日々を慌ただしく過ごす私たちの視界に、ふと、静かな美しさが飛び込んでくる瞬間があります。シャネルが10年以上にわたり絆を深めてきた、アメリカ人写真家ロー エスリッジ。彼がメゾンのアーカイブ施設やガブリエル シャネルのアパルトマンに招かれ、遺品に新たな命を吹き込んだ展覧会の軌跡を辿ります。
扉の向こう側に眠る、ガブリエル シャネルのプライベートな記憶
パリ、カンボン通り31番地。そこにはかつてガブリエル シャネルが過ごしたアパルトマンがあり、今も彼女が愛したオブジェたちが静かに息づいています。今回の展覧会「FUGUE FOR 31 RUE CAMBON(カンボン通り31番地のフーガ)」は、普段は非公開であるその場所や、メゾンのアーカイブ施設「パトリモアンヌ」へと、写真家ロー エスリッジが招かれたことから始まりました。
10年以上にわたりシャネルと協働してきた彼がレンズ越しに見つめたのは、ジャック リプシッツによるシャネルの胸像や、パブロ ピカソによるスケッチ、2世紀のエジプトの葬儀用マスク……。そして大切に保管されてきたブローチなどのジュエリー。それらは単なる「過去の遺産」ではなく、エスリッジの手によって、日常的な被写体やスタジオでの静物と組み合わされ、まるで今この瞬間も生きているかのような瑞々しい光を放っています。
アートを身近に感じる贅沢。日常の延長線上にある美しさに触れる
「アートは少し難しい」と感じている方にこそ、この世界観に触れてほしい。
ロー エスリッジは、ファッション誌でも活躍し、広告と芸術の境界を軽やかに行き来する写真家です。彼が切り取る作品には、私たちが普段見落としがちな質感や、複雑に編み込まれた再構築の美しさが繊細に表現されています。
特別な知識がなくても、直感的に「きれい」と思える瞬間の連続。それは、20代のフレッシュな感性にも、40代の洗練された審美眼にも、等しく心地よい刺激を与えてくれます。シャネルというメゾンが、いかに芸術家たちを支援し、ともに歩んできたか。その情熱が、銀座の真ん中で静かに、けれど力強く体現された展覧会です。
シャネルとロー エスリッジが作り上げた、親密で詩的な世界。会期は4月18日までと残りわずかですが、こうした芸術への深い敬意こそが、私たちが愛してやまないシャネルの美しさの源泉のひとつなのだと改めて気づかせてくれます。銀座を訪れた際は、ぜひその余韻を肌で感じてみてください。
ROE ETHRIDGE AT CHANEL ARCHIVES
会期:2026年4月18日(土)まで
開館時間:11:00~19:00(最終入場18:30)
*入場無料、予約不要
会場:シャネル・ネクサス・ホール(東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
PR・お問合わせ先/シャネル・ネクサス・ホール事務局
nexus.ginza@chanel.com
文/植木麻利子











