VERY December 2022

VERY

December 2022

2022年11月7日発売

890円(税込)

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60代を生きる作家・伊藤比呂美さん「30代の迷い・失敗は『全部ホルモンのせい』でいい」

──詩、小説、古典の現代語訳、新聞やラジオでの人生相談など多方面で活躍する作家・伊藤比呂美さん。VERYでも以前、人生相談をしていただきましたが、やっぱり悩みは尽きません。現在、早稲田大学等で教鞭をとる伊藤さんに「女の人生」について出張講座を開いてもらいました。今回は、「30代」の生き方について。

©吉原洋一

伊藤比呂美(いとう・ひろみ)さん
1955年生まれ。詩人。青山学院大学文学部卒業。’80年代の女性詩ブームを牽引する。
結婚、出産をへて’97年に渡米したのち、2018年に帰国。現在熊本に在住。『良いおっぱい 悪いおっぱい』『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』『父の生きる』『読み解き「般若心経」』『閉経記』『ショローの女』など著書多数。
『女の一生』(岩波新書)巻末年表によれば、伊藤さんご自身の30代は、「生活に不満はなかった。よい夫で、仕事は充実して、子どもたちも健康だった。世間ではよい夫婦、理想の夫婦といわれていた。その枠に押し込められるのがいやでいやでたまらなかった」「Nと離婚。以後も家族として同居を続けることにする。いろいろある。ほんとにいろんなことが人生にはある」という波乱の時期でした。

30代とは……?

──ご自身の30代から40代は離婚、妊娠、新たなパートナーと米国で暮らすという激動の時期でした。伊藤さんはどうやって人生の決断をしてきましたか。私は一時の気の迷いかな、わがままだ、と自分を抑えてしまいがちです。

もしも「こう生きたい」という衝動があるなら、身を任せないといけないというのが私の考え方です。私にとって渡米は自殺の代わりみたいなものでした。あのとき、行動することをためらい、自分の衝動を無理に抑えていたらその後、生きられなかったと思います。後悔するかどうかは、いざそのときになってみないと分からないでしょう。もしかしたら一歩踏み出さなかったことを後悔するかもしれないですよね、私は長年、新聞などで人生相談を担当しています。この頃は70代、80代の読者からも「これまでずっと我慢していた。離婚したい」といった相談の手紙が来るんですよ。めっちゃ気持ちは分かる。でも今からじゃ人生がリスキーで、離婚ですよ!って言い切れなくて困っています。

どんな結果になるにせよ「やるべきことはやった、見るべきものは見た」という実感を持って生きるのと、周囲に言われるまま自分を抑えて生きるのと、80代になったときにどちらが心が楽で人生面白いかなと思うと、おのずと答えは出てくる気がするのだけれど、どうでしょうか?

──今の時代、老後や不測の事態に備えて堅実に生きるのが賢い生き方であるとあらゆるところで繰り返し言われます。

今、60代になってはっきり言えるのは、いままで自分が人生の中でしてきたことは「私のせいじゃなかった」ということ。私が読者の皆さんと同じくらいの年の頃、衝動的にしたことは私のせいじゃなくて、ホルモンのしわざだった……(笑)。何でもかんでも自己責任と考える必要はないんじゃないかなと。私の生き方の基本は、石橋を叩く前に走って渡り切れということ。全速力で渡って振り向けば、橋は崩れ落ちているかもしれない。けれど、少なくとも自力で渡ったんだという記憶だけは残って、そのあとの人生もなんとか生きていけるような気がするんですよね。

──30代は、「安定したものをぶち壊してぇ衝動」が湧いてくる、人生の中でも「不穏な時期」だとご著書で仰っていました。

アメリカに行ってから、自分の悩みを周囲の友人に打ち明けたら「それは、明らかにミッドライフ・クライシス(中年の危機)ね」と言われました。そうか。私だけじゃないんだ。みんな、今の状態に納得できなくてウズウズしているんだと分かったら、気が楽になりました。でも東アジアで言われているのは「四十にして惑わず」。そんなこと土台無理なのに、惑うからこそ惑わずと言い続けているのがこちらの考え方のようです。でも、東西問わずなんで皆、同じ頃に同じような悩みを持つんだろう。これはさきほども話した通り、私たちのせいじゃない。もう責任は全部ホルモンさんにあると考えてよいと思います。色々試してもつらい、うまくいかないというときは婦人科に相談してみるのもおすすめです。もう少し時間がかかりますが、このあと更年期を抜けるともう、今は見たこともないような青空が広がっています。

POINT

「私の責任」じゃない「全部ホルモンのせい」でいい

今は熊本の自宅で犬や猫たちと同居。

米国から連れて帰った愛犬クレイマー。

部屋を思い切り散らかす元野犬のチトー。

■担当ライターが選ぶ
悩んだ時の比呂美本

『女の絶望』(光文社文庫 660円)
「夫と話すことがありません(三十九歳)」「夫のほかに好きな男ができた(四十代前半)」「主人の不倫が発覚しました(三十二歳)」「夫の勃起力が続きません(三十代)」……みんな悩んでいる。離婚、セックス、不倫、育児、介護……など主に既婚女性の悩みの多くを網羅。なぜ、こう思ってしまうのか。ではどうしたらいいのか。悩みの根本原因から解決法まで、ここまで具体的かつ親身に答えてくれる本ははじめてでした。「誰にも相談できない」と思ったときに効く!本です。2冊目には『人生おろおろ 比呂美の万事OK』(光文社文庫)『女の一生』(岩波新書)『閉経記』(中公文庫)も。

取材・文/髙田翔子 編集/フォレスト・ガンプJr.
*VERY2022年9月号「伊藤比呂美先生「女性の生き方」集中講座」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。

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