子どもの未来のために!知っておきたい「水素エネルギー」
サスティナママの基礎知識
水素エネルギーは、次世代エネルギーとして注目されるエネルギーのひとつです。聞いたことはあるけれど、水素エネルギーってなんなの?安全なの? どうやって私たちの生活に取り入れるの? 水素エネルギーと未来の関係は? 優木まおみさんと一緒に、子どもたちが生きる将来のために、私たちに今何ができるのか?を考えました。
知りたい人 優木まおみさん
VERYをはじめとする女性誌でのモデルやテレビ番組のMCなど幅広く活動するマルチタレント。東京学芸大学卒業で、教員免許も保有。また最近ではピラティスのインストラクター資格を取るなど多方面で活躍。プライベートでは2児の母。
松本先生(以下敬称略)
優木さんは、水素エネルギーってご存知でしたか?
優木さん(以下敬称略)
最近CMなどで拝見することも増えましたが、正直身近なエネルギーという感覚はまだないです。
松本
水素エネルギーは次世代エネルギーとして注目されているエネルギーなのですが、優木さんはお子さんがいらっしゃるから、人一倍SDGsにはご関心があるのではないでしょうか。
優木
SDGs については、ここ一年くらい、テレビや雑誌などから情報が入るようになり、個人レベルでできることなども意識し始めるようになりました。
松本
水素エネルギーは、SDGsの掲げる、【目標7】「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」【目標13】「気候変動に具体的な対策を」に貢献するエネルギーです。従来の石油や石炭などのエネルギーとは異なり、水素は燃焼させても二酸化炭素を全く出さない「究極のクリーンエネルギー」。水素は、その名の通り「水の素」であり、水(H2O)に代表されるように他の元素と結び付き、あらゆる種類の化合物として地球上に豊富に存在します。水素を作る手段は多岐にわたり、水を電気分解して水素を取り出すこともできるため、ほぼ無限に作り出すことができ、国内生産も可能です。一般に、電気は「貯めておく」ことができませんが、水素は液体にすることで長期間にわたり「貯められる」うえ、さらに「運べる」ので、より効率的なエネルギー活用ができるんです。
1. カーボンニュートラル
温室効果ガス排出量ゼロ
2. サスティナブル
水素はほぼ無限にある
3. ポータブル
貯められる、運べる
水素は究極のクリーンエネルギー!
水素エネルギーを普及させていくことが
未来を変えるカギ
(松本先生)
教えてくれる人 松本真由美先生
東京大学教養学部付属教養教育高度化機構環境エネルギー科学特別部門客員准教授。専門は、科学コミュニケーション、環境・エネルギー政策論。研究テーマは「エネルギーと地域社会」「環境・エネルギー政策の国際比較」等、環境とエネルギーの視点から持続可能な社会のあり方を追求。
優木
こう聞くと利点しかないので、とても高額なんじゃないか?とか、危険なんじゃないか?など、何か問題があるのではないかと疑ってしまいます。
松本
確かに現段階でのコストは、天然ガスなど化石燃料と比べて割高ですが、水素は二次エネルギーで熱や電気として利用することができるので、産業や住宅、運輸など様々な用途で活用できます。将来的に普及が拡がることによりコストダウンが期待できます。
優木
そもそも水素エネルギーってどうやって作られるのですか?
松本
水素の製造は、何通りかの方法がありますが主に「天然ガスや石油を分解して取り出す」「石炭を燃焼しガス化して取り出す」「水を電気分解して取り出す」の3種類あります。今世界で作られている水素のほとんどは天然ガスや石油由来ですが、この方法ではどうしてもCO2 が発生してしまいます。最近は太陽光発電などの再生可能エネルギーを最大限活用して水を分解し、クリーンな水素を作る技術の開発が進められています。
松本
水素は都市ガスなどと同様、正しく管理すれば安全なエネルギーです。 さまざまな研究を元に「(1)漏らさない」、万が一漏れた場合に備え、「(2)検知する」、「(3)漏れてしまった水素を溜めない」の3段階の対策があらゆる設備・施設の設計プロセスに組み込まれています。
まだスタートラインについたばかりですが実はもう、始まっています!
