「小1の壁」が周知されたと思ったら、続々と現れた「小4の壁」やら「小5の壁」やら……もしかして小学生って壁だらけ!?次から次へと迫り来る“壁”の正体とは?その乗り越え方について、著書『男の子/女の子の学力の伸ばし方』で話題のVAMOS代表・富永雄輔さんに聞きました。
ママの理想と子どものリアルの
ギャップが〝壁〟になる。
その子自身と向き合うことを忘れないで
教育現場やIT環境の変化で
親の負担は増えている
「小学生は壁だらけ」とはまさにその通りで、その大きな理由は、保護者の子ども時代と今の小学生を取り巻く環境があまりにも変わり、自分たちの経験値が何の役にも立たないから。タブレットやゲーム、スマホが当たり前にある環境もそうですし、教育現場も大きく様変わりしています。あらゆる面でのギャップを壁だと感じるのでしょう。
中学受験の話だと、「自分はそこまで大変じゃなかった」と言う保護者がいますが、子どもの数も何もかもが違うので、親子の負担は遥かに増しています。また、働き方改革やハラスメント問題により、学校の役割がどんどん減っている現状もあります。昔は教師が善意でやっていた補習や、逆に叱咤激励のような強い指導が行えない。教える側からすれば、出来る子を伸ばせばいいだけで楽ですが、要はレールから外れた子を戻す仕組みがない分、親の関わりが増すということ。塾通いの低年齢化はまさに直結していて、落ちこぼれないようにするには早期教育しかない。出来る子と出来ない子の格差はどんどん広がっていく。これは経済的格差というよりも情報格差です。
情報は溢れていますし、今のお母さんは情報収集能力も高いですが、気をつけてほしいのは、キャッチした情報を必ず自分の目で確かめること。忙しいのでネットや本を駆使するのは得意ですが、それだけで判断せず、ワンステップ踏み込むことが重要です。
男の子はマイナス4歳、
女の子は女として扱うこと
環境が大きく変化していることを踏まえた上で意識してほしいのは、男女の性差です。まず男の子の精神年齢は、実年齢のマイナス4歳と思ってください。男の子は自分の経験値を成長の糧にするので、様々な経験が減っている分、どうしても幼くなっています。一方で、女の子はデバイスやテレビなど情報の取り込み方が上手いので、昔より大人びています。この差は小1から表れて、高学年で最大限に開きます。男の子は幼くてコントロールしやすいからこそ、親が責任を持って導いてあげる必要があり、男だから自立しろと手を離すのではなく引っ張ってあげること。
反対に、女の子は一個人として尊重し、共に歩くこと。中学生になると男子が急に追いついて釣り合いますが、小学生という年齢で区切ると男女では大きな違いがあり、アプローチが異なるのも当然。このギャップに親が気づけず、子どもを理解できないと悩んで壁を感じてしまいます。
よって、高学年になるほどセカンドオピニオンが重要になります。学校や塾の先生、習い事の先生と良い距離を作るのが鍵です。子どもは成長と共に顔を使い分けるので、第三者の広い視野から見るのも大事。物理的な負担は減った分、精神的なサポートはシェアすべきで、母親一人では抱え込まないように。一人ではしごを作るのは大変ですが、大勢で作れば簡単ですよね。
“壁”は台風と同じで、備えをして過ぎ去るのを待つのが正解ですが、物理的なことだけは早めの備えを。受験と出産が重なる、夫の単身赴任でワンオペになるなど、予めわかっていることは第三者とタッグを組むなり、遠慮なくお金で解決する。ただ、ママ友の力は借りないこと。子どもは一人一人全く違うので、1人や2人のサンプルでは参考になりません。子育ての相談なら、何百人何千人のサンプルを知っているプロにするべき。ママ友とはたわいもない話や愚痴を言い合って発散するくらいがおすすめです。
壁を感じるのは、親が思う速度で子どもが育っていない時。特に働くお母さんは少なからず子どもに対する期待値が膨らみやすいもの。そこで我が子は駄目だと思うのではなく、人によって伸び期が違うし、性別も時代も違う。そこは比べないように気をつけなければいけないでしょう。僕がよく言うのは「子育ては51対49」、51%成功していれば49%失敗でもいい。たった2%の積み重ねが勝ちに繫がります。100%を求めるから辛くなるわけで、常に51%を意識することが大切だと思います。
◉富永雄輔さんプロフィール