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トランスジェンダーの我が子が幸せになるためにできること【西原さつきさんインタビュー】

平成で大きく変わったことの一つに、LGBTQへの関心や理解の広がりがあります。その中でも心と体の性が異なるのが“トランスジェンダー”。今回のインタビュアーは、そんなお子さんを持つ一人のママです。彼らが他の子どもたちと同じ幸せな未来を描くために、周りにいる大人ができることとは……? NHKドラマ「女子的生活」で志尊 淳さんの演技指導を務めた西原さつきさんに伺いました。ぜひ我が子のことのような気持ちで読んでみてください。

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——9歳になる我が子は、おそらく体は男性、心は女性のトランスジェンダー。大好きなワンピースやスカートは「家の中限定」で着せています。幼い今は家族さえ認めていれば、世の中とはうまく共存しながら成長できています。

素敵な考え方ですね。9歳の時点でお母さんに認めてもらえるなんて理想! 周囲に何か言われても、親が自分を受け入れてくれているだけで、自信を持って生きられますから。私は小さい頃から男の子の遊びよりぬいぐるみや歌ったり踊ったりすることが好きでした。小学生になると、中性的で仕草が女の子っぽいとも言われていました。男の子ならスポーツができる、女の子ならオシャレで可愛いなど自己表現の場を見つけていくものですが、中性的な私は……と考えた時“真面目な人”は性別関係なく好かれると思い、学級委員をやってみたんです。すると意外とアイデンティティを保つことができて居心地がよかったので、そのまま突き進んで6年生の時に生徒会長になりました」

——幼い頃から居場所を考えて見つけてきたのですね。トランスジェンダーという“性”を確信できたのはいつですか?

成長するにつれ次第に自分の男の子像がみんなと違う、さらには自分の性の違和感にも気づき始めただただ戸惑っていました。当時はトランスジェンダーという言葉すら聞いたこともなく、知られているのはテレビの中の“オカマ”くらい。そして中学生の頃、『3年B組金八先生』で上戸彩さんが演じた“性同一性障害”の役を見て『これだ!』と確信したんです。モヤモヤしていた気持ちがやっと晴れて、自分のことを整理できました。けれども末っ子長男として生まれた私を母は男として育てたい気持ちもわかっていたので、家族にはなかなか切り出すことができませんでした」

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◉西原さつきさん:男性として生まれるも、幼少期から自身の性別に違和感を持ち、16歳よりホルモ ン治療を開始。大学卒業後は女性として広告代理店に就職し、26歳で性適合手術を受ける。現在は同じ境遇の人たちを支援する「乙女塾」を開校。昨年はトランスジェンダーを描いたNHKドラマ「女子的生活」で演技指導にも抜擢。

身体が変わる思春期が
ターニングポイント

——思春期にひどく落ち込んだそうですね。

はい、人生の中で一番暗く、落ち込みました。トランスジェンダーにとって、体形が変わり男性・女性がはっきりする思春期は辛いんです。身長が伸び、ニキビ、ヒゲ……、可愛くなりたいと思い描くものからどんどん離れていくわけですから。学ランも嫌で嫌でしょうがなかった。服ってすごく気持ちを左右するんです。成績もガタ落ち。周りが将来の夢をCAだ、弁護士だと言う中、私の女の子になりたいという夢は勉強しても叶わない、と絶望したんです。その頃2チャンネルの掲示板で、女性ホルモンを打つ治療を知り、親に内緒で病院に通い始めました。女性が更年期障害で使う治療薬と同じで、高校生のバイト代でもできる値段です」

——今後考えるかもしれないホルモン治療について教えてください。ストレスはありますか?

まず副作用は女性の生理中にある、頭痛やイライラと同じ程度と言われることがあります。女性ホルモンの切れ始めや、打ち始めの頃に出る症状です。治療を始めるのは体の変化が現れ始める14歳前後だと成長を止めることができ、男性的な特徴が少なく済むそうです。ただ一度ホルモン治療を始めると2週間~少なくとも1カ月に一度、一生続けなくてはいけないのです。やめると反動で男性化が一気にくることも。それをきちんと本人が理解したうえで始めることが大切です。現代には4つの性があると言われています。①生まれた時の体の性、②心の性、③好きになる相手の性、④ふるまう性。私の場合は②と④は女性だと確信できたので早く決断できましたが、いずれかの性が違った場合、やみくもに始めてしまうと後から後悔することにもなりかねません。また、子どもを作ることができなくなるので、ホルモン治療をあえてしない人もいます。でもそんな大事な決断を、10代半ばではなかなかできないですよね」

——うちの子も見た目が男の子として生きたくないと思っていると思いますが、心の性が途中で変わる場合もありますか?

