魚への愛と知識を子どもにもわかりやすく楽しく伝えてくれる、さかなクンの半生をもとに生まれた映画『さかなのこ』が9月1日に公開されます。「男か女かはどっちでもいい」と現場でも標語のように貼り出されていたというこの映画の主演を務めるのはなんと俳優ののんさん。ボーダーレスな活躍をするお二人に「好き」を見つける人生のヒントをお聞きしました。
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さかなクンは「境界線」を作らない
──のんさんは映画で、さかなクンをモデルにした“ミー坊”を演じました。
のん 今回の役を演じるにあたって、『TVチャンピオン』に出ていた頃の学ラン姿とか過去の映像をたくさん見て、さかなクンの研究をしたんです。昔のさかなクンは、跳びはねて喜ぶような様子は今と変わらないんだけど、どこかもの静かな青年みたいな雰囲気もあって。さかなクンが、今のさかなクンになる前の姿も役作りでは意識しました。さかなクンは、やっぱり魚が大好きだから、魚に対して人間を好きになるのと同じ、いやそれ以上の気持ちをもっていて、人だから、魚だからと境界線を作りません。そんなさかなクンらしさが伝わればいいなと思いました。
さかなクン のんさま♫ とってもうれしいです!! そして、配役を聞いたとき、「ギョギョ~! のんさまが~⁉︎ これは夢か幻か~!?」とワクワクびっくりしました。のん様は『あまちゃん』の頃から憧れ、超!尊敬しています。のんさまの演じる「ミー坊」は、とーってもキラキラ輝く素敵な存在で、海が大好き!という気持ちもまっすぐ伝わってくるので、最高にうれしいのでギョざいます。
のん さかなクンとは、『あまちゃん』の舞台となった岩手県三陸の久慈の海で初めてお会いして、その後もずっと親交がありました。今回また、こんな形で一緒にお仕事ができてよかったです。
たった一人でも「わかってくれる人」がいたらいい
──子どもの頃はとくに「みんなと同じ」ことをすることを求められがち。映画の中のミー坊のように、やりたいこと、好きなことを貫くのは難しく感じることもあります。
のん 自分の「好き」を肯定してくれる人が一人でもいると、心が強くなれる気がします。だからそういう人のそばに行くのがいいと思う。一人で考えていると、「自分の信じた道は正しいんだって意固地になっているだけなのかな?」と思ってしまうかもしれないけれど、褒めてくれる人がいたら、こっちの道に行ってもいいんだと信じられる気がするので。
さかなクン 自分も中学・高校ぐらいの頃は、お魚のことをしゃべっても、「あれ~?みんな全然聞いてくれないし、むしろなんだか遠ざかってく~」と、悩みました。でもやっぱり、今のんさまが仰いましたように話しかけてくれるお友だちもいたんですね。「そんなにお魚っておもしろいの?」「ミー坊の描くお魚って本当にいるの?」って。そう聞かれるとついうれしくなって、その子はフクイ君っていう名前だったので、フグちゃんと呼んでいました。「フグちゃん、お魚釣りに行こう!」って。こういうお友だちが一人でもいると違いますよね。それから、やっぱりお魚を見てると、とーっても癒されます。お魚の一生懸命な姿を見ていると、「自分も頑張らなきゃな」と元気をいただけるんです。
のんさんとさかなクンの共通点は?
──映画の中で躍動するのんさんは、まるでさかなクンのよう。お二人は似ていると感じるところがありますか?
さかなクン のんさまのキラキラな輝きと穏やかさに癒されます。自分ものんさまのように常にキラキラと穏やかでありたいなあと思うので、ちょっとでも似ていたらうれしいです。
のん さかなクンの人を幸せにするオーラというか、とにかく人を元気にしたいという気持ちがすごく強いところに共感します。「好き」を大事にしてとことん突き進むところもすごくシンパシーを感じますね。時には周囲の人を置きざりにしてどんどん前に行ってしまうこともあるけれど(笑)。あと、いたずら好きなところも一緒です!
──のんさんも、もともと魚が好きだったと聞きました。
のん 小さいときからお魚が出てくる絵を描くのが大好きでした。映画の中で魚を捌くシーンも全部、私が実際にやっているんですよ。
さかなクン そんなのんさまには、今朝さかなクンの地元・千葉県館山市の海のとれたてのお魚ちゃんたちを持ってきました~。ウルメイワシちゃんが大量でギョざいます。コアジちゃんにイサキちゃん、アカエイちゃんもいますよ。漁師の皆さまありがとうギョざいます。
──お二人は、周りから「変わってる」と言われることはありましたか?
のん 私自身はそんな変わってると思っていなかったから、答えになるかな?なんて考えていたのですが、スタッフの人たちからは、「いや、エブリデイ(変わってます)ですよ」って(笑)。私が何かしようとすると「のんちゃん! ちょっと待って待って!」って言われることも多いけれど、自分では気付いてないんですよね。
さかなクン ギョギョギョ!! 自分も同じでギョざいます。自分では普通でいるつもりなんですけど、友だちに「自分って普通だよね?」って聞くと、「なに図々しいこと言ってんだ」と言われてしまったこともあるのでギョざいますよ……。
のん そういう意味では、さかなクンとはすごく共通点が多いような気がします(笑)。
後半に続く>>
1993年7月13日生まれ。兵庫県出身。俳優・創作あーちすと。
2016年公開の劇場アニメーション映画『この世界の片隅に』で、主人公・すずの声を演じる。同作で、第38回ヨコハマ映画祭・審査員特別賞や第31回高崎映画祭・ホリゾント賞、2016年度全国映連賞・女優賞を受賞するなど高い評価を得る。また、2020年に主演を務めた映画『私をくいとめて』で、第30回日本映画批評家大賞にて主演女優賞を受賞。女優業のみならず、映画製作の分野にも挑戦し、『おちをつけなんせ』(’19)では監督・脚本・撮影・主演を兼任。『Ribbon』(’22)は自身初の劇場公開作品で、同作でも脚本・監督・主演を手掛けるなど各方面で活躍を続けている。
東京都出身。館山市在住。東京海洋大学名誉博士/客員教授。
魚の生態や料理法について豊富な知識を持ち、全国各地での講演や著作活動を中心に活動している。2010年には絶滅種とされていたクニマスの生息確認に貢献。また、海洋に関する研究や啓発行動の功績が認められると、「海洋立国推進功労者」として、2012年に内閣総理大臣賞を受賞した。農水省「お魚大使」、文科省「日本ユネスコ国内委員会広報大使」、環境省「サステナビリティ広報大使」、外務省「海とさかなの親善大使」などを含め、計30以上もの役職に就任。『さかなのこ』では、原作と出演のほか、魚類監修、劇伴でのバスクラリネット演奏など、多岐にわたり参加している。
映画『さかなのこ』公開中!
日本中の誰もが知るあの“さかなクン”の半生を、主演・のん×監督・沖田修一がユーモアたっぷりに描いた映画『さかなのこ』。原作はさかなクン初の自叙伝『さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!〜』(講談社刊)。子どもの頃から魚が大好きだったさかなクンが、たくさんの出会いの中でやがて“さかなクン”になるまでを描いた原作を、フィクションも織り交ぜながら大胆にアレンジ。子どものように天真爛漫で好きなことに一直線、周囲の人間をいつのまにか幸せにする不思議な魅力にあふれた主人公“ミー坊”を、のんさんが性別の垣根を越え生命力いっぱいに演じている。
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取材・文/髙田翔子