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子どもの『人生を選択する力』ってどう育むの?プロがやってる3つの方法

「予測不可能な時代」。これからどんな教育をしたらいいのか、親なら誰もが迷います。そんななか、今、世界で注目されているのが「アントレプレナーシップ教育」。空気を読むことが優先され、出る杭はうたれる日本社会の縮図のような学校教育では期待できない、これからの時代に不可欠とされる「正解のない問いに答える力」を家庭で育む方法とは?「知窓学舎」塾長の矢萩邦彦さんに話を聞きました。

\北欧では小中学校でカリキュラム入り/

起業家精神=人生を選択する力

アントレプレナー教育を
おうちで実践

PROFILE

矢萩邦彦さん

「知窓学舎」塾長、実践教育ジャーナリスト、多摩大学大学院客員教授。「探究型学習」の先駆者として2万人を超える生徒を直接指導してきた。現在は自身の塾で教えるほか、多摩大学大学院(MBA)で「実践リベラルアーツ論」を、中学・高校でもリベラルアーツの授業を担当している。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)、『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本』(二見書房)などがある。

「アントレプレナーシップ」とは

アントレプレナーシップ(entrepreneurship)の語源は、フランス語の「仲買人」を意味する言葉だとされています。その後、経済用語として定着し〝起業家精神〟〝イノベーション精神〟のように使われていましたが、経済学者のドラッカーが「経済の領域に限定されるものではない。人間の実存に関わる活動を除くあらゆる人間活動に適用される」としたことから一般的に浸透をはじめ、現代においては「新しいことに挑戦する姿勢」や「意味や価値を創り出そうという意識」というとらえ方が主流になりつつあります。(矢萩さん)

自分で自分の人生を
選択できる力を育む

「アントレプレナーシップ」という言葉、聞いたことがあるでしょうか? 語源や意味は(上)の通りですが、日本では「起業家精神」と訳されることも多いので、「うちの子はまだ小さいから関係ない」「別に起業家にさせたいわけじゃないし……」と思う人もいるかもしれません。

そこで、探究型学習の第一人者で、〝受験や合格を目的としない塾〟として話題の知窓学舎の塾長である矢萩邦彦さんにお話を聞きました。

アントレプレナーシップとは、私自身は『自分の人生を選択していくマインド』が根底にあると思っています。これからの時代、主体的に人生を選択し、好きなことをして働いていくためには、会社に雇用されるだけでなく、起業したりフリーランスを含めたさまざまな働き方の選択肢を考えていく必要があるでしょう。もちろん、起業したくないならそれでいいんです。とにかく、主体的に自分で選択できる力をつけることが大事です。それを子育て期に育てていくことが、アントレプレナーシップ教育の基本だと考えています。

他人に合わせるのでなく
自分の価値観で生きる

──では、なぜそのアントレプレナーシップ教育が今注目を集めているのでしょうか?

アントレプレナーシップ教育は、教育先進国の北欧などでは、すでに公教育に取り入れている国もあります。日本でも、文部科学省を中心にアントレプレナーシップ教育の推進を主に大学教育から始めています。

──その背景にはどんなことがあるのでしょうか。

やはり予測不可能な時代になったからですね。右肩上がりと呼ばれていた時代は、他人が提示してくれるものを言われた通りにやっていれば、なんとなくみんなが考える幸せに近づけました。しかし、現在は10年後はおろか、来年でさえ何が起こるかわからない時代です。コロナ禍を経て、皆それは痛感しているのではないでしょうか。もはや、何が正解かもわかりません。だからこそ、失敗を恐れずに、自分で選べる力がより重要になってくるのです。そもそも他人の価値観に合わせて生きている人よりも、自分で人生を選べる人は、自由を感じることができ、楽しく生きていけるんです。幸せに生きるためにも、アントレプレナーシップ教育は大事なんですね。

──アントレプレナーシップ教育は学校で行うことは無理なのでしょうか?

学校は変わろうとしているけど、変わり切れていない、というのが実情です。まだみんなと合わせることが大事、という横並びの世界です。そのようななかではアントレプレナーシップマインドはどうしても萎んでいってしまいます。ですから、子どもがいちばん長く過ごす家庭でアントレプレナーシップマインドを育んでいくことが大事でしょう。

「自分と子どもは違う」
という認識を持つことから

──では、具体的に家庭ではどんなことをやればいいのでしょうか?

まず大前提として、親は、自分が選んできた選択が正しいと思わないことが大事です。今まで自分が選択してきたものによって、今の暮らしがあり、それについて満足している人も、満足していない人もいるでしょう。どちらであっても、それを正解、不正解と思わないことです。そして、自分の選択と、目の前にいる子どもの選択は別である、と認識することが大事です。そう思わないと、自分の人生を子どもに投影したり、リベンジさせようとしたりしてしまうからです。間違わないで欲しいのは、『自分の人生を否定しなさい』ということではありません。あくまで『自分と子どもの人生は別のものだ』と考えることが大事なのです。

──3歳の男の子のパパでもある、矢萩さんが日々の生活の中で実際にやっているという、おすすめのものを教えてください。

【1.子どもに選ばせる】

選択できる人にするためには、小さい頃から自分で主体的に選択する習慣をつけることが何よりも大事です。そのためには、こうしなさい、ああしなさい、と従わせるのではなく、「どうしたい?」と子どもに聞いたり、「どっちがいい?」と親が選択肢を作って選ばせたりするようにしましょう。自分が選択することで、責任も生まれますし、もし自分が選んだものが嫌になったら、「あっちを選んだらどうだったんだろう?」と選択しなかった方に思いを馳せるようになります。これがアントレプレナーシップマインドの芽生えになります。

