飾りすぎずに凛と佇む――母としての節目に寄り添うのは、静かな強さを宿す“和モード”。今回は、日本ブランドならではの美意識と実用性を兼ね備えた装いで、ハレの日にも日常にも映える、新しいキレイめの選び方をご提案します。
こちらの記事も読まれています
VERY的・和モードおしゃれ入門
スワイプひとつで世界が更新される
今だから忘れかけていた魅力に、
もう一度目を向けて
一見すると、日常になじむベーシックなアイテムながら、異なる素材やアイテムのドッキングによってモード感が際立つ。華やかな装飾や彩りは抑えながらも、パターンそのものにデザイン性があると評される、360度どこから見ても動きのあるシルエットが着る人の存在感を引き立ててくれます。パールのコンサバな印象を覆す「バランス」が、より高感度に。
ワンピース¥165,000バッグ¥154,000(ともにsacai)ネックレス(上)¥487,300(下)¥1,980,000リング¥566,500(すべてTASAKI)
TASAKI
自社で真珠の養殖から製造までを一貫して手がける、日本発のハイジュエラー。「balance」シリーズに代表される、保守的とされてきたパールを現代的に昇華させたデザインは、調和の中に自分らしさを求めるVERY世代にとって、まさに理想的な存在です。
Sacai
1999年、デザイナー阿部千登勢が設立。“日常の上に成り立つデザイン”をコンセプトに、リアルクロースでありながら凡庸で終わらせない独自のアプローチは国際的な評価を受け、数々のブランドや名だたるメゾンとコラボレーションも。
ワードローブの基盤は
奇を衒わずに個が確立する服
自然や日常の風景とリンクする色の移ろいを意識した色使いもオーラリーの世界観を象徴するひとつ。和光「MANACO」は、円形モチーフ=“眼(まなこ)”に由来。角のないフォルムがなごやかさを添えてくれます。アシックスもまた、日本発のスポーツブランド。GEL‑KAYANOシリーズのリバイバルをきっかけにファッションアイテムとして親しまれるように。
ジャケット¥242,000ハーフジップフリース¥83,6000シャツ¥35,200パンツ¥49,500(すべてオーラリー)ネックレス(上)¥418,000(下)¥242,000バッグ¥176,000(すべて和光)靴¥16,500(アシックス/アシックスジャパン カスタマーサポート部)
AURALEE
2015年、岩井良太が設立。世界から厳選した原料を日本屈指の技術で丁寧に仕立てた軽やかな着心地。装飾を廃し、着るほどに味が増すベーシックは静かなラグジュアリーを体現する存在として海外からの注目も高まっています。
WAKO
1932年竣工の時計塔を持つ本店は、銀座の象徴。2022年、“和(なごみ)”と“光(ひかり)”という日本的な美意識を込めたオリジナルシリーズ「MANACO」を展開。洋服にも和装にもなじむ独自の魅力、銀座発の洗練が注目を集めています。
心地よく扱いやすく気負わず
旬を叶える理想の普段着
日本の伝統的な格子柄を思わせる、独自のチェック柄。古くは建具の木目から派生したすっきりと直線的な構成は、洗練されていながらも、どこにいてもなじむ、心落ち着く自然な佇まい。トラッドやヴィンテージなど、テイストにとらわれずにシンプルに着こなせる凛とした雰囲気が魅力です。
コート¥154,000ニット¥33,000パンツ¥50,600帽子¥16,500ネックレス¥101,200ベルト¥27,500(すべてハイク/ボウルズ)バッグ¥99,000(メゾンヴァジック/ヴァジックジャパン)
HYKE
2013年設立。GORE‑TEXやPertexなど、アウトドアウェアに用いられてきた高機能素材を積極的に取り入れ、“機能性と洗練が共存する都会の日常着”を確立。名だたるブランドとのコラボレーションでも注目を集めています。
スウェット以上ジャケット未満。ちょうどいいきちんと感と心地よさを備えたニットカーデのセットアップは、まさに理想の普段着。誰が見ても好印象な品の良さと、満足感を高める着心地のよさが、違和感なく共存します。一枚で完結させない重ね着は、着物にも通じる日本的な美意識。静かなトーンの中でも色や質感の積み重ねで、より豊かな印象に。
カーディガン¥39,600シャツ¥33,000ニット¥33,000パンツ¥41,800〈すべてロエフ〉ネックレス¥159,500〈プリーク〉(すべてエイチ ビューティー&ユース)
LOEFF
「年齢を重ねても大切にしたい日常着」をコンセプトに2019年にデビュー。自分のスタイルを確立し、経験を重ねて今着たい服、素材感やディテールにこだわりを持つ大人に向けたブランド。ミニマルだけど映えるシルエットは誰が見ても惹かれる普遍的な美しさがあり、テイストや属性を超えて親しまれています。
重ねることで生まれる奥行き
シルエットが作る間に情緒を託して
「Clothing For Contemporary Life(現代生活のための衣服)」の名の通り、ストレスのない着心地、自宅で洗える気軽さを備え、一躍人気になったワンピース。象徴的な構築シルエットはそのまま、カーデ仕様になり羽織りとしても活躍、より着こなしの幅を広げてくれます。
ワンピース¥96,800(CFCL)スカーフ¥5,500(トレス/トレス オンライン)バッグ¥93,500(メゾン カナウ/ヤマニ)リング(上)¥1,051,600(下)¥695,200(ともに和光)靴¥46,200(ビューティフル・シューズ/オーセンティック・シュー&コー)
CFCL
