VERY STORE
VERY June/July 2020
VERY NAVY

VERY

June/July 2020

2020年5月7日発売

890円(税込)

Premium VERY

CONNECT WITH VERY

パックン家のマネー教育がすごい!“1食100円生活”から金融インフルエンサーになるまで

身長184センチ。ハーバード大卒。都心住まい。愛用のバイクで颯爽と取材現場に現れたパックン。セレブと表現するしかないパックンですが、実は経済的に厳しいシングルマザー家庭で育ち、10歳のときから自分の口座を開き小切手を切っていた、その金銭感覚は筋金入り。子育ては趣味というより本業という、パックンのマネー教育とは。

*記事の内容は、VERY5月号取材当時(2020年3月2日)のものです

 

 

「1食100円」の生活から
「金融インフルエンサー」に

 

――パックンは8歳のときに、ご両親が離婚され、シングルマザーの経済的に厳しい家庭で育ち、1人1食100円以下だったとか。

 

パンとツナ缶にチーズをのせて。アメリカは酪農家への補助金が半端ないからチーズが安いんです。「アメリカンチーズ」という味のないやつ。当時、ひき肉の中で最安だったのは、ターキー。だから、僕らの家では、ハンバーガーを作るときは、七面鳥の肉にビーフ味のコンソメを足して、何とかビーフっぽくしてたんだけど、脂身が全然足りなくて一生懸命練っても全くまとまらない。ぱらぱらの「そぼろバーガー」みたいな感じ。
パスタとか、炭水化物は、基本的に茹でるか焼くか。お母さんは、時間がなかったからラザニアとかは作らなかった。塩もみとか、日本の和食の文化を支えるひと手間みたいなものはまったくなかったですよ。野菜も剥かないし。

 

――皮を剥かない。

 

リンゴも剥かない。素材を活かすのではなく、素材を食べる。そんな感じでした。

 

――10歳から新聞配達のアルバイトを始めて、小学生のうちから銀行口座を開いたそうで。

 

小切手も使い始めました。

 

――小学生が小切手。僕はこの年になっても、まだ使ったことがありません。

 

でしょうね。アメリカ人は今も使ってます。

 

――カードみたいな感覚ですか。

 

カードは機械が必要だし、個人同士では使えない。小切手は、相手がオーケーで、銀行が承認すれば、あなたとでもいますぐにでも使える。記録は残るし。自分の口座から直接引き落とされるから、利息も付かないし。僕は、めいっ子とかにクリスマスプレゼントを贈るときは、小切手をクリスマスカードに挟んで贈ります。

 

■人生ゲームみたいな授業

 

8年生(Eighth Grade=日本の中2)のとき、社会の勉強「ソーシャル・スタディーズ」で超面白い先生が、人生ゲームみたいな授業をしてくれました。全員一律の給料からスタートして、「はい。みんな、取りあえず自分が暮らしたい家の間取り図を書いてください」って言って、その面積を計算して。「じゃあこの面積で、どのエリアに住みたいかな? 中心に近いところはこれぐらい」って多分、先生が適当に決めてたと思うんだけど。

1週間が1カ月に相当して、「よーし。じゃあ、家賃を給料から、毎月引くようにしようね」って言って。光熱費も面積が大きければ高くなる。どのくらいになるか計算する。

「部屋には何置きたい? ソファ。どんなソファ? 革製にする?」「あ、ちょっと待って。給料から家賃引くと、ソファ買える額残ってないじゃん。どうする? 分割払いにするか。じゃあ、5年分割にしようか。月々これぐらい引かれるよ」という計算の仕方も教えてくれる。

そんなトピックを、毎週少しずつ足していって、車とか、家具とか、テレビとか、案外、給料飛んじゃうんだ、ということが分かりました。

 

――貴重な「お金の授業」だったんですね。

 

ある週の授業中に、「あっ。やばい。みんな、骨折したよ」って言って、「医療費どうする?」とか。「貯金額ゼロの人は、ソファを売ってください」みたいな。「えーっ」ってなって。貯金ゼロの恐怖も教えてもらったんですよ。

 

