前半(記事はコチラ)に続き、映画『さかなのこ』主演ののんさんと、作品のモデルとなったさかなクンに「自分が本当に大好きなこと」で人生を満たす方法をお聞きしました。それぞれの得意分野で表現を続けるお二人はどんな子ども時代を過ごしていたのでしょうか?
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「好きなことを仕事にする」難しさに悩んだことも
──小学生の息子がいるのですが、好きなことには夢中になる一方、学校の勉強や普段の生活の中でやるべきことはなかなか気が進みません。親としては「このままで大丈夫?」と焦ってしまうことも。
のん 私だったら、やらなきゃいけないことの中に好きなことを紛れ込ませちゃう!
さかなクン ギョギョ! この鉄道について計算式を述べよとか⁉(笑) なかなかのテクニックでギョざいますね。お子さまはどんなことに夢中になっているのですか?
──鉄道とか昆虫とか料理とか好きなものはたくさんあるみたいです。
さかなクン そんなにたくさん!! すギョい♫ 素晴らしいですね~、とっても。将来、鉄道関連のお仕事や昆虫博士、お料理研究家になるかもしれませんね。
──さかなクンみたいに「好き」を突き詰められたらいいけれど、なかなかそうはいかないよね……と子育てに迷う親御さんも多いかもしれません。
さかなクン 一度始めたことを諦めずにやり抜くというのも大事だと思いますが、自分はそうはいかなかったのでギョざいます。お魚が大好きだからお寿司屋さんで働いてみたけれどなかなかうまくいかなくて……。シャリをにぎるのが下手で何度やってもおにぎりみたいにでっかくなっちゃう。「はあ、向いてないんだなあ」って……。お魚屋さんや水族館、いろいろな場所で働いたけれど、「お魚が好き」なだけではなかなか続きません。でも、やっぱりお魚が大好きだから、「ここはだめでも絶対自分に合う道があるはず!」って思っていたんです。いろいろやってみて遂に見つけたのが「さかなクン」でした。
──お二人はどんな子ども時代を過ごしていたのでしょうか。習い事はしていましたか?
さかなクン もうとにかく!お魚のことばっかり!! 子どもの頃続けてよかったのは剣道ですね。小学生のときに兄が先に剣道場に通い出したのがきっかけです。剣道着を着て竹刀を持っているのを見て「僕もやってみたい!」と。でも習いはじめると先生や先輩がおっかないし、防具は重いし、夏は暑いし、つらいことばっかり!! でも、毎年お正月に、道場のみんなでいただくおしるこのおいしさと言ったら!「ここを乗り越えたらおしるこが待ってるぞ~」という気持ちで小1から6年間頑張れたんですよね。
のん 私は空手や習字を習っていました。空手は根性がなくて長く続かなかったけれど、習字は数年間通っていたのかな。私はいたずらっ子というか悪ガキだったので習字の時間もついついふざけてばかりで。「お母さん、お願いしますよ~」って、習字の先生から家に電話がかかってきていたのだと最近母から聞きました(笑)。
落ち込み解消法はとにかく「寝ちゃう」こと
──映画の中でミー坊は、魚に夢中になるあまり学校生活や仕事がうまくいかなくて悩むことも。のんさんは、落ち込むことがあったときはどうしていますか?
のん まずは寝ること、です。家族とか話を聞いてくれる人に電話して、嫌なことを全部吐き出したら即寝ちゃう。いっぱい泣いて感情を使いきると眠くなるから、疲れるまで泣いて一晩寝ちゃうともう引きずらないです。あとはおいしいものを食べること。ポテチが好きなんです。とくにうすしお味ですね。
──映画では、子どものことをとことん応援してくれるお母さんの姿も印象的でした。
さかなクン 勉強そっちのけでお魚のことばっかりだったので、学校の先生もすギョく心配してくださって。でも母は、家庭訪問や三者面談でも「うちの子はこれでいいんです。お魚のことや絵を描くことが大好きなので」と言っていました。母がそうやって応援してくれたので、テストでいい点取らなきゃとか、この学校に受からなきゃという焦りは全くなく、お魚に打ち込めました。
のん 私の母も、学校の成績よりも毎日楽しく過ごしてくれることのほうが大事というようなタイプなのでのんびりしていました。でも、「中学に入ると勉強が難しくなるらしい」と家に届いた進研ゼミの広告漫画で知って(笑)、慌てて勉強しはじめました。たとえ学校の勉強で置いてきぼりになることがあっても、さかなクンみたいに好きなことをとことん突き詰めたら道は開ける気がする。この映画が子どもたちの希望になったらいいなと思います。
1993年7月13日生まれ。兵庫県出身。俳優・創作あーちすと。
2016年公開の劇場アニメーション映画『この世界の片隅に』で、主人公・すずの声を演じる。同作で、第38回ヨコハマ映画祭・審査員特別賞や第31回高崎映画祭・ホリゾント賞、2016年度全国映連賞・女優賞を受賞するなど高い評価を得る。また、2020年に主演を務めた映画『私をくいとめて』で、第30回日本映画批評家大賞にて主演女優賞を受賞。女優業のみならず、映画製作の分野にも挑戦し、『おちをつけなんせ』(’19)では監督・脚本・撮影・主演を兼任。『Ribbon』(’22)は自身初の劇場公開作品で、同作でも脚本・監督・主演を手掛けるなど各方面で活躍を続けている。
東京都出身。館山市在住。東京海洋大学名誉博士/客員教授。
魚の生態や料理法について豊富な知識を持ち、全国各地での講演や著作活動を中心に活動している。2010年には絶滅種とされていたクニマスの生息確認に貢献。また、海洋に関する研究や啓発行動の功績が認められると、「海洋立国推進功労者」として、2012年に内閣総理大臣賞を受賞した。農水省「お魚大使」、文科省「日本ユネスコ国内委員会広報大使」、環境省「サステナビリティ広報大使」、外務省「海とさかなの親善大使」などを含め、計30以上もの役職に就任。『さかなのこ』では、原作と出演のほか、魚類監修、劇伴でのバスクラリネット演奏など、多岐にわたり参加している。
映画『さかなのこ』公開中!
日本中の誰もが知るあの“さかなクン”の半生を、主演・のん×監督・沖田修一がユーモアたっぷりに描いた映画『さかなのこ』。原作はさかなクン初の自叙伝『さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!〜』(講談社刊)。子どもの頃から魚が大好きだったさかなクンが、たくさんの出会いの中でやがて“さかなクン”になるまでを描いた原作を、フィクションも織り交ぜながら大胆にアレンジ。子どものように天真爛漫で好きなことに一直線、周囲の人間をいつのまにか幸せにする不思議な魅力にあふれた主人公“ミー坊”を、のんさんが性別の垣根を越え生命力いっぱいに演じている。
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取材・文/髙田翔子