2020年、元イッセイ ミヤケ・メンのデザイナーを担っていた高橋悠介により設立。3Dコンピューター・ニッティングの技術を中核に据え、「現代を生きる人々の道具としての衣服」という視点で提案されるニットウェアは、子育て中もモードを身近にしてくれる最高の日常着としてVERY世代に愛されています。
女性らしさといったものよりもその人らしさの輪郭を強調する、着る人を選ばないジェンダーレスな服には、“モデリスト=パターンのプロ”の技術と視点が存分に活かされています。
コート¥108,900シャツ¥45,100デニムシャツ¥42,900パンツ¥58,300(すべてmtmodelist)サングラス¥50,600(アイヴァン/アイヴァン 東京ギャラリー)リング(右手人さし指)¥72,600(ヒロタカ/アバロン)リング(左手人さし指)¥45,100(ヒロタカ/ビームス 六本木ヒルズ)リング(左手中指)¥312,400ダブルフィンガーリング(左手中指・薬指)¥88,000(ともにヒロタカ/ヒロタカ 表参道ヒルズ)バッグ¥174,900(FANE/International Gallery BEAMS)
mtmodelist
ヨウジヤマモトで経験を積んだ女性モデリスト3人が2023年にスタート。性別や年齢にとらわれない「パターンから生まれる新時代のモード」を掲げ、着る人の体になじむ立体的なパターンは一度着ればファンになる、と人気に。
透ける色彩で作る
締めない目元に
ADDICTION


メイクを手がけた島田さんが提案するのは日本発・アディクションの紫陽花のような色味のアイシャドウ。一見、難しく思えるカラーシャドウも、日本の自然や景色に通じる柔らかい色彩がふんわりと色づけて、まなざしに“和”を。
ザ シングル アイシャドウ ネイキッドシアー 005N、007N各¥2,530アディクション ケース I 各¥440(すべてアディクション ビューティ)
特別な日こそ飾り立てずにシンプルに
心に残る“静かな佇まい”を目指して
程よくエッジの効いたセットアップは園行事など改まったシーンでも“自分らしく”を叶えてくれる。ブランドカラー・UNUS BLUEを基調にした静かな美意識は、落ち着きも大切にしたい日に最適。日本人デザイナーが手掛けるユニークなパールでさりげない個性を。
ジャケット¥88,000パンツ¥66,000(ともにユナス/エストネーション)ピアス(右)¥159,500(左)¥275,000(ともにマリコ ツチヤマ/エスケーパーズ アナザーワールド)バッグ¥51,700(プンティ/エルディスト ショールーム)靴¥39,600(ジャランスリウァヤ/ジャランスリウァヤ 日本橋)靴下(スタイリスト私物)
UNUS
今年秋エストネーションからデビュー。受け継がれてきた“本物”に触れることで養ってきた感性に、現代の価値観・トレンドを自分らしく取り入れる「Old Money Aesthetic」を掲げ、VERY世代に寄り添う新たな選択肢に。
色やコントラストよりも
光や質感の揺らぎで彩る
SUQQU


ハレの日こそコントラストや発色の良さで盛るよりも、繊細な透け感やきらめき、にじむような艶など質感で“静かに”印象を残すメイクを。日本の自然観に根ざしたニュアンスカラーや、“憐華”や“彩望”といった和のネーミングでも知られるSUQQUはまさに“和モード”なメイクブランド。
ベルベット フィット リップスティック 06 ¥5,830、ブラーリング カラー ブラッシュ 07¥6,600(ともにSUQQU)
調和の中でも自分らしさを
手放したくないとき控えめな
存在感が真価を発揮する
発表会や七五三など、母になって迎えるハレの日には特別感と同時に、主役を引き立てる控えめな華やかさに悩むことも。削ぎ落とした中にブランドらしい曲線美が印象的なワンピースはまさにそんな気持ちに応えてくれます。見た目のストイックさとは裏腹に締め付けが一切なく、さらりとしたカットソー地で気負わず着られる楽さも魅力。
ワンピース¥46,200(マメ クロゴウチ/マメ クロゴウチ オンラインストア)ネックレス¥33,000(クイップクエイント/フーブス)時計¥671,000(グランドセイコー/セイコーウオッチお客様相談室)バッグ¥78,100(メゾンヴァジック/ヴァジックジャパン)靴¥330,000(ジェイエムウエストン/ジェイエムウエストン 青山店)
Mame Kurogouchi
2010年、デザイナー黒河内真衣子が設立。日本各地の職人と密に協働し、刺繍・染め・織りなど伝統技術と最新技術を織り交ぜて仕立てられる服には、日本に根ざす自然観や美意識が息づく。
たとえば、むやみに自分を飾り立てない、慎みという美徳。完璧さよりも歪みや経年変化を味わいとして楽しむ、ゆとり。見せるためだけではなく、役立つことや心地よさと共存する実用の美意識。ときに色褪せて見える日本的な価値観こそ、いま「クワイエット・ラグジュアリー」と共鳴しながら、あらためて新しく映りはじめています。
おしゃれだけでは立ち行かない子育て。機能性も譲れないし、周囲との調和も求められる。VERY世代にとって一番心強いのはそんな「和」の精神に根ざしたモードなのかもしれません。知っていたはずの美しさを、もう一度見つめ直すとき。その先に、新しいおしゃれのかたちが見えてくるはずです。
撮影/TISCH〈MARE Inc. 〉 モデル/桐谷美玲 ヘア/GOUTSUGI〈PARKS〉 メイク/島田真理子〈UM〉 スタイリング/佐藤佳菜子 取材・文/増田奈津子 編集/石川穂乃実
*VERY2025年10月号「VERY的・和モードおしゃれ入門」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のもので、変更になっている場合や商品は販売終了している場合がございます。