――備えが必要だと。

 

金銭的な情報、知識、ノウハウを教えるのも、アメリカでは教育のひとつなんですね。

 

――アメリカは医療費も保険料も高いし、保険もみんな入ってるわけではないから大変そうですね。

 

医療破産(Medical bankruptcy)という言葉があるくらい、アメリカの自己破産の6割以上が医療費関係。「LA Times」の調査によると、全体の9パーセントの人が、医療費のせいで自己破産したことがあると。

 

――10人に1人……。今回の大統領予備選でサンダース候補(※2020年3月2日取材当時)が国民皆保険も公約のひとつでしたが、そんなことできるんですか。

 

もちろんできる。結局、国民がお金をどこにどういう形で払うのか。直接、大学や病院に払うのか。それとも政府に払って、政府から大学と病院に分配されるのか。後者であれば、累進課税にすれば、ほとんどの人の負担額が減る。

例えば、一流の大学は、家庭の事情を考慮して学生が払う額を決める(ハーバードは家計の年収が1000万円以下なら学費無料)んだけど、病院は、全然考えてくれない。手術受けたら、収入ゼロの人も、10億円の人も同じ額が請求されます。だから皆保険にすれば、収入ゼロの人は、ほぼ無償で受けられて、10億円の人は、税金で100人分払ってくれることになる。

経済的にできるかという話であれば、できる。政治的にできるのかという話だったら、アメリカのいまの政治的な構造のせいでできない。でも、夢物語で片付けたくないです。「世界各国でやっている保険が、なぜアメリカでできないんだ」ということをサンダースは言ってるわけです。

 

――また、サンダース氏は「学費を無料に、学費ローンを帳消しにする」と公約に挙げ若者の熱狂的な支持を得ていました。日本では大学までの学費は親が払うケースが多いですが、アメリカでは学生が自分で払うのが普通。

 

日本は、生活費も親が払ってる。アメリカは基本的に18歳で巣立ちします。僕も、自分の子どもの学費は多分、払うことになりそうです。日本で育ってるから。

 

――パックンの母校・ハーバードは4年間でどれぐらいお金かかるんですか?

 

学費と生活費で合計約3000万円。でも、ハーバードだったら、これくらい払っても、後で必ず返ってくるから。

 

 

バブル崩壊後の日本へ

 

――ハーバードを卒業直後、なぜ、日本に? 

 

大学時代、日本にはバブルのイメージがあって、お金があるだろうと。当時、札束を竹やぶで拾ってる、みたいなニュースとかあって、よし、竹やぶで金探そうと!

 

――93年というのは、実際バブルは崩壊していたけど、なんとなく余韻が。

 

成田空港で税関を通った瞬間、バブルは崩壊しちゃったのです! 友達が文部省(当時)から派遣されて福井市の学校で英語の先生をやることになっていて、呼んでくれました。福井の英会話学校に就職して2年半、月々23万円くらいもらってました。

 

――日本語はすでに勉強済み?

 

ここが、罪悪感が湧き上がるところなんですけど、日本に来るまでまったく日本語を知らず、英会話講師で給料をもらいながら、生徒から日本語を教わった。悪徳商法! でも、生徒だけじゃなく、友達とか同僚とも、ひたすら日本語でしゃべって、それを全部メモってた。教科書は丸暗記。日本語教室に通ったことないです。

 

――現地調達。

 

漢字カード買っただけです。合計4500円の日本語力です。月給23 万円から、生活費と、大学の奨学金の返済。あと、中古バイクを15万円で買った。奨学金は2年で返済終了。

 

――早いですね。

 

僕は1食100円生活ができる男ですから。日本でもできる。一番貧乏な頃は、パン屋さんでパンの耳をタダでもらってた。ちょっと有名になってから、お礼を言いに行こうとしたら、つぶれてました。僕がパンの耳もらいすぎたからかなあ、とこれも罪悪感。

 

――返済が終わったところから、投資を始めた。

 

