ようやく小学生になった子から「学校に行きたくない」と言われることがあります。「学校に行ってほしい」「でも無理に行かせても……」「仕事はどうなる?」葛藤とその先にあるそれぞれの選択を2回シリーズでお届けします(1回目はコチラ)。幼稚園までは順調と思っていたママの体験談の2回目後編です。
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お話を伺ったのは……
M.Sさん(デザイナー・40代 /小4のママ)
小学校以外の場所で学ぶということ
──学校以外の場所に通い始めた娘さんの様子はいかがですか。
現在は週に2回のペースで適応指導教室に行っていて、連絡帳に時間さえ書いておけば午前中だけ行くとか利用時間も子どものペースに合わせて決められます。ただお弁当や送迎が必要なのがちょっと大変なんですよね。学校には週に1回登校し、スクールカウンセラーと面談しています。その時に教室にも顔を出して、担任の先生からプリントをいただいて帰ります。課題やテストを家でこなし、次の週に持っていくという流れです。コロナ禍では、事前申し込み等の制限がありますが授業のライブ配信が行われたり、リコーダーの課題も動画で提出すればよくなるなど、学校に行けなくても授業に参加しやすい仕組みが増えました。不登校児のために始まった取り組みではないけれど、結局不登校児も多く使っていると思います。コロナで大変なことは多いですが、不登校児の親にとっては学校に行かなくても勉強ができる仕組みが増えたともいえるんです。学校の先生方も、今は無理に学校復帰させようとせず娘のペースを尊重してくれるようになりました。娘はこのスタイルで毎日とてもいきいきと過ごしています。
──家庭での学習はどのようにしているのですか?
教科書に準拠していてタブレット学習ができる「スマイルゼミ」には本当に助けられています。不登校とひと口に言っても本当にいろいろなタイプの子がいます。うちの子どもの場合は、教室で緊張していると授業が耳に入りません。学校の騒がしい環境で勉強するのは苦手でも家で落ち着いた環境ならできるんです。通学していたころは、親子ともそれだけで疲労困憊してしまい宿題が手につかず週末にまとめてやったり、ノートがいつまでも真っ白ということもありました。結局、学校に毎日行くのをやめた今のほうが勉強自体はできています。学校を離れるとなかなか勉強できないという子もいますし、こればかりは子どもの特性にもよりますが。今も、私はフルタイムにはせず娘のサポートができるようにシフトを組んで、教科書や学校からもらったプリント、体育の代わりに運動なども…夫ともすべて分担して、できる限りやるようにしています。
不登校児の親だからこそPTAの仕事をしようと思った
──MさんはPTAの広報委員として活動もしています。
子どもが学校に行っていないと、PTAなどの活動に親が参加するのを躊躇することが多いと思うけれど、私は積極的に関わろうと思いました。そうすれば、不登校家庭への偏見なども減らせるのではないかと考えました。本部役員の中に友人がいたこともきっかけです。また、1年以上の付き添い経験から、子どもたちの学校での過ごし方をもっと保護者の方に知ってもらいたいと思うようになりました。広報誌の誌面制作なら、デザインの仕事をしてきた経験も活かせそうだと思い手を挙げました。それからやっぱり、今のPTAの組織を時代に合わせて中からアップデートしていきたいという本部役員さんたちの想いに共感して、協力したいという気持ちも大きかったんですよね。広報誌作成もなかなか大変な作業ですが「前年踏襲で出さなきゃいけないから」ではなく、「伝えたいことがあるから出す」という気持ちで作成しています。コロナの影響もあり、PTAは会合がZoomも使ったハイブリッド開催になるなど変わりはじめています。ほかにも、広報誌のペーパーレス化を検討したり、不要な活動を縮小するためのアンケートをとるなど、PTAを「良い方向に変えよう」という動きを間近で見られるのはうれしいので、今後も関わっていきたいと思っています。
──これからの進路についてはどのようにお考えですか?
学校に戻ることは目標にしてないけれど、学校に行かなくていいと思っているわけでもないというところでしょうか。娘の様子によって柔軟に対応したいと思っています。ただ公立中学に通学するのは現状では難しいような気がしています。5、6年生でどれくらい本人が変わるかまだわかりませんが適応指導教室には中学生も通える場所もあるので、基本はそこに通って、通塾やホームスクーリングもしながらテストだけは在籍校に受けに行くのが現実的かなと。高校受験はまだ少し先ですが、娘はおそらく面接等が苦手なんですよね。なので地道に点数が取れるようにはしておきたいな、と思っています。もし在籍校でテストを受けられず内申点がまったくもらえなかった場合は、面接と作文で入れるチャレンジスクールも選択肢に入ってきます。その場合は面接の特訓をしないといけないですね。通信制や定時制の学校も加えたら選択肢は増えるでしょう。ただ、今の段階ではどの学校が合うかはまだわからないので進路をひとつに決めず情報だけは集めておきたいところです。娘はイラストやプログラミングなど、大好きなことがたくさんあるので、娘にぴったりの学校が見つかるといいな、と思います。
──普段から穏やかな雰囲気のMさんですが、行き渋りに付き合うには大変なことがたくさんあったと思います。「もう無理!」とならない心の持ち方があるのですか?
私は17歳の時に母が突然倒れ、寝たきりのまま入院することになりました。以後20年間、最期まで回復することのなかった母とともに過ごすなかで、自分ではどうにも変えられない現実を前にしていかに安定した心で過ごすか、相手を受け入れていくかということを学びました。もしかしたらその経験が今、活きているのかもしれないです。目の前の娘が元気であることが一番大事なんです。私自身、学校は苦手ながら通っていました。高校以降は選択肢も広がりだいぶ気持ちも楽になりましたが、小中学校は居心地が悪くて授業や先生の指示が頭に入らず、結局勉強が嫌いになってしまいました。卒業してからもあんなところには二度と戻りたくないと思っていたけれど、多感でいろいろなことを吸収できる時期を心を無にして過ごしたことはもったいなかったなとも思っています。時代は違いますが、娘のように全力で学校に行くことを拒否して違う道を切り開く、というか親にそちらを選ばせるほどのパワーは私にはなかったんですよね。娘のことを通じて、私も学校以外の選択肢を知る機会があれば違う未来があったのではないかとも感じました。私自身ももう一度勉強をやり直したいという気持ちが強く、今は娘と一緒に学ぶのが楽しいですし、学校に行かなくても勉強はできるというのが今の実感です。
取材・文/髙田翔子