夫の誕生日、41歳。誕生日だからといって外でお祝いというのも今はできないので、普段通り過ごそうと思ったら友人が玄関先にケーキを置いていってくれてあり、泣いた。
30代後半に入ってから、互いの年齢が持つ意味が「見た目が若いかどうか」ではなく、体の中身が衰えつつあることとの向き合いに変わってきている。
そういえば子どもの頃「今、神様が3つお願いを叶えてくれるなら何?」って質問を兄弟とよく話していた。私の場合「金、めちゃくちゃ美人になりたい、冨樫義博先生の原画が欲しい」だったのだけど、大人になった今「暮らしていける金、新鮮な臓器に全とっかえ、地球上の子どもの平和」というふうに変わりました。特に肝臓……。しかし大人になっても「神様が3つお願いを叶えてくれるなら」と考えてしまうものですね。
41歳になった夫は昨日とは何も変わらないけれど、付き合った日から積み重ねた関係性は揺らぎながらも強固になってきた。「互いに愛情は惜しむものではない」という軸がいつのまにかできていたように思う。
夫がゴロリとリビングに寝転んでいる姿が目に入ると、その哀愁漂う背中に「ああ、生きてるんだなあ」としみじみする。夫も私を「ああ、生きてるな」としみじみしてたりするんだろうか。
そういえば夫を好きになったきっかけは彼が書いた文章から匂い立つペーソスだったなとしみじみ思い出した。
———ご主人と3歳の娘さんとの「おこもり」な日常、子育てや仕事の悩み、みんなにシェアしたいこと……を犬山さんが「ほぼ(隔)日」でアップ!
匂い立つペーソス……お花ではなく。
◉犬山紙子
エッセイスト。1981年、大阪府生まれ。14年、ベーシストの劔樹人氏と結婚。17年、女児誕生。著書多数。『スッキリ』等、テレビのコメンテーターとしても活躍中。最新刊は『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』(扶桑社新書)
写真・イラスト・文/犬山紙子 編集/フォレスト・ガンプJr.