VERY August 2024

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2024年7月5日発売

930円(税込)

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山口真由さん「完璧でキラキラした人生に見られたかった」30代の葛藤と後悔

ニューヨーク州弁護士の資格をもち、テレビ番組でコメンテーターとしても活躍する山口真由さん。東京大学での成績は「オール優」、在学中に司法試験合格、卒業後は官僚、弁護士の仕事を経てハーバード・ロー・スクール留学という経歴から「欠点を見つけるのが難しいほどの完璧な女性」というイメージをもっている人も多いはず。しかし、30代の頃は仕事や恋愛で挫折続き。理想の自分とのギャップに悩むことが多かったそう。試行錯誤した当時の話を伺いました。

「実はできないことだらけ」そんな自分に気づかれたくなくて……

 

──30代は、山口さんの人生の中でどのような時期でしたか。

私は大学卒業までまさに王道ともいえる道を歩んできて、自分のことを恥ずかしながら「満点の人間」だと思っていたんです。確かに学校の勉強は得意でした。しかし、社会に出た途端、そんな自負とは裏腹に「仕事ができない人間」であることをまざまざと突きつけられました。

20代後半で財務省から弁護士事務所に転職し、32歳で退職、そして留学と、20代から30代にかけては人生の転機がいくつもあって、その度に苦しんだ記憶があります。ただアメリカに留学していたころの現地で多くの人が困難や失敗をすべて「挑戦」と言い換えているのが素敵だなと思って、私も、困難続きだった30代を「チャレンジの時代」と言い換えています(笑)。

これは私が当時勝手に思っていたことですけれど、「家族にも愛されていて勉強もできてキラキラな私」でいないといけないと信じていました。しかし現実は、卒業と同時に入省した財務省ではなかなか芽が出ず、同期の中でも評価は低いまま。ちょっとしたミスも連発し、周囲に助けてもらうことも多かったです。学生時代のような「王道路線」にいられない自分に耐えられず、結局入省2年目で退職しました。

活路を求めその次に就職した弁護士事務所でも徐々に仕事ができないことがバレて、みんなが私のことを哀れみの目で見ているように感じました。事実、だんだんと重要案件を任されることも少なくなっていました。その頃は周囲の目が気になり、毎日仕事が忙しいフリをしていました。スパムメールさえ熟読して時間をつぶしたり、夜になると自席を離れて図書館にこもったり。結果、ついにはほぼクビのような形で退職することに。

そんな状況でも、自分のプライドと現実の折り合いをつけられませんでした。次第に、日本には私の居場所がないと考えるようになりました。だから、留学と当時付き合っていた彼との結婚を言い訳にして、今いるところから逃げようと思ったんです。

 

 

──決断というよりも、逃げという気持ちが大きかった?

はい(笑)。でも、誰もそんなふうには思わないように見せることに必死でした。側から見たら、婚約もして留学も決まって、しかもその留学先はハーバード大学。帰国後はめでたく結婚だなんて、絵に描いたようなキラキラストーリー。ならば仕事を辞めたことだって納得してもらえるはず。

今でこそ、結婚や留学だけで今までのうまくいかなかったことが帳消しになるなんて思えないけれど当時は、私の人生が完璧じゃないと誰にもバレたくなかったんです。それなのに、婚約者とは些細な行き違いからうまくいかなくなり、留学中に別れることになりました。結婚の予定はなくなり、退職で収入も激減したから帰国後も貯金を切り崩す生活です。当時、メイクやファッションはなるべく派手にして、友人と会うときは今まで通りに明るくふるまっていました。実際は食事代を出すのもカツカツだったのに。周囲の人は私がそんなどん底の状況にあると気づかなかったと思います。

 

強みを再確認できたとき、自分が上昇気流に乗れていると感じた

 

──留学先での変化や気付きはありましたか。

留学中に改めて気付けたのは、私の能力の中心は「読むこと」だということです。

読む能力が日本の学校の勉強にすごくハマっていい成績を残すことができたのですが、弁護士事務所や財務省の仕事では、マルチタスクが求められました。私はそれがすごく苦手だったんですよね。それを自覚すればするほど「昔はあんなによくできたのに、どうしてこんなにできない人になってしまったんだろう」と思うようになっていたんです。

しかし、「以前はできていたのにできなくなった」のではなくて、「自分の得意分野をうまく生かせなかった」ということに気付くことができました。

帰国後しばらくしてから、タイミングよくコメンテーターの仕事が飛び込んできました。コメンテーターの仕事は、テーマについての膨大な資料をインプットし、その中から重要な情報を短い時間で正確にアウトプットすることが求められますが、これが私のもっている「読む能力」にうまくハマったんですよね。しっかりと資料に目を通して挑むことで、自分の拠り所をもって人前に出て話せるから発信することに怖さも感じませんでした。

「これが私の学生時代からの勝ちの方程式だ」と思えたし、自分が上昇気流に乗れていることを感じました。そこに辿り着くまでに、徹底的にメンタルを折られましたけれど(笑)。

 

「この人よりマシだな」と思ってもらえたらいい

 

──VERY読者も、結婚や出産で環境が変わり、これまでの自分とのギャップに悩んだり、自信を無くしたりすることが多いようです。

 

今までの社会は必要以上に「自分は幸せ」「自分は強い」と周りに見せて生きていかなければいけない風潮があったと思います。自己責任論がまかり通る中で自分の弱みや苦手を告白するのは勇気がいることです。

それが相手の置かれた状況を見えづらくして女性同士の分断を招いた面もあると感じます。これからは全ての人が自分自身の抱えている悩みを開示していける社会になればいいですよね。

一見、夫にも子どもにも恵まれていて「幸せな家庭」を築いているように見える人も、キャリアが充実していてキラキラと輝いているように見える人も、実は何かしら人に言いづらい悩みを抱えていることがほとんどだと思います。

だからこそ、私は後輩に対して自分の失敗を徹底的に開示しようと思っています。私の過去の失敗談や挫折話を聞いて「この人よりはマシだな」くらいに考えてもらえればいいなと思って。私自身、今でも悔しくてしょうがない日や、ソファに沈んで二度と立ち上がりたくないという日があります。でも、当時のことを思い出したら、それよりはマシだって思える。そして立ち上がって、優先順位をつけて今できることを一から順番にやればいいと思えるんです。

完璧を目指さず自分のマイナスな気持ちも認めてあげることが、次へのエネルギーになると思います。

 

PROFILE

山口真由(やまぐちまゆ)

1983年生まれ、北海道出身。2006年に東京大学を卒業後、財務省に入省。その後弁護士事務所を経てハーバード大学ロースクール卒業、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。現在は信州大学の特任教授として教壇に立つかたわら、テレビでのコメンテーターとして「羽鳥慎一 モーニングショー」(テレビ朝日)、「ゴゴスマ」(CBCテレビ)などに出演中。著書に『挫折からのキャリア論』(日経BP) 『前に進むための読書論』(光文社新書)など多数。

取材・文/正伯遥子

写真/古本麻由未

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