そう。本当に翌月から。当時は、96年くらいかなあ、ドットコムバブル。今考えれば、もっと我慢強く、広く投資しておけば良かったけど。2001年にドットコムバブルが崩壊したときに、紙切れになったから、売っちゃった。それ以後は、基本的にファンド。売り買いはしないと決めて、長期的に、老後に備えておく。唯一、売っていいのは、家を買うとか、もしくは緊急事態。

今回のウイルスショックでも、ぐっと下がってはいるけど、僕は毎日チェックしているわけではないから、今売ったりすると、また買い直すタイミングを見失うんじゃないかと思ってる。

 

――リスクも分散して。

 

がんがん分散。超分散型。外貨、ユーロ、元、円、ドル。地域分散。アメリカ、ヨーロッパ、日本、中国、そして発展途上国。で、インデックスファンド、不動産ファンド、インフラ系のファンドも持ってます。配当金は、基本的に再投資。

 

――ファンドをメインにしてから、失敗はない?

 

僕は投資家として、市場の原理を信じます。自分は信じない。「ウォール・ストリート・ジャーナル」や「日経新聞」は読んでるけど、僕の専門はお笑い。マーケットでの競争相手は誰かというと、毎日8時間以上、この業界で生きてる人。だから、個別の銘柄では勝負しない。ファンドというのは、勝ち組に投資して、負け組は消えていくけど、みんなが同時に消えることはない。あったとしても、また新陳代謝が起きて、マーケットが健康になる日が必ず来る。

マーケットが大きくなれば、僕の老後資金も大きくなる。欲張って成功してる人もいるけど、毎日何時間もマーケット情報や持っている個別銘柄を見続けて、一喜一憂したいとは思いません。年1回、確定申告の時期に確認するだけ。

 

――パックンは講演で『72の法則』をよく紹介されています。

 

これ大好きで、投資家の常識なんですけど。僕はそれこそ8年生の頃に教えてもらった。『72の法則』は、72 を利益率で割ると、投資額が倍増する年数が割り出せる。

 

――投資した金額が2倍になる期間は、72を年率で割ればわかる。株式の平均値上がり率が7%だとすると、72÷7で約10。複利で10年で2倍になる。実際、なんでみんなそうしないのですか?

 

しないように教えられてるから。でも、2、4、8……と、定期的に倍増するから、若いうちから始めて、複利を長期的に活かすのが一番。あと、日本のマーケットの成長率はあまり高くないから、外貨や外国のもので考えるべきです。

 

パックン家のマネー教育

 

――パックンはお子さんにお金のことを教えてますか?

 

子どもは基本的に何もわかってない。数年前に家を買ったとき、ある女性誌にスクープされました。学校で噂になって「おまえの家、高いんでしょ」って言われたらしく、「パパ、ここ、高いんでしょ」って聞いてくるんですよ。「まあそれなりに、お金かかったよ」。「いくらした?」って聞いてきて「いくらだと思う?」って逆に聞いたら、「うーん。1万?」って言ったの。全然わかってないんですよ。

 

――1万円。かわいい。

 

だから、スーパーでは「きょうはカゴに入れるものを、3000円以内に収めようね。ぱっと計算して! 一番下の数字は、四捨五入」という計算問題から始まって、「同じものでも、大きいパックで買うと安いときがあるね」とか。

「このカゴの中で、小さいのに高いもの、大きいのに安いものって何?」と子どもに質問します。パンは安いから100円台。キャビアはこんなに小っちゃいのに1000円台。「じゃあ、キャビアはなんでパンより高いのか考えようよ」「まずこの容器を見て。これに入れる技術が必要だよね。原産地はどこ? 何工程を挟んでここまできてる? それは誰でもできること?」

 

――スーパーで世の中のことを学ぶ。

 

パン作りは、君たちもやったことある。パン屋がもうかるんだったら、みんなパン屋始めようとするよね。だから、価格競争が激しい。キャビアが高く売れるからって、自分もキャビア屋さんやろうって言える? キャビアはチョウザメの卵でカスピ海でしか獲れない。こういうしつこい話を、反抗期が始まるまで、一生懸命やろうかな、と。

 

――お子さんは11歳と13歳。

 

ティーンエイジャー13歳から。今もあきれられながら続けてます。

 

