※このコラムは2021年12月号(11月6日発売)に掲載されたものです。
先日放送された『今夜くらべてみました』の反響の大きさに驚いています。番組内の企画で、3カ月間猛特訓した空中ダンス(エアリアルティシュー)をサプライズ披露したのですが、これが思いのほか大変でした。もともと幼少期バレエやダンスをやっていたとはいえ、エアリアルティシューはまったくの未経験。他の仕事をセーブしながら、週4で個人トレーニング、週2でエアリアルの練習を(エアリアルはそれ以上増やすと体に痛みが出てしまい、週2が限界でした)。大人になってから、こんなに本気で新しいことに挑戦することもなければ、生活のなかで辛くてきつい経験をすることもなかった。しかも今回はテレビで放映される恐怖や緊張もあって…自分のことをメンタルが強いと思っていたけれど、安全に乗り越えられるハードルしか課していなかったんだと気づかされました。
大人になると、軌道修正が上手くなり、知らず知らずにハードルを下げて諦めることっていっぱいあると思うんですよね。もちろんそれは生きる知恵だと思うけど、一方で、子どもは大人からいつも無理だと思うことを期待されていたり、頑張れ!ってとにかく頑張らされたりもする。無理なことをやれって言われる辛さ、やらなきゃいけない辛さがとにかく身に染みました…。
収録当日は家族が観覧に来てくれて、娘たちに頑張る姿を見せられたのは、何よりうれしかったですね。それに、インタビューで「お母さんが仕事をしていることをネガティブに思ってほしくない」と語った部分を使ってもらえたことも大きかった。お母さんも罪悪感を感じずに仕事にやりがいを持って頑張っていいという、ポジティブなメッセージになったらいいなと思っていたので。
お母さんがバリバリ仕事をしている=子どもが我慢しているとか、子どもの犠牲の上に成り立っていることだと、まだまだ言われがちだと思います。だからテレビも「ごめんね」って言いながら働く母の姿は映すけど、仕事に打ち込む一人の女性としての姿は積極的には放送してこなかった部分も少なからずあると思う。でも今回、ゴールデンで流してもらえて、共感してくれるDMもいっぱい来ました! と、感動していたところ、後日おじさま数人に「すごかったね! でも、子どもたち寂しかったでしょ」と言われ、やっぱりずっこけたのですが(笑)。もちろん悪気はないんですけど、う〜ん、まだまだ伝わりきるのには時間がかかるのかな、と思っちゃいました。子どもや私生活についてではないインタビューでも、「お母さんであり、タレントでもあるSHELLYさんですが」という枕詞を言われると、お母さんであることを伝えるのがこの仕事や現場に必要?と思ってしまうこともある。男性には、「お父さんでありタレントでもあるわけですが」とはあまり言わないだろうし、お子さんのいる男性が「週末は釣りに出かけてて」と番組で発言しても、誰も「その間お子さんは何を?」とは聞かないのがまだまだ常です。
それでも、ちょっとずつ現場も変わってきていると感じています。「コロッケは作るものじゃなくて買うものだ」と言っても、昔は編集でカットされていたのが最近は使われることが多くて、テレビ局も「この発言には共感する層がいる!」(皆さんのことだと勝手に思ってます)とやっと気づいてくれたのかもしれません。まだまだ草の根運動、続けていきます!
◉SHELLY|シェリー
1984年生まれ、神奈川県出身。14歳でモデルとしてデビュー以後、タレント、MCとして幅広く活躍。5歳と3歳の娘の母。
撮影/須藤敬一 取材・文/有馬美穂 編集/羽城麻子
*VERY2021年12月号「シェリーの「これってママギャップ?」」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。