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【医師解説】30代からピルを飲むメリットとは?将来の妊活に有効な場合も!

──2019年の国連の調査によると、日本の女性のピル服用率は2.9%。諸外国と比べると決して高くはない数値です。ピルと聞くと「避妊のため」「副作用が怖い」というイメージがありますが、実は意外と知られていないメリットが。30代以降のピル服用とその留意点について、医師の稲葉可奈子先生にお聞きしました。

【お話を伺ったのは……】

産婦人科専門医・稲葉可奈子先生

 

低用量ピルには、そもそもどんな効果があるの?

──低用量ピルについて、飲むと生理が軽くなって避妊効果があって……と漠然とした知識をもっている方も多いですが、改めてどのような仕組みなのか教えてください。

女性の体は、自然の状態だと2種類の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を分泌していて、その分泌量が約1か月のサイクルで乱高下を繰り返している状態です。この女性ホルモンのサイクルに伴って、特に生理前の時期はイライラしやすかったり、体がむくんだりするんです。これらが一般的にPMS(月経前症候群)と言われるものです。

低用量ピルは、女性ホルモンを外側から薬として摂取することでホルモン量が安定し、毎月のホルモン分泌の乱高下がなくなります。それによりPMSの症状も改善します。 排卵も起きなくなるので、避妊の効果もあるのです。

──低用量ピルは、全ての人に効果があるのでしょうか。また、PMSの改善や避妊以外にはどのような効果があるのでしょうか?

個人差がありますので、すべての人に抜群の効果があるわけではありません。月経痛の軽減や、月経量が減る、という効果もあります。軽減はするけどまだ重い、という人もいますが、そのような場合は鎮痛剤を併用したりほかのホルモン剤を試すなど方法を変えて対処していきます。

前述のように、低用量ピルを服用することで排卵が止まりますから、卵巣をお休みさせることになり、それが結果的に卵巣がんの予防にもつながります。
また、低用量ピルによって月経が来ないようにする、もしくは経血量を減らすことで子宮内膜症の予防にもなります。予防効果だけではなく、服用する前から子宮内膜症だった方の改善も期待できます。

 

VERY世代が低用量ピルを服用するメリット

──VERY読者には30代~40代の方も多いですが、この年代からの低用量ピルの服用でも意味はあるのでしょうか。

もちろんです。月経痛に痛み止めを使用している方、痛み止めを使ってもしんどい方には、低用量ピルは効果的な可能性があります。ひどい月経痛の原因が、子宮内膜症である場合があるのですが、それを放っておくと不妊の原因になることもあります。『今すぐではないけれど、いずれ子どもがほしい』という方にはぜひ検討してほしいですね。40代の方は低用量ピルが使えるか慎重に判断する必要があるので、かかりつけの先生と相談しましょう。

──低用量ピルの服用が不妊の予防にもつながるというのは、あまり知られていない側面ですね。

そうですね。今パートナーがいないという方にはもちろんですが、パートナーがいるけれど、自分のキャリアを考えて『今すぐは難しいけれど、数年後には子どもがほしい』と考える方もいると思うのですが、そういう方にも検討していただけるとよいのではないかなと思います。
誰もが自分の体についての自己決定権があるので、ライフプランに合わせて服用を検討していただくのが理想です。妊活を始めるまでの数か月~1年の服用でも、服用する意味はありますから、まずはぜひ医師に相談してもらいたいですね。

 

 

病院を受診したとき、医師に伝えると良いこと

──低用量ピルが気になっている方の中には「病院になんて言って相談すればよいか分からない」という方もいるようです。

ひとつ注意してほしいのが、『低用量ピルは必ず飲まなければいけないものではない』ということ。PMSの症状がなかったり、経血量が特別多かったりするわけではない人が無理して服用する必要はないんです。低用量ピルを検討されている方は、何か困り事があるのだと思いますから、それを素直に医師に伝えていただければ大丈夫ですよ。

また、服用すると、吐き気やむくみなどの副作用があることも。服用後、体調がすぐれないなど違和感が続くときは医師に伝えましょう。処方された低用量ピルが合わなかった場合は、ほかの種類のピルを試す場合もありますし、ピル以外の方法で対応する場合もあります。副作用を誰にも相談せずにじっと耐えたり、自己判断で薬をやめて症状を我慢するのではなく、ぜひ医師に相談してほしいなと思います。

──最近はオンラインでの処方も一般的になっていますよね。

オンラインですと対面で受診するよりも時間の融通がききますから、低用量ピルにかなりアクセスしやすくなったのではないでしょうか。オンラインで診察、処方してもらう場合でも、医師としっかりとコミュニケーションをとることが自分に合った方法を見つける近道です。
よく『私には薬が合っていない気がするけれど、先生には言いにくい』という方がいらっしゃいますが、全然そんなことはないですよ! 薬が合わないと感じたら、その理由をはっきり医師に伝えていただいて大丈夫です。

ピルはメリットがある反面、吐き気やむくみなどの副作用が出る場合もありますから、飲み続けられなさそうであればためらわず医師に相談してください。時々、合わないからと独断で服用をやめる方がいらっしゃいます。もちろんやめることも可能ですが、医師と相談してよりよい方法を見つけることもできます。その先生と相性がよくないと思えば、ほかの先生に相談するのもよいと思います。

 

低用量ピル服用の注意点は?

── 一方、ピルを服用できない体質や生活習慣には、どのようなものがあるのでしょうか?

血栓症などのリスクが高まるため、40歳以上の方は医師との相談が必要です。また、喫煙している場合や高血圧、肥満(目安としてBMI30以上)の方はおすすめはできません。
だからといって月経周期に伴う症状に打つ手がないわけではなく、プロゲスチン製剤の内服薬や 「ミレーナ」の商品名で知られるIUS(レボノルゲストレル放出子宮内システム)などの使用が考えられます。

──最後に、低用量ピルの使用を検討されている方に伝えたいことはありますか?

私がいる病院に来られる方の中にも、低用量ピルの避妊以外の効果を知らなかったという方や、長年、月経痛を我慢されていた、という方がいらっしゃいます。そういう方が低用量ピルを服用し始めて『もっと早くから使っていればよかった』と言われることも結構多いんです。女性ももっと毎日を楽に生きていいんです。ライフプランにも関わることですから、迷っている方は年齢にかかわらず、まずは病院に相談していただきたいなと思います。

産婦人科専門医・稲葉可奈子(いなば・かなこ)先生

 

 

京都大学医学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。東京大学医学部附属病院などを経て、産婦人科専門医として、関東中央病院産婦人科に勤務。HPV感染症や子宮頸がんの予防の啓発をしている「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」の代表理事を務める。メディアやSNSでは女性のヘルスケアや性教育にかかわる発信をしており、問題について分かりやすく解説している。プライベートでは、四児の母。

取材・文/正伯遥子
※掲載内容は2023年8月現在の情報です。

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