新刊エッセイ『きれいになりたい気がしてきた』が好評のコラムニスト・ジェーン・スーさんとVERY専属モデルの申真衣さん。結婚してもしなくても、出産してもしなくても、悩みがなかなか消えない30代の女性たちに向けて、自分にとっての人生の切り開き方についてお聞きしました。(全4回。前回はこちら)
「私なんか」と言ってよかったことは一回もない!
ジェーン・スー(以下、スー):この年になっていつまでも、「どっちが正解?」と揺れ動くのはマジで意味ないということは断言しておきます。別に悩むのが好きならやってもいいけど、結局のところ「正解」なんて、ないんですよ。最終的に自分で選んだものを正解にしていくしかないんです。
申真衣さん(以下、申):さっそく名言が出ましたね!
スー:「いつまで悩んでんだ。幾つだ貴様」って話ですよ(笑)。いまだにこの社会では、自分に自信がない女性のほうが可愛がられる傾向があって。自分のやることなすこと自信満々な態度でいるよりも、「どうしよう」ってためらっているほうが減点されにくいです。だから皆、無意識のうちに「迷ってみせるクセがついてしまっている」ことはあると思います。ただ、この間、私のやっているポッドキャスト番組でも話したんですが、振り返ってみると「私なんかが、って言ってよかったことは一度もない」んですよ。処世術として、謙遜するふりをしたことは過去にあるかもしれないけど、やりたいと思ったのに私なんかには無理、と思って諦めたことで「結果やらなくてよかったー」ってことは、一回もなかったです。
申:でもそれって、どうやって乗り越えていけばいいでしょう。「揺らがないでいる」のってけっこう難しくないですか?
スー:迷って揺らいでいるというのは、水の中で溺れている状態に近いくらいに思っていたほうがいいと思います。もがいていれば、誰かが手を差しのべてくれると思ってしまうから。10代、20代ならそういうこともあったかもしれないけれど、もうこの年ですからね。
申:あ、そうか。「私なんて」と言っていれば誰かが助けてくれると思っちゃう。
スー:そうそう。一歩踏み出さなければ大きな失敗もしないから、自分に自信がないって言いたくなる気持ちは、よくわかるんですよ。私だって自信満々なわけじゃないですけど、なんだろう。もうちょっと人生って初期設定がハードモードなものだよとは言いたいですね。
「毎日8時間睡眠」を最優先にしてみたら……
——少し話は変わりますが、なかなか自分の時間がとれないママたちからよく聞く悩みなのですが、夜時間の使い方について。子どもと一緒に寝てしまうか、やっと訪れた一人の時間に好きなドラマを見たり、仕事を片付けるか。結局どちらをとっても「このままでいいのか」と迷ってしまうと。申真衣さんは最近、「あえて8時間寝ることにした」そうですが……?
スー:まとまって寝られるのが凄いですね。私は昔から中途覚醒しやすくて、1、2時間で目が覚めちゃうんですよね。
申:私の場合、仕事と子育てを優先して睡眠時間をちゃんととることにした結果、自分の好きなことをする時間や友達と会う時間はめちゃくちゃ減っているのが現状です。でも自分の中で優先順位をつけて、今は「全部できなくてもいい」って思うようにしています。人生はけっこう長いものだと思っているので、また年取ったら、友達ととりとめもなく話ができる時間は作れるはずですし。『睡眠こそ最強の解決策である』という本を以前読んで、心身共に健康であるために睡眠が必要不可欠だと感じて意識的に睡眠時間を増やしました。そうしたら、心が穏やかになった気がするんですよ。夫婦喧嘩も減った気がしていて……。
「自分の幸せ」って捉え方次第でいくらでも変えられる
——「ないものねだり」とわかってはいても、「隣の芝生は青い」マインドになってしまうときはどうしたらいいのでしょう。
申:それも物事の捉え方ですよね。
スー:そうそう。捉え方だと思います。言っておくと「正解」というものは、マジで一個もないです。ネガティブに考えることで得をするか損をするかを考えると、やっぱり損をすることのほうが圧倒的に多いから、良いほうに捉えたほうがいい。人から評価されたとき、わざわざ謙遜する人がいるけれど、「褒められちゃった!」と素直に受け取っていいと思います。時には「あれ、嫌味だよね。何でわかんないの?」と言われることだってあるかもしれないけれど、そんなの勘繰らないほうが人生楽しいですよ。
申:私、思うんですけど、「幸せ」って自分の外側で起きている事実を指しているんじゃなくて、自分の頭の中で起きていることだと思うんですよ。おいしいケーキが食べられるから、高級車に乗れるから幸せというわけじゃない。目の前で起きている現象に対して、脳内で幸せ!と思えるドーパミンが出るかどうかにかかっている気がします。全ての「幸せ」は、自分の頭の中の出来事で、物質的に満たされたり、目の前の現実を変えたからって、それだけで幸せになるとは限らないと思います。結局は幸福と感じる能力があるかどうかということ。どんな選択をしても、どれだけお金持ちになっても、幸せを感じられない人は、感じられないままなので。「幸せになりたい」とか「自分の選択を肯定したい」というのであれば、その幸せを感じる能力にフォーカスしていくのがいい気がするんです。
<後編に続く>
Profile
ジェーン・スーさん
1973年、東京生まれ東京育ち。作詞家、コラムニスト。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、ポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」のパーソナリティとしても活躍。
申真衣(シンマイ)さん
1984年生まれ。大阪府出身。VERY専属モデル。株式会社GENDA代表取締役社長。
『きれいになりたい気がしてきた』
『美ST』連載が待望の書籍化!“効かせ甲斐のあるお年頃”を迎えて改めて考える、美の楽しみ方と向き合い方とは。「どうせ生きるなら、好きな自分で生きていきたい」「誰に遠慮する人生じゃなし、自分のための美ですもの」「四十代も終わりかけになって、ようやく女が楽しくなってきた」。これから40代を迎える方も、いままさに同年代という方も、お年頃セカンドシーズンが楽しくなるエッセイ44本!(光文社刊)
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シャツワンピース¥31,900(ティッカ)ピアス¥10,000(メラキ/フラッパーズ)ネックレス¥69,300(ウノアエレ/ウノアエレ ジャパン)
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撮影/イマキイレカオリ(ジェーン・スーさん分) 西崎博哉<MOUSTACHE>【申真衣さん分】 取材・文/髙田翔子 スタイリング/村瀬萌子(ジェーン・スーさん分)