の悪い時期が続き国民の所得が減ると、肉や魚よりも安価で買えるご飯やパンなどの炭水化物でおなかを満たそうとする傾向が出てくるようです。タンパク質不足になると、髪の毛や筋肉だけでなく、体の機能を調節するホルモンの生成にも影響が出る可能性があります。一般的に「幸せホルモン」といわれるセロトニンや、「やる気ホルモン」といわれるドーパミンを生成する原料にはタンパク質が使われています。そのためタンパク質が足りないと、「ついイライラしてしまう」「なんだか元気が出ない」とメンタル面の不調を感じやすいのです。

 

ドイツからの報告「朝食でタンパク質を摂ると優しくなれる」

2016年、ドイツのリューベック大学心理学研究所のストラング博士らが「タンパク質を朝食に摂ったほうが他人に優しくできる」という興味深い研究を発表しています(※6)。ぜひ、朝からタンパク質が含まれる食材を積極的に摂ってください。卵料理は食べやすく、調理も簡単でおすすめです。お子さんのおやつなら、小さなおにぎりを用意するのもいいですね。しらすや鮭フレークを混ぜるだけでもタンパク質がプラスできます。子どものおやつは補食(必要な栄養やエネルギーを満たすために、通常の食事以外に食べること)の意味を兼ねているので、外出のときも持っておくと便利です。次の食事までの腹持ちもよいのではないかと思います。

 

 

「腸を整えるとメンタルも整う」のはなぜ?

食物繊維を摂るとお通じがよくなるという話は昔から有名ですが、実は食物繊維が免疫にも大きく関わっているということが近年分かってきました。人間の免疫の7割は腸内の「腸管免疫」が担っているといわれており、その免疫力を最大限有効活用するには、腸内環境がとても重要です。腸内環境をバランスよく保つ鍵となるのが食物繊維です。食物繊維は腸内にいる善玉菌の栄養となり、腸内環境のバランスを整える役割をしています(※7)。食物繊維をしっかり摂ることで腸内環境が良好になると精神面にもよい影響が出ます。2016年の三木貴子氏らの研究によると、食物繊維の摂取量が多いほど、うつ病のリスクが減る可能性が高いという結果が出たそうです(※8)。神経叢(しんけいそう)と呼ばれる脳とのネットワーク網があり、腸の動きが活発になることで自律神経が副交感神経優位となり、体がリラックス状態になります。お腹の中が健康だと、心身ともに健やかでいられるということも言えそうです。食物繊維をたくさん摂れるメニューとして、大根やにんじん、ごぼうなどの根菜やこんにゃくなど、食物繊維が豊富な材料が使われている具だくさんの豚汁がおすすめです。おやつには、ひじきご飯やわかめご飯の小さなおにぎりを。食物繊維が含まれるこんにゃくゼリー(編集部注※のどに詰まるおそれがあるのでご注意ください)もいいですね。

 

「タンパク質」「ビタミンD」「食物繊維」を効果的に摂るには?

紹介した3つの栄養素は普段の食事だけでは不足している人がほとんどです。他の栄養素と比べ、摂りすぎになる心配は少なく、とくにタンパク質は体に蓄えておくことが難しい栄養素なので、日ごろから意識的に摂るようにする習慣が必要です。最近はタンパク質をプロテインで摂るという人も増えましたが、甘みをつけているものが多いので、ダイエット目的のはずが糖分過多になってしまうケースも。購入時には成分表示をよく確認して選びましょう。

(主要参考文献)

※1 98%の日本人が「ビタミン D 不足」に該当
国内初の基準値を公表、植物由来のビタミン D はほぼ検出されず(東京慈恵会医科大学)
https://www.jikei.ac.jp/news/pdf/press_release_20230605.pdf

※2 新型コロナへのビタミンDの効果について
Vitamin D status and COVID-19 severity https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9082083/

※3 Itoh M, Tomio J, Toyokawa S, Tamura M, Isojima T, Kitanaka S, Kobayashi Y. Vitamin D-Deficient Rickets in Japan. Glob Pediatr Health. 2017 Jun 1:4:2333794X17711342. doi: 10.1177/2333794X17711342. PMID: 28607944; PMCID: PMC5456026.

※4 令和元年国民健康・栄養調査報告https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r1-houkoku_00002.html

※5 あなたは大丈夫?日本人はタンパク質不足(明治)
https://www.meiji.co.jp/milk-protein/healthy-life/article-1.html

※6 Strang S, Hoeber C, Uhl O, Koletzko B, Münte TF, Lehnert H, Dolan RJ, Schmid SM, Park SQ. Impact of nutrition on social decision making. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Jun 20;114(25):6510-6514. doi: 10.1073/pnas.1620245114. Epub 2017 Jun 12. PMID: 28607064; PMCID: PMC5488927.

※7『身体を壊す健康法』柳澤綾子・著(2023年、Gakken)

※8 日本人従業員の食物繊維摂取とうつ症状:古河栄養健康研究調査
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26810963/

取材/文・佐藤遥子

photographer: Amiri Kawabe

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