VERY December 2020
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December 2020

2020年11月7日発売

890円(税込)

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専門家に聞いた、30代40代ママに“復職後うつ”が増えている理由

働くママが増える一方で、近年増えているのが“復職後うつ”など復職ママのメンタル不調。仕事と育児の両立を、みんなができることだと考えていませんか?“復職後うつ”が増えている背景には実は原因があります。現代のメンタルヘルス対策に詳しい専門家にお話を伺いました。

 

「復職後うつ」が増えているのは、
原因があるんです!

◉産業医・大室産業医事務所代表
大室正志さん
メンタルヘルス対策、生活習慣病対策等、企業における健康リスク低減に従事。現在約30社の産業医を務める。社会医学系専門医・指導医。著書『産業医が見る過労自殺企業の内側』(集英社新書)。

産業医として、復職後うつが増えていると肌で感じています。復職後うつの増加は女性の社会進出が進み、働き方が多様になったことの副作用といえるかもしれません。これまで、育休明けの復職後は負荷が少ないが出世の芽もない、マミートラックに乗せられる女性がほとんどでした。しかし、近年は規制緩和により復職後も変わらない分量の仕事を任される女性も増えてきています。

最近、問題になっているのが時短勤務の過重労働。知的産業では時間で業務を区切ることが難しく結果的に時短勤務で給料は減っているのにフルタイムの人と同じ仕事量や成果を求められてしまう。キャリアを築く権利や可能性を付与された代わりに子育て中でも手加減がされない――うつになりやすいのは、その状況で頑張ってどうにか一人前の業務をこなしてしまう人です。女性の働き方の変化に男性の働き方改革や家事分担が追いついていないので家庭での作業量は女性が多く、女性自身も〝母はこうあるべき〟というママギャップの罪悪感から育児・家事の手を抜きにくい。社会構造的に復職後の女性がオーバーワークに陥りやすい状況があるのです。

 

復職ママが知っておきたい
“疲労とメンタル” 5つの関係性

◉MR(メンタル・レスキュー)協会理事長・同シニアインストラクター
下園壮太さん
陸上自衛隊初の「心理幹部」としてメンタルヘルス教育に携わる。退官後は独自のカウンセリング技術の普及に努めている。著書『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』(朝日新聞出版)ほか。

【1】メンタル不調の主な原因は“疲労”晩産化でママたちは疲れやすくなっています

メンタル不調の主な原因は実はストレスではなく疲労。疲れても一晩寝れば回復する〝疲労回復力〟は年齢によって衰えるので、近年の晩産化で多くのママは疲労回復力がすでに低下した状態で出産・子育てを行っています。これはかなり深刻な状況。20代で出産・育児をしていた母親世代とは子育ての負担は大きく異なることを覚えておきましょう。さらにVERY世代は疲労回復が追いつかなくなってくるギアチェンジの時期。若い頃の過ごし方を引きずって休むのが苦手な人も多いですが、週末は娯楽や気分転換よりも休息を優先しましょう。

 

【2疲労には3段階あって、日常的なムリを重ねると最後はうつ状態に

疲労には3段階あって、“日常的なムリ”の疲労レベルなら一晩眠れば回復できるのが通常モード。しかし、復職後は子どもの風邪や人間関係のストレスなど“日常的なムリ”が重なりやすく、気がつくと回復が追いつかなくなり疲労収支が悪化し第2段階に突入。同じことをするにも2倍負担に感じて、疲労の回復にも2倍の時間がかかるようになってしまいます。眠れなかったり、なんとなく調子が悪い、という兆候はあってもなんとか仕事はこなせるのでまだ周囲には気づかれにくい段階ですが、イライラしたりミスが増えたりすることで、より疲労が溜まりやすい負のスパイラルに。そのままムリを続けていると第3段階に。いつもの3倍頑張らないと普段の仕事すらできず、さらに通常の3倍負担に感じるようになって、不安感や自責感が強くなり「責任を果たしていない」「母親失格だ」と思うようになり、いわゆるうつ状態に。ここまで来ると、一度仕事を休まなければ回復させることができないし、回復にも時間がかかります。

 

【3】疲れは遅れてやってくる!?遅発疲労に要注意

復職後、「慣れてきた」と感じるタイミングが実はいちばん疲れている時なので要注意。疲労には実際に疲れてから「疲れた」と自覚するまでにタイムラグがあり、表面上の出来事より遅れてやってくるもの。忙しい最中はなんとか乗り切れてしまいますが、一段落して一息ついた時が実は蓄積疲労がMAXな状態。すぐに次の仕事に取りかかってしまうと、すでに疲労の第2段階なので負担感が2倍になり不調が続き、「こんなはずでは」と自信の低下にもつながります。忙しさを乗り越えたあとは相応の期間、できるだけ緩めて蓄積疲労を解消させて。

 

【4】メンタル不調になる前に
まず体調不良ストレス行動が表れる

深刻かつ慢性的な疲労が続くと、まず体に症状が表れます。耳鳴りや頭痛、腹痛など人それぞれですが、この体のサインに気づくことが大事。また、怒りっぽくなる、衝動買いをする、食べすぎるなどストレスに反応して引き起こすストレス行動も目印。危険なのはこれらのサインを無視し続けること。いよいよメンタルに支障が出て出社が困難な状態に……。産業医を通じて上司に業務を整理してもらうことも可能なので、体に症状が出た段階で産業医に相談することをお勧めします。

 

【5】健やかなメンタルには
睡眠が不可欠!

日本の子育て世代の女性は世界トップクラスの睡眠不足です(※平均442分、諸外国は平均500分以上)。メンタル不調の原因は疲労であり、疲労を引き起こすのが睡眠不足。産後のママはもともと睡眠不足、復職すれば睡眠不足はさらに悪化します。戦場では「寸暇を惜しんで寝ろ」と教えられますが、疲れているママも実践して。SNSや動画を観たり、おいしいものを食べるなど気分転換にもエネルギーは消耗するのでまずは休息を優先して。生活リズムなど気にせず、とにかく寝られる時に寝ましょう。

 

復職後1年は自分に甘く。
“できて当たり前”と思わないこと

出産・育児が高年齢化し疲労回復力が低下した状況で子育てしているので、復職の負担を軽くみないこと。実際に不調になってからでは家事代行やシッターを探すことも今の2、3倍の負担に感じるので復職前から準備しておくのも手。復職は表面上慣れるまで3カ月、本当に慣れるまで1年かかります。1年間は試運転のつもりで。社会全体にもその考えが広まってほしいですね。

 

撮影/草間智博〈TENT〉 取材・文/増田奈津子 撮影協力/中村活字 編集/羽城麻子
*VERY2020年4月号「日々の疲れが体だけでなく心にダメージを 復職後、ママのメンタルが危ない!」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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