松本
実は、すでにいろいろなところで利用されているんです。エネファームはご存知ですか? 都市ガスやLPガスから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を作り出す家庭用燃料電池ですが、このとき発生する熱でお湯を沸かし、給湯などに利用できるので、非常にエネルギー効率が高いんです。
優木
聞いたことがある程度ですが知っていました。とても興味はあります。
都市ガスから取り出した水素を利用して電気や熱を作る燃料電池。世界に先駆け日本では2009年より実用化。
松本
そのほか、身近なものでいうと公共の路線バスは乗られたことのある方も多いはずです。水素で走るバスは全国に104台ありそのうち東京都で87台が走っています。排出されるのは水だけなので、とてもクリーンですよね。あとは乗用車(FCV =燃料電池自動車:トヨタ自動車「MIRAI」など)、商用車(燃料電池で走る小型トラック、大型トラックなど)、コンサートのイベント電源、商業施設・競技場施設・ホテル施設の電源、さらには街全体のエネルギー源としての活用などがあります。また、鉄道、ドローン、船舶の動力源としても開発が進められています。
2018年から都営バス丸の内~ビッグサイト間に、その後民営各社でも導入開始。側面に「FUEL CELL BUS」「H2」の表示が。
優木
私たちも、知らず知らずのうちに、すでに利用しているんですね。バスなんて特に見た目もかっこいいから男の子とか乗りたがりそう。これからもますます増えていきそうですね。水素エネルギーは、気候変動やエネルギー問題の解決に向けた切り札のひとつとのことですが、私も子どもを持つ親なので、やはり気候変動、未来の地球環境は気になります。この先温暖化が進むとどうなるのですか?
松本
実は、2100年には、平均気温が(1986~2005年に比べて)最大4.8℃も上昇するという予測もあります。地球の平均気温が上昇することにより異常気象の発生や地域の気候特性の変化、海水面の上昇、生態系の変化など、さまざまな悪影響をもたらします。また、それに伴い食糧生産や水資源の枯渇、健康被害、経済格差の拡大など、私たちの暮らしに直結する問題も生じてしまうんです。
優木
2100年だと今の子どもたちが生きているかもしれないですよね。ぜひ私たちの力で食い止めたいですね。
電気自動車も普及し始めている現在、競合するのではなく、共存を目指す。
松本
そこで今言われているのが〝カーボンニュートラル〟です。
優木
最近よく耳にしますが、具体的にどういう意味なのですか?
松本
温室効果ガスの大気中への排出を全体としてゼロ(排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにすること)にするという意味です。2050 年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指すことで、地球の平均気温の上昇をある程度抑えることができると言われています。ちなみに温室効果ガスの76%は二酸化炭素です。
優木
そうなんですか!そうなるとやはり、二酸化炭素を全く出さない「究極のクリーンエネルギー」と言われる水素エネルギーの普及、水素社会の実現が必須と感じますね。
子どもたちに明るい未来を残したいから……
今できることを少しずつ始めたい
(優木さん)
子どもたちが社会の主役になる2050年の未来に、クリーンな地球環境を届けたい
優木
今、私たちが水素社会を実現するためにすべきことってなんですか?
松本
みなさんが水素エネルギーに関心を持っていただくことがいちばん大切です。例えば、新型エネファームは災害対策機能を搭載していて、停電時もエネファームからの電力を一週間ほど利用でき、お湯やシャワーなどを使うことができます。また、いちばん身近なところでは、水素で走る公共路線バスをご利用いただくことも水素社会への参加になりますよ。
優木
自分が水素エネルギーを選ぶことが難しくても、水素エネルギーを使っている企業を応援しようという一歩は踏み出しやすいかもしれないですね。子どもたちのためにも〝カーボンニュートラル〟を実現したいけれど、私たちにできることはまだないのでは?と思っていました。でも今日のお話を聞いて、一人一人の意識を高めることによって協力できる気がしてきました。
松本
水素エネルギーは次世代エネルギーとして世界的に期待されていますので、少しでも多くの方に知っていただき、少しずつでも利用していただきたいと思っています。
NEDOや東芝エネルギーシステムズらが福島県浪江町に建設した、再生可能エネルギーを利用する世界最大級の水素製造装置を備えた研究施設。
優木
ここ数年で、プラのストローから紙ストローに置き換わったり、みんながエコバッグを持ち歩くようになったのと同じように、もう少し水素エネルギーがメジャーになれば、意識が変わるのも早いかもしれませんね。そして私たち一人一人の少しずつの意識が大きなパワーになるはず。「水素エネルギーが普通」という未来が来ることで、もっともっとその動きが加速すると思います。
松本
そうですね。私たちの今の行動が、未来の地球環境を左右しているということを忘れないでほしいです。
優木
子どもたちのために、明るい未来を残してあげたいと切実に思いました。今私たちの力でよりよい未来に変えるというよりも、まずは四季を感じたり、雪で遊んだり、海や山で遊んだりというような普通の楽しい日々が続くような未来を残していきたいです。そんな私の姿を見せることで、子どもたちにもその意識が伝わるはずなので、さらなる先の未来も変えていくことを願っています。
お問合わせ先/国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
044-520-5261
https://www.nedo.go.jp/
【モデル着用】トップス¥25,300カーディガン¥35,200(ともにエブール/エブール GINZA SIX店)サスペンダー付きパンツ¥23,100(yori)ピアス¥5,400バングル¥7,560(ともにアビステ)
撮影/松永 望 スタイリング/石関靖子(優木さん) ヘア・メーク/川村友子 モデル/優木まおみ 取材・文/沼田珠実 デザイン/Permanent Yellow Orange