【2.対話によって相手(親)が変わる経験をさせる】

よく親子の会話が大事、と言いますが、私自身は会話よりも「対話」が大事だと考えています。実は会話と対話は違うものです。会話はおしゃべりしていていればすべてが会話になりますが、対話というのは相手の話を聞いて、自分のマインドや行動が変わる可能性があるものです。自分の言葉が相手に影響を与え、変化をもたらす。この経験は自己肯定感が高まりますし、アントレプレナーシップマインドを養うことにつながります。ですから、子どもにあれこれ指示出しをするだけでなく、子どもの話を聞いて、親自身も変わるマインドを持つことが大事です。「ママ、こっちとこっちで悩んでいるけどどっちがいいと思う?」と子どもに聞いてみるのもいいでしょう。

【3.ニュースや絵本の先を予測させる】

選択肢が見えない未来を予測させ、その中から一つを選ぶことは究極の選択です。あるニュースを見て、「1週間後はどうなっていると思う?」と聞いたり、新しい商品やサービスが出たら「これは売れると思う?」と予測させたりするのもいいでしょう。絵本を読みながら「この先はどうなると思う?」と聞いてみても。実際の展開と違っても、それはそれでいいのです。合っているか、いないかが重要なのではなく、大人も答えを知らないことを予測し、仮説を立てる。これは、学校の勉強のような正解がある問題を解くのとは別の能力が鍛えられます。

「ただの感想」から始まる
仮説を立てる力

選択肢の中から選ぶ力はもちろん、いろいろな選択肢があることに気づくことも大事だといいます。それが、仮説を立てる力です。

ひろゆきさんの『それってあなたの感想ですよね』という言葉が小学生にも流行っていて、子どもたちがキラーワードのように使っているのを見かけますが、家庭の中でも「ただの感想だから言っちゃいけない」という空気ができてしまうとすれば、大きな問題です。なぜなら、仮説を立てることは「ただの感想」から始まるからです。感想レベルだと学校のテストではマルがつかないかもしれませんが、家庭では推測したり、感想を持つことを大いに歓迎しましょう。感想を言っていいんだよ、という空気感を親が作ってあげましょう。

BOOK

『自分で考える力を鍛える
正解のない教室』
(矢萩邦彦著/朝日新聞出版/1,650円)

アントレプレナーシップマインドを育むための学びに「リベラルアーツ」がある。知窓学舎で小中学生を相手にリベラルアーツの授業もやっている矢萩さんが、授業の内容をもとに、一冊にまとめたのが本書。古今東西の偉人たちの解説も楽しい。

COLUMN

幸福度No.1のフィンランドでは
アントレプレナー教育がデフォルト

フィンランドは国の未来をイノベーション、創造性に求めています。もともと大企業が多くないので(9割以上が中小企業)、スタートアップ、起業に関して国をあげて支援しています。

ʼ90年代初めにフィンランドでも大不況があり、雇用の創出、経済の活性化、イノベーションのためには新たな起業や、経営転換が求められるようになりました。起業家精神を体系的に学ぶ必要があると叫ばれ始め、その後、アントレプレナーシップは、誰もが持つべきスキルということで、社会科など様々な教科に広く取り入れられました。2016年に現場で運用が始まった現在の小中学校のコアカリキュラム(日本の学習指導要領)には、教育で養われるべき7つの能力の一つに「仕事に必要な能力と起業家精神」を明記。保育園から高校まで全レベルの教育にアントレプレナーシップが含まれています。急速に変化する社会や技術に前向きに向き合い、アイデアを行動に移せるようになることを目指します。

©Laura Dove / Helsinki Partners

さらに、2013年にフィンランド企業NOKIAが携帯部門を売却した際に、エンジニアが大量解雇されましたが、ブリッジプログラムとして解雇された人たちの起業を支援し、多くのスタートアップが誕生。ゲーム産業などで成功をおさめるスタートアップが出始めたこと、Slushといった大規模なスタートアップイベントが誕生したこと、各地の大学でもスタートアップ養成に力を入れ始めたことなどから、スタートアップブームが起きています。

アントレプレナーシップ教育の大きな目的は、決して経済や経営を学ぶことではなく、まずは「起業への前向きな思考」を養うことにあります。

小さい子の場合は、起業を教えるというよりも、自分で考えて行動に移せるよう自主性を高める教育のことがアントレプレナー教育とされています。つまり、子どもや若者が自分自身で選択して人生を築くことへの意欲を高めることでもあります。そのため、最近は先生が全て指示するのではなく、あらゆる教科で、自分で考え、調べて、仲間と協力することをとても大事にしています。

『フィンランド 幸せのメソッド』(集英社新書)
著者・堀内都喜子さん

ほりうち ときこ☆長野県生まれ。フィンランド・ユヴァスキュラ大学大学院で修士号取得。フィンランド系企業を経て、現在はフィンランド大使館で広報担当。他の著書に『フィンランド 豊かさのメソッド』『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』など。

イラスト/石井七歩 取材・文/江口祐子 取材(堀内さん分)・編集/フォレスト・ガンプJr.
*VERY2023年5月号「アントレプレナー教育をおうちで実践」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。

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