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辻村深月さん「『ドラえもん』がいなければ作家になっていることはまずなかった」

『映画ドラえもん のび太の月面探査記』(3月1日東宝系全国ロードショー)
脚本担当・辻村深月さんインタビュー

「『ドラえもん』がいなければ、
今と同じ形で
作家になっていることは
まずなかったと思います」

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Q.辻村さんはデビュー当時ドラえもんへのオマージュ作『凍りのくじら』で第27回吉川英治文学新人賞の候補になりました。今回、脚本を担当されることになったのには、そのこともきっかけのひとつなのでしょうか?

文学賞の候補はあまり関係ないかもしれないのですが、『凍りのくじら』を書いたことで藤子・F・不二雄先生の事務所である藤子プロさんとご縁ができました。この話は、章タイトル名が全部『ドラえもん』のひみつ道具になっていて、主人公の女子高生も『ドラえもん』が大好きという設定。
この小説を書いたことをきっかけに、藤子プロさんに仕事で取材に行かせてもらったり、皆さんとお話するようになっていって、今から六年ほど前に「映画の脚本を書いてみませんか?」と最初に声をかけてもらいました。

 

Q.辻村さんにとってドラえもんシリーズとは? もしドラえもんがいなかったら作家にならなかったとまでおっしゃってますが。

この記事を読んでくださってる皆さんもそうかもしれないですが、私は、自分の子供時代の思い出の多くが、『ドラえもん』と結びついています。
私は映画ドラえもんの第一作『のび太の恐竜』が作られた1980年生まれで、映画ドラえもんとは同じ年なんです。物心ついた時には『ドラえもん』はマンガもアニメもものすごく身近な存在で、繰り返し観ること、読むことで影響を受けてきました。『ドラえもん』の映画って、どれも不思議な世界を扱いながら、巧妙な伏線が後に回収されるミステリ的な構造をしているんです。
私が今、ミステリ作家と呼ばれているのは、『映画ドラえもん』がお手本になっているからだと思います。『ドラえもん』がいなければ、今と同じ形で作家になっていることはまずなかったと思います。

 

Q.「かがみの狐城」の鏡はやはり「どこでもドア」ですか?

そう言っていただけるととても嬉しいです!
鏡の向こうに世界がある、という考え方は、私が『ドラえもん』ファンだったからこそ、違和感なく出てきた設定であると同時に、実は、この話が本屋大賞をいただいたり、みんなに広く読んでもらえたのは、読者の側も、『ドラえもん』の影響でこの設定に抵抗がなかったからだったんじゃないかと思っているんです。ここでも『ドラえもん』には本当に感謝ですね。

 

Q.今回脚本を担当されることになってプレッシャーなどはありましたか?

実は、あまりにプレッシャーだったので、最初にお話をいただいた時にはお断りをしたんです。自分が書くのはあまりにもおこがましいという思いと、きっと仕事として内部から関わってしまうと、『ドラえもん』をただ好きなだけではいられなくなってしまうだろうな、と。
けれど、お断りしてからも、藤子プロさんが大事に私と関係を続けてきてくださる中で、これまでの映画を作ってきたスタッフの皆さんとお話をする機会をいただいて。毎春の『映画ドラえもん』って、まるで春の風物詩のようで、私たちファンはあるのが当たり前のものに思ってしまいますが、実はそれって決して『当たり前』のものではなくて、大事に一年一年、藤子先生の原作をつないできてくださった方たちがいたからこそなんですよね。

そう考えた時に、脚本の依頼は、その皆さんがつないできたバトンを、次の一年に向けて受け取ってほしいということなんだと自然と理解できて、お受けする覚悟ができました。
プレッシャーは今もありますが、藤子先生が楽しんで描かれてきたものを、私も楽しんで書きたい、届けたいと、思えるようになりました。

 

Q.舞台に月の裏側を選ばれたのはなぜですか?

これまでの38作までの映画の中で、ドラえもんたちはありとあらゆる場所に冒険に行っているので、冒険に行っていない場所がほとんどないんです。そんな中で、「月」だけが手つかずの場所でした。
もともと、冒険に行くのなら、子どもたちに身近に感じてもらえる場所に行きたい、と思っていたので、それにも月は理想的でした。身近な天体である分、科学的にわかっていることも多いので、舞台にするのは大変でしたが、映画ドラえもんシリーズで一度きりになるであろう月面着陸を、今年させてもらえたことをとても光栄に思っています。
たまたまなのですが、今年はアポロ11号の月面着陸50周年。そのことにも不思議なご縁を感じていて、藤子先生にそう導いてもらったような気すら、勝手にしています(笑)。

 

Q.辻村さんのお子さんもドラえもんが好きですか?

大好きです。
脚本を引き受けて執筆してから今日まで、『ドラえもん』を大好きな七歳児の成長を傍らに見てこられたのは、とても幸せなことでした。毎週金曜日のテレビ放映や、毎年の映画をどんな気持ちでどれだけ楽しみにしているのか、それをずっと横に見ながら書いてこられたので。

 

Q.ドラえもんで辻村さんがいちばん好きなエピソードは?(私=質問者は「台風のフー子」ですが)

選びきれないのですが、ひとつだけなら『ドラえもんに休日を』。
のび太がドラえもんにお休みをあげようとする話なんですが、この話のジャイアンやスネ夫もすごくいい!! 大好きです。(フー子もいいですよね!!)

 

Q.完成した「月面探査記」をご覧になってお気に入りのシーン、オススメのポイントなど、教えてください。

物語の中盤、のび太たちが冒険の旅に出る決意と覚悟を試されるシーンがあります。そこは、ひょっとすると、今のび太たちと同世代の子供たちより、大人の方が、グッとくるかもしれないです。
少年少女時代に、親にも黙って何かを決意した日が、きっと誰にでもあるはず。そんなことを思い出しながら、観てもらえたら嬉しいです。
他にも見どころたくさんあるので、どうぞ皆さん、劇場で楽しんでくださいね!

◉あらすじ

月面探査機が捉えた白い影が大ニュースに。のび太はそれを「月のウサギだ!」と主張するが、みんなから笑われてしまう…。そこでドラえもんのひみつ道具<異説クラブメンバーズバッジ>を使って月の裏側にウサギ王国を作ることに。そんなある日、不思議な少年・ルカが転校してきて、のび太たちと一緒にウサギ王国に行くことに。そこでのび太は偶然エスパルという不思議な力を持った子どもたちと出会う。
すっかり仲良くなったドラえもんたちとエスパルの前に謎の宇宙船が現れる。エスパルはみんな捕えられ、ドラえもんたちを助けるためにルカも捕まってしまう!はたしてのび太たちはルカを助けることができるのか!?

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© 藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2019

辻村深月
1980年生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』でデビュー。12年『鏡のない夢を見る』で直木賞、18年『かがみの狐城』で本屋大賞第1位。「VERY」では2014~16年『クローバーナイト』連載。映画の書下ろし小説は小学館から発売中。

取材/フォレスト・ガンプJr.

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