VERYライターの髙田翔子(38歳)です。6歳の男の子の母で、普段はインタビュー、読み物記事を担当しています。最近は、病気について考える記事を担当することが多かったのです。
たとえば、VERY4月号に掲載のエマ・大辻・ピックルスさんのインタビュー。日本にはストーマ(人工肛門)の利用者が約21万人いて、「オストメイト」と呼ばれています。現役医師であり、日本初のオストメイトモデル、一児の母であるエマさんの挑戦をぜひご覧いただきたいです。
>エマ・大辻・ピックルスさんのインタビューさんのインタビューはこちら
「人工肛門になっても人生は輝く」日本初のオストメイトモデル・エマさんの挑戦
また20年12月号では、コミックエッセイ『末期ガンでも元気です』の著者ひるなまさんにお話を伺いました。ひるなまさんは私と同世代。夫婦二人暮らしで、漫画家の仕事が軌道に乗り始めた矢先、ガンが発覚しました。ご自身は「健診や人間ドッグも受けていたし、たばこは吸わない。プールが好きで、食事は薄味派」と比較的健康な生活を送っていたそう。大腸には痛覚がないため、ガン自体の自覚症状はないまま、大腸がんステージIV(末期ガン)と宣告されたそうです。
痛みに弱い私…でも検査しようと決意
お話を伺ったことをきっかけに、ずっと、怖い、痛そう……と避けていた「大腸内視鏡検査」に行ってきました。私は、子宮体がん検査で意識を失いそうになったり、街中で人とぶつかっただけで失神し、何度か救急搬送されるなどとにかく痛みに弱いタイプです。30代の健診や人間ドッグでは大腸内視鏡は必須でなく、大腸がん検査は検便による便潜血検査が一般的のよう。「大腸内視鏡検査は準備が大変」「激痛だった」という話も聞くし、40代まではやらなくていいかなとも思いましたが、ここで一度きちんと調べておこうと思ったのです。
前日は下剤を飲んで準備
検査の一週間ほど前から、食べ物に気を付けるように指示があります。消化しづらい繊維質のごぼうや豆類は食べないように注意。前日は早めに夕食を済ませ、下剤を飲んで就寝しました。検査当日はコロナでさまざまなイベントが中止となった息子の保育園で急遽予定になかった卒園遠足が行われることになり、朝からお弁当を作り集合時間ギリギリに病院に到着しました。検査会場には、一緒に検査するお二人のマダムがすでに到着。二人とも大腸内視鏡経験者だったので、非常に心強いです。
Fさん(仮名)「私は怖いから、先生にとにかく薬で眠らせてください!ってお願いしたの。だから検査中は意識がないまま」
Mさん(仮名)「それじゃ検査中のモニターが見られないじゃない。私は腸の中を自分の目で確認したい」
検査にあたって鎮静剤を利用するかどうかも人それぞれのようです。
Fさん「コロナ以前はみんなでおしゃべりしたり、すっかり仲良くなって検査後にお茶しに行った人もいたのよ~」
気さくなお二人の話を聞いていたら、ほんの少しリラックスできました。
ひたすら下剤を飲みトイレへ
自宅で下剤を飲み終えてから来院する病院もありますが、この病院では会場で下剤を飲みます。15分おきに350ミリリットルずつ服用。薄めたスポーツドリンクのような独特の味です。飲めないことはない。けれど飲みやすい味ではない。ようやっと飲み終わると次の時間がきてしまいます。お腹はたぷたぷになりました。便の中に固形物がなくなるまでひたすらこの「飲む」→トイレに行く、を繰り返します。排便を促すため、下剤以外になるべくたくさん水やお茶を飲み、館内を歩くなど運動するように指示されます。この病院の歴史は古く、本館は昭和初期の建物なので各所に当時の意匠が残されています。このタイミングで売店に行き検査用のパンツも購入。男女兼用のトランクスタイプでおしりのところに穴が開いているものです。
ついに検査開始。「怖いです!」と本音が…
ようやく、排便の目標回数をクリアした後、ワンピース型の検査着に着替え検査室へ行きました。ここで例の検査パンツの上に、不織布でできた白ズボンをはきます。なんとも珍妙な恰好で検査台へ。予約の段階で伝えていたものの再度、「とにかく、痛みに弱いので鎮静剤を入れてください!」と言ったところ、看護師さんに、「途中までは鎮静剤は入りません。肛門から管を入れた後、体の向きが変わった段階で入れますね」
(知らなかった‥!!)
息子の出産のとき、無痛分娩希望だったのに結局麻酔が間に合わず、普通分娩になってしまったのですが、そのときに次ぐ絶望感。とても怖い! とはいえ、もはや逃げ出すわけにもいきません。ついに検査が始まったのでした。
あれ、痛くないかも?
検査が始まって気づいたのは、「あんまりというか、全然痛くない?」ということ。腸に管が入っていくのでお腹を押されてる圧迫感はあるものの痛みは感じません。ついに態勢を変えるように指示がありました。前に人間ドッグで胃カメラの検査を受けたときは鎮静剤で眠ることができたので、気づいたときには終わっていた!のです。あの感じで記憶がないまま検査が終わったらいいなあ。ようやく鎮静剤を打たれ、だんだん意識が遠のく……はずなのですが目をつぶってもいっこうに意識はなくならず‥えーと、もう少し経てばウトウトするのかな。上のモニターには、私の腸らしきものが写っているけど……それよりも寝たい、今すぐ‥と思っているうちに検査自体が終わっていました! 思ったより短い。「痛くなかったです。でも眠れなかったです」と伝えると、看護師さんに「あらー。もしかしてアルコールに強いタイプ?」と言われました。……お酒は確かに飲むけれど、それだと鎮静剤が効きづらいのでしょうか?
検査を受けてよかった!
検査後は、腸からすでに管を抜いているのに生理中のような下腹部がずーんと重い感じが消えません。看護師さんによると、「お腹に空気を入れながら検査しているので、ガスが出れば楽になりますよ」「物忘れをしたり記憶が飛ぶこともあるけれど、一晩寝れば治りますから」とのこと。確かにこの日、夫から朝、伝言で言われたことをさっそく忘れていました! 薬のせいかわからないけれど。朝9時に病院に入り、検査終了は15時頃。朝から何も食べていないので、お店に入るものの食欲がまったくなく、ほんの少ししか食べられず。食事中にも少しふらふらと貧血っぽくなり、少し店で休んでどうにか家に帰りました。検査当日はゆったりめのスケジュールのほうがよさそうです。この後、子どもの迎えや小児科への通院もあってちょっとしんどかったです。お腹の張りとふらふら感は一晩寝たらだいぶましに。完全に治ったのは私の場合、翌々日くらいでした。
受診するまでは、一般の健診で異常がなくても、もしかしたら……という不安感がずっとつきまとっていました。詳しい検査結果を聞くのは、数週間後ですし、検査だけですべての病気が発見されるとは限りません。でも、気がかりが減らせたのはよかったです。痛みのあるなしは、その人の腸の形や受診した病院によっても違うようですが、私の場合は想像したような痛みはまったくありませんでした。機会があれば早いうちから検査を受けておくことをおすすめします!
取材・文/髙田翔子
※検査については個人の所感であり、絶対に全員が痛くないというわけではありません。
参考図書
『末期ガンでも元気です』
ひるなま 著(POLARIS COMICS)