©倉本ゴリ<Pygmy company>
子育てを通して、今まで以上にお金の大事さを実感するようになったけど、お金の使い方や貯め方なんて学校では教えてくれなかったし、みんなはどうしているの……? そんなママたちの悩みにこたえるべく、元外資系金融会社勤務、現在は社長としても活躍されているVERYモデル・申真衣(しんまい)さんに、毎月読者から寄せられたお金に関する質問に答えてもらうコラム連載。第11回は「持ち家か賃貸か」がテーマです。(過去の連載はこちら)
【第11回】今月の質問
来年子どもが入学する前に家を買おうか悩み中。持ち家と賃貸、それぞれのメリット・デメリットを教えてください。
家を買うなら住み替えも念頭に
目安は「10年目」
撮影/福本和洋
結婚、出産、子どもの進学など、人生の節目に住宅購入を検討する人は多いですよね。私が今住んでいるのは持ち家で、3年前、34歳の時に購入しました。きっかけは特になく、気に入った物件があったので購入したという感じです。これまで長く住みたいという物件にはなかなか巡り合えず、賃貸での住み替えを繰り返してきました。何十軒もの物件を見てきた中で、今の家は「こんな家に住みたい」という理想と合致していたんです。
ただ、一生ここに住むとまでは考えていません。家族の形は必ず変化するからです。実家は私たち三姉妹それぞれの部屋があるなど、子どもがのびのびと育つには十分な環境でした。でも子どもが全員独立して両親だけの暮らしになると、広すぎるように感じます。部屋数が多いと、それだけ掃除の手間もかかって大変です。人生において子どもと一緒にいられる時間は案外短いもの。その時々の家族の形にあった住まいを検討していきたいです。
もう一つ忘れてはならないのは、長く住み続けるためにはそれなりの費用がかかるということ。30年経って、何も手が入っていない家に住み続けるのは難しいため、戸建なら自分たちでお金を貯めて修繕する必要があります。マンションであれば毎月の修繕積立金で大規模修繕に備えますが、その額が今後上がらないとも限りません。いずれにしても、購入価格だけでは済まないと考えていたほうがいいでしょう。そう思うと、一生モノと思って買うより住み替えを前提にしておいたほうが身軽な気がします。ただ、あまりに短期間での住み替えでは手数料ばかりかかってしまいます。10年くらいは住むイメージができるなら買う選択肢を考える。これくらいのペースがいいと思います。
資産価値よりも「その家が好きかどうか」が重要
撮影/佐藤航嗣<UM>
住み替え前提だからといって資産価値ばかり気にするのも考えものです。不動産会社の売り文句としてこうした説明を受けることもあるかと思いますが、本当に資産価値が高いなら買うときの値段も高いはず。その逆ももちろんです。「その物件よりこの物件のほうがお得」と営業マンに言われたけれど、何がどうお得なのかを具体的に聞いたら答えられないということも。不動産会社がいうことを鵜呑みにせず、自分でデータを集めることも重要です。購入を検討しているマンションが新築でなければ、賃貸に出ている値段をチェックしてください。貸したらいくらになるかを知ることで、もしものときの安心感につながるかもしれません。
家は大きな買い物。さまざまな価値基準があると思いますが、私にとっては「その家を好きと思えるかどうか」が全て。資産価値も大事だけれど、お金で測れない幸せもあると思っています。
賃貸なら、よりフレキシブルな生き方ができる
賃貸派の最大のメリットは、フレキシブルさといえるでしょう。持ち家に比べて引っ越しもしやすく、収入の変化に応じて住み替えも可能。将来の修繕について考える必要もありません。「家賃を払っているだけで何も手に入らない」という意見もあるかもしれませんが、今借りているエリアの不動産相場が上がっていて家賃が据え置きなら、それだけで得をしていると私は思います。
ここ数年はコロナ禍で働き方を見直して引っ越しをしたという話もよく聞くようになりました。賃貸なら思い切って数年間は海のそばに住むなど、自由に生活を設計しやすくなります。うちの会社にも実家の近くに引っ越してリモート中心で働いている社員がいますが、都心のマンションと同じ家賃で、より広い家でゆったり暮らせて快適だと話していました。
また、引っ越しの自由度だけでなく、人生そのものの自由度が高いというのも賃貸派の魅力の一つではないでしょうか。これからの時代、一生ひとつの会社で働き続ける可能性は低くなります。大きなローンを背負ったことで転職にチャレンジできないということも、もしかしたらあるかもしれません。そう考えると、「賃貸だから損」だと一概には言い切れないと思いませんか?
持ち家と賃貸、お金の面でどちらが損か得かだけではなく、理想の生き方や価値観も重視して、今の自分たちにあった住まいを見つけられるといいですね。
取材・文/樋口可奈子