――習い事は、やりたいと言ったものは全部やらせてあげているとか。

 

妹は、バスケ、クロスカントリー、ミュージカル、バレエ、チア、ギター、ピアノ。息子は、トランペット、オーケストラ、ピアノ、野球。他にもなんかに通ってるよ。

 

――ほぼ毎日。月謝も大変。

 

月謝袋は、本人に手渡しながら、金額の話もする。「頑張らないと、俺、払わないぞ」って。これは恐喝だけど。仕事から帰ったとき「君たちの生活費も、学費も稼いでるよ」と恩着せがましい言い方も、結構する。僕は10歳から、学費とか部活費を自分で払った。でも大学は、お母さんに協力してもらったし、実家のローン返済とか、光熱費をお母さんが払っていたことは、忘れたことはありません。

 

――日本で、子どもとお金の話をするのは、お小遣いの話くらいだと思います。アメリカは、お小遣いではなく、「お駄賃」が基本だとか。

 

「お皿洗ったら100円」みたいにその場で対価を渡す家庭もあれば、あなたの担当は週末の芝刈り、冬なら雪かき、みたいに一応ひも付いてる給料制も多い。でも、何もしなくても渡す家庭もあるし、必要なときに渡すっていう家庭もある。いろいろ。

 

――パックン家では?

 

うちは、奥さんが仕切っていて「必要なときに言って」と。でも、本はいくらでも買っていいよ、というのが僕のスタンスですね。本以外で欲しいものがあるなら、クリスマスかお誕生日まで待つか、稼いでもらうかどっちかです。

 

――日本では、仕事も最初にギャラを決めないで始まったりします。お金の話を切り出しにくいというか。アメリカではありえないですよね。

 

ありえない。契約社会なので。

 

――お金が汚いものっていう考えが。商人を、お金は持ってるけど身分は低い、とした士農工商の時代からのイメージの刷り込みが残っていて。

 

今これを読んでる人から考え方変えればいいんじゃないですか。自分の下の世代は、われわれが育てる。責任でもあるけど、チャンスでもある。お金をもっと自由に、気楽に考えられるように。自分の子どもが、将来何をするのかとか考えるときに、「いいねえ、ちょっと平均収入調べようか」とか、「成長性考えてみよう、給料が上がらなかったら、悲しくない?」。どういう暮らしをしたいのか、そのためにいくら必要か。

 

――8年生のときの授業みたいな話をする。パックンにとってお金とは?

 

パンの耳の生活に戻らないことです。僕はいま、いい生活をさせてもらってますが、贅沢はしない。高級車に乗らないし、家族旅行はしてもエコノミーで飛ぶし、洋服や時計も高いものは買いません。僕は常に節約・投資するタイプ。なぜかというと、心の中に、不安な少年が今も暮らしているから。電気代や家賃を払えるか、っていうあの不安な毎日に戻りたくない。子どもたちには、僕より余裕を持って、いい大学に行ったり、2、3年冒険してでも自分のやりたい仕事を見つけるまで応援したいんです。そのためには、僕からお金は借りていいことにしたい。甘やかしてるようだけど、後で必ず返してもらいます。金銭面でも、子どもを何でもできる人に育てたい。何もしなくてもいい人には絶対にしない。ちなみにこれはウォーレン・バフェットからパクった考え方です。

平成最後の家族の花見。

 

◉パックン
パトリック・ハーラン タレント、東京工業大学非常勤講師。1970年、アメリカ・コロラド州出身。ハーバード大学比較宗教学部卒業。93年来日。英会話講師を経て、97年に吉田眞氏とお笑いコンビ「パックンマックン」を結成。ボケ担当。NHK『英語でしゃべらナイト』でも人気に。最近では国際関係や金融関係の講演会も多い。13歳の長男と11歳の長女のパパ。

撮影/古本麻由未 取材・文・編集/フォレスト・ガンプJr.
*VERY2020年5月号「『1食100円』の生活から『金融インフルエンサー』に 実践!スーパーで始める『パックン家のマネー教育』」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

FEATURE

この記事もおすすめ