これは私の実感にすぎませんがゲイ雑誌を読んだからゲイになるのではなく、ゲイだから読むのと同じように、女の子になりたいのも誰かへの憧れや影響からではない。初めからそういうものを持って生まれたんだと思います。役割や肩書がない幼少期ほど素直に生きていると思います」

——色々な選択肢を教えたうえで「あなたの好きなように生きて。でも悩んだら相談してね」というスタンスがよさそうですね。

「最高です! 自分を認めてもらえる、自分が好きに選んでいいと思えることは幸せです。親子で同じ性を持つ人のコミュニティに参加していろんな生き方を知ることもいいですね。私はホルモン治療を始めた高校生の途中で『大学に行こう』と思い再び猛勉強しました。この性は水商売などがデフォルメされがちですが、他の選択肢も見たいと思ったんです。制服のない大学では中性的なファッションがなかなか好評(笑)。就職活動は名前と性別は男性、服装は女性で行い、地元の広告代理店に採用されました。初めて女性と認められた職場で幸せでした。性適合手術を受ける時、家族に女性として生きていきたい気持ちを明かすと、父と姉はすんなり受け入れ、父は『よく決心した!』と喜んでくれたほど。母だけは『男性として生きたほうが、この先傷つかないんじゃないか』と最後まで反対でした。後に男でいた頃よりも明るくなった私を見て、『よかったね』と初めて応援してくれたのでとても自信になりました。(女性名への)改名手続きも、母の賛成があったからスムーズに認められました」

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◉Y・Kさん:3人兄弟の次男として生まれた息子の様子を見て、トランスジェンダーではないかと考え始める。現在は男の子として小学校に通いながら、家庭の中では本人の気持ち と向き合いながら子育て中。今後訪れる思春期が課題だそう。

トランスジェンダーが
個性と認められる社会に

——(編集部からの質問)家族以外の周りにいる大人はどんなふうに接するのがよいのでしょうか?

「無理に女の子らしいと気を使って褒められても居心地が悪いし、服装が変わったくらいで見る目を変えないでほしい。それよりも『もっと中身を見て!』って思います。“頭がいい子” “明るい子”と同じように“性別がユニークな子”みたいな一人の個性として受け止めてもらえると居心地がいいです。トランスジェンダーの子たちに『言われて一番嫌だった言葉は?』と聞くと一番多いのが“普通”でした。『普通は……』とマスの価値観を言われると一番辛いのです。完全に女性として振り切った子はまだよくて、見た目で判断しがちな日本では、思い切れない子たちが一番辛いと思います」

——私自身も小さい頃はボーイッシュな見た目を言われたこともあり、当時から色々な人がいていいじゃない、と思っていました。

「そのスタイルが本当に理想で完成形です。価値観が徐々に柔軟にはなっているとはいえ、テレビを見ていると“楽しいオカマ”をキャラ化しているか“性同一性障害の辛い悲劇”など、作り上げられていると感じることもあります。かたや海外では、パリコレのランウェイを歩くモデルとして活躍していたり、私自身、タイでトランスのミスコンに出場し、トランスが武器になるという価値観を知って勇気をもらいました。生まれ持った性通りに成長したほうが生きやすい世の中ですが、何よりもご両親がありのままを認め、トランスジェンダーも一つの個性として自然に受け入れてくれる社会になることを祈っています」

 

撮影/相馬慎之介 ヘア・メーク/久保フユミ〈ROI〉 取材・文/鍋嶋まどか 編集/磯野文子

*VERY2019年6月号「子どものセクシャリティをもっと深く知りたい トランスジェンダーの我が子が幸せになるためにできること」より。
*掲載中の情報は、誌面掲載時のものです。

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