VERY October 2021
VERY NAVY

VERY

October 2021

2021年9月7日発売

890円(税込)

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コロナ禍の今こそ備えておく“執着しない”“離れる”受け流し力

このコロナ禍で「親に、こんなときに保育園に預けるの?と言われた」「同僚の無神経な言葉にイライラ」「みんなが自粛中に仕事に行く罪悪感」…。いろいろな価値観がいつも以上に交錯し、人付き合いに悩んだママも多かったステイホーム期間。心理学者で上級教育カウンセラーである諸富祥彦先生曰く、そんな心のモヤモヤの対処には“執着しない” “離れる”「受け流し力」が有効。新型コロナウイルスが人に与えた心理的な影響や、ウィズコロナ時代を生き抜く心構えなどについて伺いました。

 

 

――コロナウイルスの影響で、世の中が大きく変わったことでメンタル面にはどのような影響が出ているのでしょうか。

 

孤独に強く家にこもりたい傾向の強い人の中には、休校や在宅勤務で大っぴらに一人の時間を作れてほっとしたという人もいるのです。不登校の子どもたちもその傾向にありました。緊急事態宣言解除後は、学校が再開したり、リモートワークから通常業務に戻ることで、突然オンになったりオフになったりする環境に振り回され、適応できない人も出てきています。

 

 

――そのなかで、自分と違う意見に振り回されることも少なくないようです。その場では相手の意見を否定せず、波風を立てないようにふるまっても、内心モヤモヤがたまっていることもあるかもしれません。上手に受け流す方法はありますか。

 

受け流せれば一番いいですよね。受け流すというのはどういう意味か。それは「執着しない」ということです。それはある意味瞑想的な思考で、「ああ、そう。そう思うんだ」と頭の中でただ受け止めて、流す。なかなか流せないな、と感じるならそれは自分に執着があるから。違う意見の人間と出会ったときにいちいち衝突していたら大変です。相手の意見を否定せず、いったんは受け入れる。お母さん方の対応は賢いと言えるでしょう。ではなぜ、心がモヤモヤするのか。「承認欲求」がこうした人間の苦しみの大半を作り出しているように思います。好かれよう、相手を変えようとしても「相手と過去は変えられない」のです。承認欲求自体は誰の心の中にもあるもので完全にゼロにする必要はありません。ただ、必要以上に好かれたい、認められたいという執着を手放す方法はあります。それは簡単なことで相手の目をきちんと見ながら、心の中でこっそりと「この人にどう思われてもかまわない」と何回も何回も唱えてください。「そんなことで?」とお思いになるかもしれませんが心のつぶやきが変わると人間はものの受け止め方が変わるのです。

 

 

――お母さんたちの中には休校や登園自粛で大変だったという方が多いです。

 

多くの皆さんがコロナの状況に応じて無理やり自分を適応させている状態でしたね。育児中の親御さんの中には、子どもと何時間一緒にいても苦にならないという人がいる一方、ある程度の時間、子どもと離れられるからどうにか育児が続けられるという人もいるのです。それは子どもの育てやすさとも関わっていてどちらが良い、正しいというわけではありません。ただ休校によって、突然、多くの方が子どもと強制的に24時間過ごすような生活になってしまいました。そのうえ仕事や家事もあるということは、毎日普段以上のストレスを強制的に浴びているということ。大切なのは「何とかして子どもと離れる時間を作ること」です。本当ならカフェに行ったり、カラオケで1時間シャウト系の曲を歌うのが一番いいです。ただ、今の状況ではそうもいかないでしょうから、イライラしたときは、トイレに5分間こもる。これだけでいい。「イライラしたらいったん相手と離れる」。子育てに限らず人間関係の基本です。

 

 

――今、VERY世代に知っておいてほしい心がけはありますか。

 

今後の状況しだいでは、再び緊急事態宣言が出たり、学校が休校になる可能性もゼロではありません。コロナの時期に限ったことではありませんが、大切なのは、「パーフェクトは目指さない」ということ。「私はあなたの期待にこたえるために生きているのではないし、あなたも私の期待にこたえるために生きているのではない」ということを肝に銘じてください。これは「ゲシュタルトの祈り」という心理学で有名な詩の一節です。「私は私、あなたはあなた」、今後もこの価値観を持ち続けることですね。

教えてくれたのは…
●諸富祥彦先生
明治大学文学部教授。教育学博士、臨床心理士、上級教育カウンセラー。筑波大学大学院博士課程修了。千葉大学助教授を経て現職。「悩める教師を支える会」代表、日本トランスパーソナル学会会長、日本カウンセリング学会理事。https//morotomi.net/

撮影/古本麻由未 取材・文/髙田翔子 構成/湯本紘子
*VERY2020年10月号「ママになったら「受け流し力」。」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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